指標トレードについて

指標トレード」というものがあります。
重要指標が発表されると大勢がそれに従って売り/買いを入れるので相場が一瞬大きく動くが、モノの実態が大きく変わった訳では無いためある程度値を戻すという現象があり、その現象を利用したサヤ取り(指標発表後逆張りして利ざやを稼ぐ)が「指標トレード」です。
指標トレードの王様が「米国雇用統計」であり、毎月第一週か第二週金曜日の日本時間21:30とか22:30に発表されます。
これは発表された次の週の水曜日までには一度は全戻しし、ほぼ100%の確率で半戻しは起きると確認されています。
私も2015年くらいに東大卒の高校同期に1990-2015年の25年間のデータでシュミレーションしてもらったところ、規則に従ってサヤ取りすれば1年間だけ赤字、他の24年はどの年度も大きな黒字となる結果になりました。
しかしこれは現実に行うのは困難です。

米国雇用統計時のユーロvsドル

上の画像では雇用統計で大きくユーロが上昇(ドルが下落)した後、天井近くでユーロを10枚空売りして雇用統計発表直後の価格に利確決済の指値をいれています。
しかしこのような行為は現実には困難です。
このチャートでは3時間に渡ってユーロがビヨーンと上に伸びていますが、実際はそのあいだ細かな上下を繰り返しています。ユーロはまっすぐ上がって分かりやすく天井を打ってくれる訳ではありません。
よって天井or底の判定をする事は不可能で、例えば上の画像では利確決済の指値を入れているあたりの価格にユーロが上がった時点で「雇用統計でドルが暴落した!」と判断して逆張りユーロ売り参入をしてしまうのがふつうです。
もしそれをすれば、そのあと上記チャートの通りユーロは更に2時間半上がってゆくので仮に10枚で参入していれば天井時点で120万円ほどの含み損を抱えることになります。
しかも「雇用統計は来週水曜日までに一度は戻す」と言っても上画像だと雇用統計発表直前の1.08300キッカリまで戻してくれるとは限りません。天井が1.092なので、中間地点の1.08750あたりに一度つけて「半戻ししました」となりそこからはユーロが一方的に上がってゆくかもしれません。
この場合、雇用統計発表10分後1.08400あたりで戻しを期待して逆張りした人は永遠に利確できないことになります
よって統計的に米国雇用統計を使った指標トレードだけで飯を食えることは証明されていますが、実際にはいろいろ頭を使わないとそれはできないということです。
それよりも、米国雇用統計は「ドルが大きく動き、次の水曜までに一度は戻す」という現象それ自体がさまざまな副産物をもたらします。

同じ雇用統計時点のビットコインvs日本円

雇用統計によるドル安で円高が生じ、円ベースで見るとビットコインが暴落しています。

同じ雇用統計時点の日経225

この時、世界的株安と円高の影響で日経平均株価は暴落に暴落を続けていましたが、上画像だと真ん中あたりの3万5560円からの暴落は雇用統計による円高が原因です。ドルが暴落し、円が暴騰したから円ベースだと日経平均株価が暴落して見えるのです。

同じ雇用統計時点のUSドルvs日本円

この時、1ドル161円まで進んでいた円安から日銀と米国FRBの政策変更が原因でいきなり1ドル149円まで円高に振れたことが話題になっていました。この円高は円ベースで見た日経平均株価の下落にも寄与しています。
しかし149円から146円までの突然のドル暴落は米国雇用統計によるものです。従って他にドル安/円高の材料が土日、週明けに出てこなければ最低半分以上、つまり147円50銭以上には戻すし、高い確率で149円付近まで一度は戻すということが過去データから予想できます。

同じ雇用統計時点のドルインデックスとユーロvsUSドル

最後に同じ時点でのドルインデックスとユーロ/ドル(ユロル)の画像も貼ります。
ドルインデックスというのはUSドルとさまざまな物品、通貨(金とかユーロとか石油とか)のパワーバランスを総合してドルの評価を指標化したものです。
その下に貼ったユロル(ユーロvsUSドル)もドルインデックスと同じくUSドルの客観的評価を見る参考になります。
両者とも、米国雇用統計発表と共にドルの価値が暴落し、日本時間土曜朝6時の市場クローズまで似た水準をウロウロしているさまを示しています。
この2つが客観的に見たドルの評価ですが、円の評価はその真逆であるはずです。従って円に対してビットコインが下がったり日経平均株価が下がったりした動きも、日銀/米国FRBの政策変更による従前からの円高とは別に米国雇用統計による一時的ドル安の影響が直近では主体になっており、この動きはドル高修正に基づいて一度はある程度戻すと予想できます。
ただし、本当にドルの価値が下がったり円の価値が上がる別の材料が週末や週明けに出てしまうと「戻し」は起こらずに円高株安トレンドが続きます。

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