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近松門左衛門

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岩波『近松全集』の読書記録
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2023年6月の記事一覧

丹波与作待夜のこむろぶし

今年の上方文化講座のテーマでもある作品。日程が合わず、応募さえできず。

上之巻では、江戸行きを承知しない姫君を道中双六で宥める。双六を見せた三吉=与之介と、姫君の乳母の滋野井の親子関係が明らかになるが、姫君への遠慮から堂々と名乗れない。
作中で江戸まで行くわけでもないし、道中双六は地名の折り込みを楽しむ場面なのかな。
物語の悲劇の1つである、与作/滋野井/与之介の親子問題。元々、与作と滋野井の許

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心中重井筒

岩波文庫にも収録だがわ文楽では思ったよりやっていないようで。2016年にながと近松文楽で道行血潮の朧染を復曲公開だったそう。

上之巻の徳兵衛は、人を騙して金を借り、それを庇ったおたつの不義まで疑い始めるどうしようもない男。あれこれ迷いながらも結局重井筒屋に足が向く場面は、冥途の飛脚を想起した。発表の順序では、勿論こちらが先行だけれども。

中之巻では、おふさの不幸が明らかになり、おふさは独りで死

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五十年忌歌念仏

久し振りの浄瑠璃読書タイム。
飽きて積んだ訳じゃないぜ!!

タイトルの「五十年忌」は本文を読んだだけでは分からないが、実際の事件で処刑された清十郎の五十年忌。
史実のおなつは狂ってその後どうなったのか?

上之巻ではおなつ清十郎は登場せず、勘十郎と左治右衛門(清十郎の父)のやり取りから、清十郎が主人の娘=おなつに手を出したらしいことが分かる。同時に、勘十郎が左治右衛門を騙していると伸べられる。

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