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ロードアイランドの10月 私の湖

車で10分飛ばせば、この風景に入り込むことができました。
1周30分くらいで歩けるこの小さな湖は、場所によって全然違う表情を見せてくれる見どころの多い湖で、大のお気に入りでした。こんなに素敵な場所には人が集まるのではないかと思いますよね。ですが、ここニューイングランド地方は自然豊かで、人口密度も低く、銘々お気に入りのパワースポットがあるようで、そんな心配はありませんでした。1周歩くと地元の人たちと多くても4,5組すれ違うくらいです。

ここで出会う人たちも気持ちが良く、手を振ったり、お互いに軽く挨拶やスマイルを交わすことが多く、安心感がありました。そんな小さな交流を除けば、朝でも昼でも夕方でも、聞こえるのは自分が踏んだ落ち葉と風や動物たちのたてる音だけ。ひとりになれる幸せな時間でした。

10月には木々が日ごとに色づき、毎回違う絵を見せてくれます。

そんな幸せな湖での時間ですが、もちろん自然の中ですので気は抜けません。夏は蛇もいますし凶悪な虫にも刺されます。一方で冬は雪が全てを白一色に変えてしまい、道に迷ってしまったこともあります。季節だけでなく時間帯にも注意が必要で、当然ですが、日が落ちると急に危険度が増します。公園と名の付く敷地内の遊歩道ですが、前述のとおりひと気はありませんし、時々みかける樹の、灯りもないのです。ちょうど日が落ちる時間帯の、秋の夕暮れの湖は、信じがたいほど美しく、子どもたちにも見せたくて連れ歩いたものですが、撤収の判断は分刻みでスリルがありました。

銃声が遠くに聞こえるハンティングシーズンには、人工物だと見分けがつくようにオレンジ色のベストを着て歩くとよいという注意喚起もありました。ハロウィンの仮装ではなく、安全のためにお散歩に来ているペットたちもオレンジ色のものを身に付けているのです。よくわからずふわふわ歩き回っていると、日本からぽっと出てきた人間の私なんて、危険なことがたくさんありました。

それでも安全に気を付けて、何度でも通いたくなる身近な大自然。
6月に開かれるアートフェスティバルでは、わたしが好きなこの10月の風景に出会い驚いたことがあります。作者さんに話しかけてみたところ、地元のアーティストの方でした。同じ宝物を享受している仲間のように感じられ、つたない英語で感動を伝えたところ、作者さんも喜んで下の写真の絵を譲ってくれました。

「私の湖」へ続く道を描いたこの絵は、今は日本で生活を彩っています。
落ち葉も日ごとにふかふかになっていきます。アメリカに住んで秋の楽しみを知る。

湖では春夏秋冬それぞれ面白い活動をしている人もいますが、やはり私が好きなのは、一雨ごとに秋が深まる10月の湖のほとりを歩くことです。


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