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ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム 感想

基本データ

  • プレイ環境
    有機EL switch (doc : 携帯 = 9: 1くらい)

  • プレイ時間
    120h

  • プレイ日程
    2023/5/12-2022/5/22

  • クリア状態
    祠コンプ済み・バッテリー最大済み・地下の根は後6個程度未開拓

感想

目で見て自分で行先を決めて自分で行く手段を作る冒険

前作であるブレスオブザワイルド(以下 BotW)は既存のオープンワールドで見たようなシステムをユーザーの視覚にこだわることで目で見る冒険性を出し、開かれた世界を自分の行きたいように探検するという価値観を提供することで新しい価値観提供になり絶賛を受けたタイトルだと考えている。
(この辺の視点に関しては任天堂自体が解説しており、[CEDEC 2017]「ゼルダの伝説BotW」の完璧なゲーム世界は,任天堂の開発スタイルが変わったからこそ生まれた (4gamer.net)などで解説されている)

2023年になってもこの価値観を提供できているOW系ゲームは正直出てきておらず、移動をメインに据えたOW(行きたいところに行くためにMAPの切れ目を作ってはいけないのだからOWにせざるを得ない)として唯一無二の価値を未だに持っている。

Skyrimの景色
witcherの景色
ゼルダの景色

見比べるとわかるが、ゼルダだけ明らかにユーザーが行きたくなる要素(MAP解放のための塔・島・印象的な地形など)が目に見える形になっている(クリア後なのであれだが、もともとは蛍光に色までついて光っている)

前作では行きたいところを決めるところまではできたものの、実際の移動はのんびり徒歩で行くか・馬に乗るか・多少高いところからパラセールで飛ぶか。そこまで選択肢が無い中旅を楽しむといった形態であったところ、本作では乗り物を作ったり、はるかな空から舞い降りたりと移動をメインに据えたゲームで移動の要素を拡張することで順当な進化を遂げている。
正直なところ作るものですらネタバレになってしまう気がするのであえて貼ったりはしないが、ユーザーの工夫で普通の車・飛行機から空飛ぶバイクやでかめのロボットまで作ることで元々好奇心ドリブンで冒険をさせていたゲームに物作りというアイディアが相性がよく拡張する遊びとして非常に適切だったと感じる。

ゼルダらしからぬシナリオへの満足感

実際ナチュラルに考えると大したことがないストーリーではあるのだが、演出のおかげで前作よりぐっときちんとゼルダを助けたい・ガノンを倒すというモチベーションが湧いてくるのは素晴らしいし、前作経験者としてはここからまだ楽しめるのかと思えるシナリオ運びはいい意味で期待を裏切られて後半の展開は非常に楽しかった。

めちゃくちゃに増えたボリューム

前作でも正直十分にボリュームはあった作品だと思うが、今作はそれに輪をかけてボリュームが増えている。
新しく追加された空・地下のマップは勿論、各地に新しくできた洞窟それぞれには前作のDLC等で追加された装備があったり収集要素があったりと所謂コンプリートのために色々な要素があるために遊び尽くそうと思うと大変な量が待っていることになる。

手段が増えて本格的になった戦闘

ビルドというものを全面的に押し出して、それを武器や防具にも拡張しているわけだがこのおかげで戦闘に幅ができて戦闘だけで十分にたのしくなっているのは前作から大いに成長した点だと思う。
前作でももちろんスニーク・正面から・上から、爆弾を遠くから、重いものを落としてなど色々な戦略はとれたもののそこまでどれも面白くはなかったのに対し、今作ではその場に応じた武器の合成を行うことで無理やり不意打ちを出せるようにしたり、爆弾で吹き飛ばしたり、極端にリーチが長い武器を作って安定した立ち回りをしたりといくらでも戦略がとれ戦闘においても発想次第でなんでもできるようになった(それこそドローンで殲滅すらできる)ことで自分で考える場面が増えたことが非常にプラスに感じる。

余りにも”正解”がわからなくなった祠

今作は本当に何でも作れるようになってしまったせいで祠の解放に関して幅がめちゃくちゃ大きくなってしまった。
勿論いわゆる開発者が想定した回答はあるのだろうが、いろいろなところでうるせぇ!知ったことかととりあえず長い板を作って無理やり乗り越えるとかできるようになっていてこれはこれで楽しくはあるのだが、前作の裏をかいてやったみたいな工夫というよりはハチャメチャにしてやった感でややプレイ印象が異なる。
これはこれで楽しかったので個人的にはありだと思う。
その一方で明らかに今作は祝福(謎解きが無い祠)が多かったように感じ、正直問題を作る限界だったのかなぁとは思った。
ここは今作の別ベクトルでの楽しみの部分だったので祝福はもったいない気持ちでいっぱいだった

単調な空と無機質な地下

ここまで絶賛してきた本作ではあるが一方で否定要素がそこそこあることはきちんと触れなければいけない。
本作のトレイラーでも大々的に取り上げられていた空はメインとなるいくつかを除くと、強敵との対決用島か数種類のコピペ島しかなく新しい発見や新鮮さに乏しい。移動に関しても高度で差をつけている以上、ロケットなり扇風機で上昇するしかなく移動の工夫の余地がなくコンセプトともあっていないように感じる。
同じように地下に関しても、メインシナリオで一部探検する像を追ってのところは本編の行きたいところにいくというものと比較して暗闇の中手探りで方角だけ示されて探索していくという対比で一定の遊びにはなっているものの、その部分は全体からすると極々一部でその他の広大なフィールドは手掛かりもなく、ただ単に根の明かりをちょっと探してあったら無理やり飛んでいくしかなく探検という遊びに乏しく正直面白みにかける。
特に地下において問題となるのは前段までで高評価に上げている物づくりの動力が地下の探索に依存しているという点で、シナリオの導線としても薄く・楽しいわけでもない地下を目的もないまま探索しなければいけずゲームのテンポ感が崩れてしまっているように感じる。

やや強い導線の誘導とその割に弱いムービー差分

前作が本当に自由だったのに対し、今作ではほぼ確実に最初の拠点に行くようになっていたり、最初のMAPがあからさまに誘導されていたり、特定の機能がメインを1つ進めないと解放できなかったりと割とフラグ管理の緩かった前作と比べて強制感を感じる。(冒険に水を差すほどではない)
その一方で各地のメインクリア後のムービーが順序に関係なく全く同じ話をするあたり、演出の劣化は気にかかった。
どう考えても語る内容を4分割してクリア順に話させればよかっただろと思う。(工数は増えるが全体からすると微々たるものだろう)

いまいち練りこみが足りないUI

システム周りに関してもいまいちいけてないなと思う部分は多い

  • 矢のスクラビルド時の素材が多すぎて選びにくい点

  • 武器へのビルドが矢のようにすぐできず、アイテムを持って・置いて合成というステップを踏まなければいけない点

  • スクラビルドの解除もメニューからしかできない点

  • 各地の料理のレシピが調べただけでは登録されない

  • 各地のタバンタの会話のセリフが長い

  • 防具が多くなりすぎて変えるのが面倒

  • ロードを挟んだりちょっと離れるだけで消えてしまうウルトラハンドによって作った建造物

  • ブループリントで手持ちのギアを使わない

今作のメインとなるクラフトに関しても、適当に使い捨てするにはややガチャの出が悪い気がして今の数倍は出た方が気楽に試せたように思う。

あまり改善されてない前作からの不満点

武器が壊れることに関してはそもそも今作は武器を合成して使っていくため改善された点だと思うが、そうじゃないんだよという点も多々ある。
前作から忌み嫌われていた雨だが今作も根本的な解決がされていない。
今作で滑りにくくなる装備が出たものの、本質的にはゲーム性としてのトレードオフになっていないのが問題であり例えば雨の場合はつむじ風が起きやすく縦の移動をつむじ風にのって可能とするとかのようなきちんとメリットを提示すべきだったと思う。(足音が静かになるくらいではつり合いが取れていない。)

総評

余りにも偉大で素晴らしかった前作をもっと遊びたいという声に十二分に答え、これでもかと大盛にした作品。
前作での素晴らしかったコンセプトはそのままに、解法を広げることでより自由な冒険ができるようになった傑作。
一方で前作がすべての要素が過不足なく噛み合っていたように感じるのに対して、練りこみ不足な地下や一方で一番メインのクラフトを楽しむにはそこを探索しなければいけないゲームの在り方など、物量を大量にしすぎたことで全体の調和は崩れてしまったかなという印象がある。
前作と横並びで見たときには今作の方が総合的に優れた作品だとは思うが、前作ではもっとやりたかったなぁという一方で、今作はさすがにもう満足かなと思うような感じではあった。

点数:92点

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