旅気分ジェラート

「テイクアウトはシングルだけ、フタできないから」
イタリア人らしき女性店員が言う

でも私の口はもうさっぱりと濃厚の両方を求めている
店の隅に1人でも座りやすそうな椅子を確認し、ブルーベリーレモンとプラリネのダブルを注文する

オーダーからほんの数秒で目の前に置かれたジェラートを手に、いそいそと椅子に座る




そこはジェラートケーキが静かに並んだショーケースを横から眺められ、機械ひしめく厨房も見渡せる特等席だった
作り込まれたジェラートケーキは美しく静かだ


マスクを外すと、清潔で凛とした匂いを感じる
油の混じったカフェの匂いとは違う、工場のような潔さに感動し何度も深呼吸する

ブルーベリーレモンは背筋の伸びるすっぱさで鮮やかに疲れを吹き飛ばし、プラリネの香ばしさが冷えすぎた舌を柔らかく包んでくれる

ひんやりとしたカウンター、壁に並んでかけられた青い絵の皿、厨房の機械の上の大きな額縁
さっぱりとした媚びない接客も相まって、本当にイタリアにいるように錯覚してくる


浮かれた海外旅行なんて考えもできない現代に、こんなお店は救いだと感じた


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