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硫酸も水酸化ナトリウムもOHを持つのに液性が真逆なのはなぜ?~酸素の気持ちを考えてみよう~

今回も生徒と話していてこれ説明できてほしいな、というシリーズ。
硫酸や硝酸、酢酸といった酸性物質も水酸化ナトリウムや水酸化カリウムといった塩基性物質も分子の中にOHという構造を持っているけど、この違いは何によるものなのでしょうか。
厳密に言うと、酸性物質のほうはこのOHからH+が、塩基性のほうはOH―がまるっと出ていき液性を決めていきます。

この違い、説明できますか?実はこれ、理論化学の初期の初期、参考書の第一章のところに答えが載っているはず。(多くの参考書はせっかく理論で説明できるのに関連づけて書かれていないのが実情ですが)

この違いを生んでいるのは、電気陰性度です。詳しく見ていきます。

まずは硫酸と水酸化ナトリウムは以下のような構造をしており、OHが結合している相手は硫酸のほうはS、水酸化ナトリウムのほうはNaとなっています。

ここで、S、Na、O、Hの4つの電気陰性度を確認してみると、順に2.5、0.9、3.5、2.0となっています。
電気陰性度とは結合した時に相手から電子を引っ張る強さ、簡単なイメージで言うと原子による綱引きの番付のようなものです。

さて、ここでS-O-H、Na-O-Hのこの綱引きの力関係を見ていくと、このような形になります。

では、自分がここでOになった身分でこの状況を考えてみると、硫酸では綱引きの相手はSとH、水酸化ナトリウムではNaとHで、一番綱引きの強いOになってみるとこの綱引きが弱いやつから電子を引っこ抜きます。
つまり、硫酸では電気陰性度の小さいH、水酸化ナトリウムでは電気陰性度の小さいNaのほうから電子を引っ張る現象が起こっていきます。

このことから、以下のような現象が起こり、同じOHという構造を持っているのに酸と塩基という真逆の性質を示すようになってきます。

今回の記事はこの辺で終了になります。読んでくれてありがとうございます。そろそろ入試良問演習を2、3と書こうかなと思っています。特に旧帝や医学部志望の高3生や浪人生向けの難易度になると思います。

それではまた。

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