「トヨタがやっているから」は理由にならない
トヨタ自動車がリモートワークでどこでも勤務が可能な人事制度をつくった。トヨタといえば、「現地現物」重視であり、製造業であり、リモートでそれをどれくらい実現できるのだろうとか、いろいろ興味はある。
トヨタ自動車といえば、日本で一番有名な企業であろう。世界レベルでの認知度も、日系企業の中では一番高いのだろう。
ところで、弊社では人事施策については何にしてもトヨタの動きに追従しようとする傾向はある。
「トヨタがやっているから」はやる理由になり、「トヨタはやっていないから」はやらない理由になる。
違和感を感じる人も多いと思う。私もそのひとりだ。
弊社はトヨタ自動車とも多少なり関係のある製造業だ。
たしかに、人事に限らず会社の随所にトヨタの考え方を参考にしている。そのため、多少なりトヨタに似た風土もあるのかもしれない。
当たり前だが、リソースはトヨタには遠く及ばないだろう。量的にも、質的にも。
その状況なら、トヨタの施策のトレースで、ベストとは言えずとも、ベターぐらいは狙えるのかもという考えもわからなくはない。他にも理由があるのかもしれない。ただ私はやはり反対だ。理由はいくつかあるので以下に書く。
①そもそも弊社はトヨタではない
これは多くの人が思うはずだ。多少なり似ているところもあるかもしれない。けど全然違う会社だ。中にいる人も、規模も、風土も、違う。
トヨタでうまくいったからといって、弊社でうまくいくとは限らない。至極、当たり前のことだと思う。おそらく、弊社の人たちもわかっているはずだ。
②自分で考える力を失う
これ、とても大きいと思う。そもそも、「トヨタがやっているから」はまったく理由になっていない。本当に考えるべきは、「なぜトヨタはそうしているのか」なのだと思う。
事例をそのまま取り入れるのではなく、自社の課題に対してフィットする施策を取り入れるべきだ。
ただ、「どんな施策が自社の課題にフィットするのか」を考えるのがまた難しい。というかそれに正解があればチョロいもんだ。正解がないからこそ、悩ましい。
そういうときに、トヨタはじめ他の会社が同じ課題に対してどんな施策をうっているのか、その背景は、他に考慮される要素は、結果どうなったのか、ということを参考にできる。施策そのものを参考にするのではなく、施策に至るプロセスと、その結果から見える反省点を参考にするのだ。
「なぜトヨタがそうしているのか」を考えていれば、「トヨタがやっているから」という理由は出てこない。「トヨタがそうしている理由」を言語化して、それが「自社がそうする理由」になるのかを突き詰めるべきなのだと思う。
「なぜ」を考えることを怠るのは思考停止だ。それこそトヨタの問題解決でも、「なぜ」を繰り返して真因を探ることは最重要ポイントなのだから。
③社員に説明できないじゃん
社員に「なぜこうするのか」と問われて、まさか「トヨタもやってるから」と答える人事担当者は弊社にはいないと信じたいが。
ただ、その際に結局、上述の「なぜ」をきちんと言語化できていないと、説明に窮することになるだろう。
それっぽい理由をつけることはできるかもしれない。それでまぁその場は収まるかもしれない。
けれど、そうやってあいまいに濁して、積み重ねた澱みは、いつか自社の根幹を揺るがすかもしれない。
気づかない間に砂上の楼閣にいるかもしれない自覚をしなければ。
おわりに
いきおいで書いてしまいましたが、もちろんトヨタの考え方や姿勢に見習うべきところはたくさんあると思います。
特に製造業として、あれだけの現場の強さを生み出している会社はやはり他に類を見ないですし。
とはいえ、トヨタもあくまで数多ある他社事例のうちのひとつ。自社に最適なものは自社で考える、というのは大事にしたいなと思うところでありました。
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