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DWSIM:蒸留塔(操作シンボルの説明その3)

DWSIMでの蒸留塔の計算方法について整理します。操作シンボルの蒸留塔の説明です。

DWSIM v6.4.6

DWSIMについては、以下を参照ください。

シミュレーションのシンボル

メイン画面のFlowsheetの下側に操作シンボリタブ切り替え画面がある。

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Columnsタブ

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このタブには、4種類のシンボルがある。ChemSep Columnは、DWSIMをインストールするときに、同時にインストールできるChemSepでのカラムシミュレーションになる。

Distillation Columnは、DWSIM上に実装されたモデルで、各段の平衡計算から蒸留塔のシミュレーションを行える。
平衡段モデルと、物質移動速度モデルでの検討方法があるが、ChemSepでは、物質移動速度モデルでの検討もできるようである(こちらは試したことはない)。

Absorption Columnは、ガス吸収、液液抽出操作の平衡段計算ができる。

Shortcut Columnは、各段の平衡計算を行うのではなく、Fenske-Underwood-Gillilandの方法により、最小理論段数、最小還流比の計算、それらの値と運転還流比(指定)から必要段数の見積をおこなう。

この方法のメリットは、蒸留操作において、含まれる成分を沸点の順番に並べたときに、分離したい成分間の低沸点成分をLK(Light Key)、高沸点成分をHK(Heavy KEY)として指定し、LK成分の塔底の濃度とHKの塔頂での濃度と、還流比を指定すると、計算が実行される。還流比が最小還流比を下回っていても、結果が出力され、最小還流比を確認して運転還流比を調整しなおすことで、必要実段数を算出できる。まずは概算でもどのくらいの段数、還流比が必要かを見積もりたいときには便利である。別の機会に詳細を記載したいと思う。

Distillation Columnモデル(DWSIMでの蒸留塔モデル)の設定詳細

1.Flowsheetの作成

メイン画面でのFlowsheet上に、以下のようにMaterial Stream、Energy Stream、Distillation Columnのシンボルを置く。

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蒸留塔モデルの設定について、整理する(以下の図ではフロー図は完成後になっています)。

Distillation Columnモデルを選択して、設定画面を開く。

2.Specification >Generalタブ

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ーAbsorber Operation Mode : 蒸留カラムモデルにおいてもコンデンサーまたは、リボイラーをなし(どちらか一方でも)とすることで吸収塔を模擬できる。その時に選択ができる。

ーNumber of Stages :蒸留塔の段数を設定する。ここでは22段とした(コンデンサー、リボイラーも1段とカウントするので、塔内に20段の平衡段があると想定していることになる。)

ーMaximum Number of Iterations:計算が収束誤差以内になるまで何回計算を繰り返すかをしている。指定回数で誤差内に収まらないときには、計算回数が最大に到達したとして、計算打ち切り、エラーメッセージがでる。

ーConvergence Tolerance:計算の収束誤差の指定。大きくすると収束はしやすくなるが、マテリアルバランスの誤差がおおきくなるなど、結果に注意が必要。

ーProperty Package:最初に指定した物性計算モデルを選択できる。ここではNRTLしか選んでいないので、これしか選択できない。

3.Specification >Condeserタブでは、

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ーNo Condenser:このチェックボタンにチェックを入れると、コンデンサーがないものとしてシミュレーションできる。Absorber(吸収塔)の計算になる。供給段より上の段で液がない状態になるので、供給段の設定は1段目よりおこなう。(段数を22段を指定しているので、塔内は1-21段で、リボイラーで1段となる)

ーCondenser/Top Pressure:コンデンサーの圧力を指定する。(コンデンサーがないときは塔頂部の圧力)

ーCondenser Type:Total(全縮)、Partial(分縮)、Full Reflux(全還流)が指定できる。Total(全縮)は、塔頂の蒸気をすべて液化して、還流操作をおこない、Partial(分縮)は、部分的に凝縮し、液、蒸気で塔頂より抜き出すことができる。高沸点溶媒から水を抜くときなど、真空蒸留で全縮してしまうと水の沸点に引っ張られて登頂温度の低下が著しくなる、塔内の温度分布が急激になるなどのときに、分宿にして塔頂から蒸気で一部溶剤と一緒に水を抜くと運転しやすいなどがあると理解している。
Full Refluxは全還流を模擬できる。まだ全還流モードを試していないが、蒸留塔の分離段数の試験等を行うときに全還流状態を測定することがある思う。その時の理論段数計算につかえるのかと考えている。(今後、確認する)

ーCondenser Pressure Drop:コンデンサー部での圧力損失を指定できる。(圧力損失をシミュレーションする機能はない、別で検討して入れてみて蒸留への影響の程度を確認するものと理解している。)

ーSpecification:コンデンサー部での操作変数を指定する。指定できるタイプは、
  ●Heat Load(除熱量)、
  ●Product Molar Flow(留分抜取モル量)、
  ●Compound Molar Flow in Product Stream(指定成分のモル流量)、
  ●Product Mass Flow(留分抜取質量)、
  ●Compund Mass Flow in Product Stream(指定成分の質量流量)、
  ●Compound Fraction in Product Stream(指定成分の組成)
  ●Compound Recovery(指定成分の回収率)
  ●Reflux Ratio(還流比)
  ●Temperature(温度)

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4.Specification>Reboilerタブ

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ーNo Reboiler(Refluxed Absorbe):これにチェックをいれるとリボイラーなしでシミュレーションをすることになる。塔底からガス(洗浄対象ガス)を導入する必要がある。

ーRebolier/Bottom Pressure:リボイラー部の運転圧力を指定する(リボイラーがないときは塔底部の圧力)。コンデンサー部より高い圧力になる。塔内の圧力損失の蒸留への影響を見ることができる。塔内のダイナミクスを模擬して圧力損失などを検討するものではない。塔内の負荷、温度などから別で輸送物性、棚段、充填物のパフォーマンスを整理して圧力損失を見積り、入力することになる。

ーSpecification :リボイラー部での操作変数を指定する。指定できるタイプは、
  ●Heat Load(熱負荷)
  ●Product Molar Flow(製品モル流量)
  ●Compound Molar flow in Product Stream(指定成分のモル流量)
  ●Product Mass Flow(製品質量流量)
  ●Compound Mass Flow in Product Stream(指定成分の質量流量)
  ●Compound Fraction in Product Stream(指定成分の組成)
  ●Compound Recovery(指定成分の回収率)
  ●Boil-Up Ratio(焚き上げ比)
  ●Temperature(温度)

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5.Configuration>Connections>Feedsタブ

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供給したいMaterial Streamをどの位置に接続するか設定する。この設定は、フロー図上でどの位置に接続を表示するかだけである。蒸留塔の段数に関係なく、常に1-10の数時が表示される。(塔の上が1になる。)

リサイクルラインがある、ガス吸収層操作など複数の供給ストリームがあるときには、複数指定できる。

6.Configuration>Connections>Productsタブ

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供給と同じく、Distillate(留分)、Bottoms(塔底)、Overhead Vapor(塔蒸気)に接続したいMaterial Streamを指定する。Material Streamは先にFlowsheetにあるものが指定できる(作成機能はない)。

Overhead Vaporは、CondenserをPartial(分縮)としたときに設定する必要がある。今回は、全縮で検討しているので設定していない。

7.Configuration>Connections>Dutiesタブ

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Reboiler Duty、Condenser DutyにEnergy Streamを指定する。蒸留塔で必要なDutyが計算される。

8.Configuration>Connections>Side Drawsタブ

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塔中段より抜き出す操作をするときに利用する。今回は利用しないが、設定すると上図のようになる。ここでは、Flowsheet上の接続を指定しているのみで、具体的な操作条件は別で指定する。

9.Configuration>Connections>Stream-Stage Associationタブ

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このタブ画面で、接続を検討しているStreamの条件詳細を指定する。
  ●Feed:供給の段数
  ●Distillate:留出分を抜き出す場所(段数)、通常はCondenser。
  ●Bottom Product:缶出分を抜き出す場所、通常は、Reboiler
  ●Side Draw:塔中段から抜き取る場所(段数)、接続を設定したときにでる。
  ●Rebolier Duty:リボイラーで熱を入れる場所、通常は、Rebolier
  ●Condenser Duty:コンデンサーで除熱する場所、通常は、Condenser

10.Configuration>Connections>Side Draw Specsタブ

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塔中段で抜き出すことを指定したストリームに対して、気液どちらか、抜き取る量を指定する。

11.Configuration>Connections>Stagesタブ

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Condenser、Rebolierの圧力は、Specification タブで設定した値が入力される。各段の圧力、段効率を入力することができる。Estimate Stage Pressres by Interporaltionボタンで各段の圧力を線形内挿することができる。通常はこの方法で十分だと考えている。

12.Configuration>Initial Estimateタブ

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蒸留塔の収束計算の初期値を指定できる。入力しなくても計算実行はできるが、入力した方が収束性はよい様に思う。

入力できる値は、各段の温度、蒸気モル流量、液モル流量、気相・液相の各成分組成である。

温度が入力しやすいので、おおよそでも入力しておくのがよいと思う。塔頂と塔底の値を入力してInterpolate Temperatureボタンで線形内挿入できる。内挿を再計算をするときには一端、Stage1-20を複数選択後、×ボタンでempty cellsにしてから、計算を実行する。

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まとめ

DWSIMでのColumnモデル群について紹介した。Distillation Columnモデルについては詳細な設定方法を説明した。

所感

今回は、ソフトウェアの使い方しか説明できていないので、今後、蒸留計算の理論背景や、具体的な計算例を整理していきたい。

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