医療用大麻解禁と使用罪追加について

部会の最後の回はまだ議事録が公開されていませんが、それ以外はざっと眺めました。
かなり酷い内容でした。
はじめから医療用大麻解禁ありきで、大麻を持ち上げたり、超エリートである委員が大麻経験を告白したり、1回をまるまる麻農家の伝統についての議論で消費したり、最終的に使用罪追加と医療用大麻解禁が決定したとマスコミへ発表されましたが委員の1人がFBで「それすら嘘で使用罪追加は1人が賛成したがそれを決めるようなやり取りすらなかった」と暴露しました。

はじめから医療用大麻解禁という結論が決まっており、部会はそれを自主的合理的に決定したかのようなアリバイ作りの会議だったように見えました。
使用罪追加をマスコミに匂わせたのは、ただ単に医療用大麻を解禁すると国民が反発することや、官僚のメンツが潰れることへの対策でしょう。

頭の固い部会がいきなりこのような暴挙に出ることは通常考えられませんが、半年前に似た出来事が起きていました。半年前に日本より頭の固い韓国が医療用大麻を解禁したのです。

また、部会の議事録にははじめとおわりで興味深い愚痴を垂れている委員がいました。
「戦前の日本は台湾のあへんを撲滅するため専売制を敷き、少しずつ減らすつもりであったがあまりにも儲かるため途中から金儲けのためにあへんを売るようになった。欧米の大麻合法化もこれと同じで今は"あがり"を得ることが目的になっているのではないか」という内容の愚痴です。
最初はマフィア対策や社会的コスト削減のためやむなく合法化したとしても、自国で合法大麻産業が確立すると今度は外国に解禁を迫り売りつけることは誰でも考えるでしょう。

日本と韓国で起きたことは何もかもが矛盾しており、アメリカ等から医療用大麻解禁を指示されたとしか解釈の余地はないでしょう。

なお私はこのような出来事が数年以内に起きるとWHOが大麻の医療適用を勧告した時にTwitterで連投しまくった記憶があります。
その時の私の主張は以下のようなものでした。
・市民は大麻を麻薬・覚醒剤に次いで特別視しているが、厚労省は大麻は酒やベンゾと同等であると百も承知であり、昭和時代にマトリのTOPが証言していたように単に社会秩序のために取り締まっているにすぎない。起訴されても実刑を受けるのは1割にも満たないくらいであるため、市民よりも裁判官・厚労省・警察のほうが職務上の必要性から客観的に薬物をランク付けしている。
・西洋は大麻の取り締まりに失敗したため、その点で東洋に遅れている。よって西洋は東洋を同じステージに引きずり下ろしたいはずであり、西洋の衛星国である日本・韓国・台湾がこの要求を断れるとは思えない。
・大麻取締法は当初罰金刑があり、少量の所持は罰金刑で済んでいた。これを厳しくしたのは単に取締が上手くいったため社会秩序を維持する目的であり、大麻の個人使用そのものは罰金刑相当としか考えられていなかった。
・従って取締に失敗した欧米から強烈な圧力が加わった場合日本政府に国家存亡をかけてまで抵抗する理由はない。
・欧米の圧力は2段階方式で行われる。まずは直接日本政府に圧力をかけるのではなく、WHO勧告などを通じ日本医師会に圧力をかける。日本に違法大麻がある程度広がり、日本医師会と薬物中毒者が日本政府とはっきり対立するようになってから医療用大麻解禁の圧力をかける。ここまでが第一段階。医療用大麻が解禁され、引き続く圧力によって処方対象が拡大すると、コンサ、ベンゾのように取締が困難になり嗜好大麻への厳しい罰則が社会に損失をもたらす不合理なものとなる。そうなったのを確認してから嗜好大麻非犯罪化の圧力をかける。

WHOが大麻医療使用を勧告したときに以上のような内容をひたすらTwitterで連投した覚えがあります。
「多くの人は信じられないだろうが、日本政府はあっさり医療用大麻を解禁するはずだ」のようなことを何度も繰り返した覚えがあります。
実際に半年でそうなったので満足です。

それでは、既に公開されている部会の議事録のうち他の注目点も解説します。
部会では医療用麻薬、向精神薬、危険ドラッグなど幅広い言及がありました。
まず、危険ドラッグとコンサータについては「取締が成功した」と明言しています。これは今後の取締方針の大幅変更の予定がないことを意味しているでしょう。
一方ベンゾについては「処方量が多すぎる」と明言しており、既に毎年厳しくしているものを更に厳しくする方針とみられます。しかし「ベンゾは必要不可欠である上、我が国は他の代替品が制限されていることや医者が患者1人あたりにかけられる時間が少ないため構造的に医療現場はベンゾに依存せざるを得ない」といった過度の規制を戒める言及も多く、コンサータや医療用麻薬のような水準の規制は導入しない方針も読み取れます。
最後に医療用麻薬について「処方量が少なすぎる」と処方量を増やす方針が明言されています。具体的な数値目標まで示されており、医療用麻薬は今回の部会のテーマである大麻法改正を待たずすみやかに政策に反映されるものとみられます。

総評

大麻に関する議論のみならず、他の議論も含めて議事録の全てが不自然であり、ほとんどのやり取りは何らかの背景をもって行われたとみられます。
極端な言い方をすれば、アメリカが日本に毎年提出する「年次改革要望書」の依存性薬物の扱いに関する部分のみ全て抜き出して、それらへの対応を全て日本政府が自主的に行ったことにするアリバイに必要な会話を行ったようにすら見えます。

これからの予想

以下は私はもともと思っていなかったことであり、ここ最近になって持った考えですが、直接アメリカ企業の売上になる大麻に限らず薬物全般において日本・韓国・台湾の規制を緩めさせると予想されます。
アメリカは中国ロシアとの構造的な対立が年々厳しくなっていますが、冷戦時代とは異なり衛星国を中国からデカップリングさせるのは不可能となっています。中国ロシアも冷戦時代に比べて経済を重視するようになっており、例えば韓国のような国は仮に中国の半植民地になったとしても西側陣営に留まり苛烈な制裁を受けるより経済的にマシ、という状況になる可能性がこれまでになく高まっています。
実際に香港・マカオなどは中国政府の支配が苛烈になるに比例して経済的利益は増しており、中国は西側諸国ではとうてい提供できないバリューを香港・マカオに提供しています。
一方オーストラリアが中国に支配されることは大量の移民で塗り替えられたり軍事的に制圧されない限り考えられません。オーストラリアと中国では文化があまりに異なるので、欧米風の思考や行動様式を捨てる代わりに平均年収を100万円上げるという決断を数千万人単位が行うことは非現実的だからです。
東アジアにおいて中国に対して劣位に立ったアメリカは、日本・韓国・台湾およびその他のアジアの同盟国を「オーストラリア化」することを確実に目指すでしょう。これはその可能性があるとかそんな気がするという個人的意見ではなく、100%この手の政策はやるはずです。
もとよりアメリカは戦後日本に高度に自由主義で民主的な制度を作り上げましたが、これは必ずしも支配層と非支配層を入れ替えて新しい支配層がGHQを支持することを目論んだというような短絡的な戦術ではないはずです。もしそうであれば韓国や台湾、フィリピンで行ったようなもっと効率的なやり方で良かったからです。敢えて手の込んだ制度設計をしたのは、仮に韓国・台湾を失っても日本が自律的に共産圏と対決してくれるようにする「オーストラリア化」の意図があったからでしょう。

話を薬物問題に戻すと、我々日本人は元から西洋は薬物問題が深刻であるイメージがありましたが、確かに西洋は日本と比較すると元から違法薬物が圧倒的に蔓延していましたが、それは現代のようなレベルではありませんでした。
日本人のイメージする「薬物が蔓延する西洋」は20世紀後半のある段階から更なる上昇軌道に乗り、今では20世紀とは全く別次元の薬物乱用率となっています。
この上昇軌道を経験しなかったのがロシアです。よって日本人から見るとロシアも西洋も同じように薬物が蔓延しているように見えますが、今や西洋は薬物蔓延においてロシアとは異なる次元にあります。
これは褒められたことではありませんし、確実に欠点であり、中国ロシアが意図して薬物を撒いた疑いすらありますが、ここまで薬物が蔓延してしまうとかなりの割合の欧米人が東側では生きていけないと感じるでしょう。
技術の進歩で娯楽が充実したのになぜここまで薬物が蔓延してしまったのかは不明ですが、結果的に薬物問題は欧米諸国を西側陣営に縛り付ける強力なくさびとして機能しています。
薬物問題にも「程度」というものがあり、20世紀のアメリカや中南米の水準ならともかく、現代の欧米のような未曾有の水準になると国民を西側陣営に縛り付ける非常に有用なツールになってしまっている現実があります。
これは違法行為が関わるため政策担当者がおおっぴらに口にすることはないでしょうが、日本・韓国・台湾を西側陣営に縛り付ける切り札に使えることは多少なりともこの問題に関心を持つと誰もが気づくでしょう。

今回の部会ではコンサータと危険ドラッグは現状維持、ベンゾは少し減らす、医療用麻薬は大幅に増やす、医療用大麻を解禁するという幅広い分野の方針が示されましたが、「大麻合法化」のような極端な内政介入を行わずともこのような処方薬の数値目標やブロンなど市販薬の規制のあり方に口出しすることで日本韓国と中国の距離を広げることができます。
特にアメリカはベンゾに厳しく医療用麻薬に緩い傾向があり、覚醒剤はあまり普及しておらずアンフェタミン級のスマートドラッグ的アッパーケミカルが広がっており、大麻も広がっています。日本は多数の自殺者を出してまでリタリンを禁止したのにそれから数年でコンサータを国民に撒いたり医療用大麻を解禁したり、既にかなり減らしているベンゾは更に減らすが、医療用麻薬は数値目標まで立てて爆発的に増やすなど、今回の部会で示された方針はその全てがアメリカに似せることが目的にしか見えません。

一方ロシアはどうでしょうか。
ロシアは人種が欧米系であるため全体主義国家であっても国民に法律を遵守させることは難しいと言えます。したがって日本よりはかなり違法薬物が蔓延していますが、法の抜け穴は素早く防いでおり、向精神薬の規定も日本よりかなり厳しくなっています。
日本はコンサータ、ベンゾが撒かれているため本当にそれを必要としている人であれば努力をすればコンサータの処方を勝ち取れますし、ベンゾについても同じことが言えます。日本では合法的に安価でベンゾ酒を飲めるため、大麻に手を出す必要がそもそもないとすら言えます。
一方ロシアはお上の言うことを聞かない欧米系の気風から覚醒剤、大麻は日本よりずっと広がっていますが、コンサータも重ベンゾも禁止されているのである種の心の病を抱えた人ははじめから選択肢が違法薬物しかない状況にあります。
日本はそれに加えて伝統的に酒・タバコに寛容な政策であるため密造酒など作る理由がありませんし、歩きタバコをしても条例で禁止されているだけで逮捕され略式起訴されるわけではありません。
今となっては東洋の日本と西洋のロシアでどちらがドラッグに恵まれているか分からない状況といえます。アメリカによる「オーストラリア化」政策は未来予想ではなく既にかなり進展している現実なのです。
「オーストラリア化」の最終到達地点が欧米の状況であるならば、この先数十年は中国と分離させる目的で日韓台に薬物が撒かれ続けるでしょう。

一般常識から予想できるこの長期トレンドとは別に、私は個人的に近未来の日本にかなり大胆な圧力が加わる短期トレンドもあるとみています。
類似の例に戦後日本で行われた社会改革があります。
日本は原則的に実力主義の社会であり、大学はペーパーテストの点数を見て、企業は本人がどのような人物であるかを見ます。これは戦後に圧力をかけられそのようになった訳ですが、圧力をかけた側の欧米はそんなクリーンな社会ではありません。
「日本は明治維新で欧米と同じ制度を導入しても欧米に比べて階級制が作られやすい文化であったため、たった50年で一部の資本家やエリート軍人の利益のため破滅的な動きに出てしまった」とGHQも多くの日本人も考えたから極端にクリーンな制度を導入し今日まで維持し続けてきたのではないでしょうか?
日本人は隙あらば階級を作ろうとする自覚があるからこそ、せめて社会制度は属人主義的にして釣り合いを取っているとみられます。もし日本人が自分たちを自由と平等を愛する民族だと思っているのなら、ペーパーテストや入社試験、出世競争に固執する理由はなく、諸外国のように好きなだけ裏口入学、縁故採用をしても問題はないはずです。日本人がそのようなことをしてしまったら最後、半世紀もすれば中世的な階級社会になってしまうと誰もが内心思っているから、制度を作るとき試験の点数や仕事の成績といった属人主義的評価に固執するのではないでしょうか。

話を「短期トレンド」の具体的な説明に戻します。
今回の部会の議事録では医療用麻薬や医療用向精神薬の処方量について目標値が挙げられましたが、医療用向精神薬は目標値を大きく上回っており特にベンゾを減らすべきだが、日本人は麻薬を嫌悪するために医療用麻薬はなかなか目標に近づかない、という指摘が行われています。
これはどういうことかというと、たとえばアメリカと同じ基準を日本に持ち込んだ時に医療用向精神薬はアメリカに近い数値を達成するが、医療用麻薬は大きな不足が発生してしまうことを指摘しています。
少なくとも医療用麻薬については目標を達成するには欧米よりかなり緩い基準で処方する必要があるというのは部会が指摘する通りでしょう。
つまり、アメリカから「アメリカより多いからベンゾを減らせ」「アメリカより少ないからモルヒネを増やせ」と指示を受けたとして、それを達成するためにやることはアメリカとは違うということです。
アメリカに近づけるとは制度をアメリカと同じにするという意味ではなく、実際に市中に撒かれている数値を近づけるという意味だ、ということに非常な注意を払わねばなりません。
現実に薬物が撒かれていなければ、誰も使っていないということであり、日本社会を中国社会から引き離すという最終目的に寄与しないからです。
日本社会を中国社会と異なるものにして西側陣営に縛り付けるには、制度ではなく国民の口に放り込まれた薬の数で日本社会、中国社会、アメリカ社会を判定し日本社会をアメリカ社会に近づける必要があります。
日本社会は70回以上の「年次改革要望書」によって既に制度はかなりアメリカに近づけられています。日本では一般疼痛にはトラマドールやリリカといった非麻薬性鎮痛薬しか処方されず、麻薬性は癌性疼痛のみと俗に言われていますが、制度は既にモルヒネ、コデイン、オキシコドンの一般疼痛への処方を許可しており、去年の秋にオキシコンチンの徐放剤までもが一般疼痛に認可されてしまいました。
米中対決が深刻化したこれからは実際に口に放り込まれた薬の数を中国から離しアメリカに近づけることが求められるので、医療用麻薬のように目標とされる数値を極端に下回っている場合際限なく制度が緩和されると私は予想しています。
私が個人的に予想するようになった「短期トレンド」はこの現象のことです。

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