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今話題のクレディスイスとAT1債とは

 クレディスイスについては、長年不祥事や経営不安、アルケゴス事件以来破綻のうわさ、ここにきて主要株主の撤退、サウジ銀行からの追加出資なし等、お騒がせ銀行になっている。

特に破綻については金融業界に馴染みのない私には、中身がわからない。

 なので今回は、東京大学の服部先生が書いた、”AT1債およびバーゼルⅢ適格Tier2債入門”を読み、面白かったので内容の簡単な要約を書き残す。下記は本当に一部のみである。

 まず、AT1債について。これは、銀行が自己資本を補充するために発行する債券の一種で、バーゼルⅢ規制においても適格な債券とされている。AT1債は、銀行の財務状態が悪化した場合に償還を中止できる債券で、優先株式に近い特徴がある。また、償還可能性が限定的であり、発行から5年経過するまで償還が禁止されることもある。

 次に、Tier2債について。これは、銀行破綻時に償還可能な債券で、AT1債に次ぐ優先度を持つ。Tier2債もバーゼルⅢ規制において適格な債券であり、銀行が自己資本を補充するために発行される。Tier2債は、AT1債と比較して償還可能性が高く、発行から10年経過するまで償還が禁止されることもある。
 さらに、論文ではバーゼルⅢ規制についても解説されている。バーゼルⅢ規制は、銀行のリスク管理に関する国際的な基準を定めたもので、2010年に発表された。この規制には、銀行が必要とする最低限の自己資本比率が設定されており、その自己資本を増やすための債券として、AT1債とTier2債が認められている。

参照:”AT1債およびバーゼルⅢ適格Tier2債入門”

 さて、今回クレディスイス(CS)破綻危機において、AT1債が実質的に無価値になったことは、一見すると不可解に感じる。なぜなら、AT1債は優先度の高い債券であり、破綻時には株式よりも優先して処理されるため、株式よりも価値があるはずだからだ。

 しかし、これにはいくつかの理由があるようだ。まず、AT1債の特徴として、発行会社が一定の財務指標に達しない場合、償還期限前でも自己破産等のリスクに晒されるというリスクがある。この場合、AT1債は自己破産等の処理によって償還されるため、本来の価値を保証されているわけではない?

 また、バーゼルⅢの規制により、AT1債には資本比率の条件が設けられている。発行会社が一定の資本比率を下回る場合、AT1債に支払われる利息が停止されたり、償還が行われたりすることがある。これによりAT1債の価値は毀損することがある。

 さらに、CS破綻危機の場合、株式の価値が著しく下落したことがAT1債の価値を下げた要因の一つとされている。具体的には、株式市場が破綻を予期し、株式の価値が急落したため、AT1債の償還が困難になった。

 以上のように、AT1債が実質的に無価値になったことには複数の要因が絡んでいるようだ。

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