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DWSIM:気液平衡、Txy図を読む

この曲線から読み取れる情報を整理します。例としてメタノールー水系を対象に検討します。

DWSIM v6.4.5(執筆時)

Txy図、テコの原理

DWSIMを起動し、シミュレーションの新規作成します。

Compounds(物質)は、Methanol、Waterを指定します。
Property Packages(混合物性推算)は、Modified UNIFACとしました。
単位系は、SI単位としました。

Material Streamを一つおき、Utilities > Add Utility > Binary Envelope画面を開きます。操作の詳細は以下を参照ください。

以下が、101,325PaでのTxy(定圧での露点・沸点曲線)です。(手書きでないライン)

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図の見方に付いて、整理します。

330K(56.85C)、メタノール 0.4 mole fraction の溶液があるとします。図中のスタート点。この溶液を定圧で徐々に温度をあげていきます。(風船のように膨らむ容器をイメージ)

青い線(沸点曲線)にあたる温度、348.41K(75.26℃)で、このときに沸騰、初めての気泡が出始めます。(温度はグラフから読むが、ここではシミュレーターの計算値を別途参照しています。)この時、微量のガス側のメタノール組成は、0.74 mole fractionとなっています。

更に加熱をおこない、356K(82.85℃)に達したとします。この時、ガス側のメタノール組成は、0.553 mole fraction、液側のメタノール組成は、0.175 mole fractionとなります。値は、シミュレーターから読んでいます。(グラフ上の図中の矢印はフリーハンドのため、ずれています。)

また、このときのガス側と液側のモル比は、てこの原理と呼ばれる法則がなりたち、
液相モル数:ガス相モル数 = (0.553 - 0.4) : (0.4 - 0.175) = 0.153 : 0.225
の比となります。グラフ上での関係は図を参照ください。

液相モル数 1 mole x 0.153 / (0.153 + 0.225) = 0.405 mole
気相モル数 1 mole x 0.225 / (0.153 + 0.225) = 0.595 mole

となります。

さらに加熱し、すべて気相となる温度は、361.59K(88.44℃)となります。

これらのパスをプロセスシミュレーター上で表現してみると(気相が出始めるポイントはスキップしている)、
スタート:MSTR-01
356Kに加熱後の気相 : MSTR-03
356Kに加熱後の液相:MSTR-04
すべて気相になる温度:MSTR-06
より確認でます。

画像2

プロセス操作をイメージすると、0.4 mole fraction のメタノール水溶液を82.85℃まで、連続的に供給、加熱して取り出すと、モル比で59.5%が気化して、その時のメタノール濃度は、0.553 mole fraction程度に濃縮されていると予想されます。今回は、プロセスシミュレーターで計算したが、露点・沸点曲線があると、フラッシュ蒸留の状態を予想することができます。

シミュレーター上でのこの時の熱量は、25.89kW/mole-Feed/secでした。熱量原単位は25,89kJ/mole-Feedのと計算できます。

または、25.89 kW / 0.0236kg/s = 1097 kJ / kg-Feedです。

燃料発熱量 40MJ/kg、ボイラー効率 85%、燃料単価 80 JPY/kgとすると
必要な燃料重量は、1097 kJ/kg-Feed / 10000 / (40MJ/kg x 85%)
= 0.03226 kg-燃料/kg-Feed
燃料費になおすと、2.66 JPY / kg-Feed になります。

このような処理を供給ベースで月10ton 行うとすると、

2.66 JP / kg-Feed x 10,000kg-Feed/month = 26,600 JPY / month

の燃料費はかかる計算になります。(他の冷却コスト、廃液コストなどその他の費用は含んでいません。)

まとめ

Txy曲線(露点・沸点曲線)の見方を整理しました。そこから蒸発操作をしたときに、操作圧、温度で、どのような組成、蒸発割合になるか予想ができます。

合わせてDWSIMでのシミュレーションでTxy曲線の状況を計算させ、線図のイメージと合う結果がえれました。

留意としては、混合物性推算式、そのパラメータのより、実際の気液平衡曲線が再現されていないときには、ずれが生じることは留意が必要です。

所感

内容に誤りや、誤解があるかもしれない。その時には指摘いただけるとうれしい。なにか化学実験や、こんな操作したらなどリクエストがあれば、いただけるとうれしい。(対応できるかは、わからない)

書き忘れとして、DWSIMのドキュメントにヘッジ文があり、計算結果の適用においては、保証される事項はないので、勉強用、軽い検討用程度の利用にとどめるのが適当かもしれない。試験や、論文などエビデンスを積み上げて信頼できる結果かどうかを評価することは忘れてはいけない。

テキストに書いてある説明をシミュレーターで追うことで定量的なイメージはつけやすいのではと思う。

参考文献

J. Gmehling, B. Kolbe, M. Klieber and J. Rarey, Chemical thermodynamics for process simulation wiley-VCH, 2012, P.180

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海辺のケミカルエンジニア
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