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型絵染の世界に導かれて

その日は灰をふるう作業をしてくたびれたので、2階に上がって母が使っていた部屋でフローリングに横になっていました。
ふと本棚の一番下に目をやると、芹沢銈介展 砂川美術工芸館コレクションと砂川美術工芸館 所蔵作品目録Ⅰの図録があることに気がつきました。
今まで見たこともなかったのですが図録の中には新聞の切り抜きが挟んであり、柏市郷土資料館展示室で開催されている芹沢銈介没後30周年特別企画展のことが書いてありました。
平成26年に開催された展覧会へ行った記念に買った図録でした。
美術好きの伯母の影響で母もよく美術館へ行っていましたが、かつて型絵染作家の芹沢銈介さんについては話したことはありませんでした。

型絵染の重要無形文化財保持者

静岡市芹沢啓介美術館まで行かないと実物を見られないと思っていたものが、柏市沼南庁舎にある柏市郷土資料展示室で見ることができました。
芹沢さんは32歳のときに柳宗悦師の論文「工藝の道」に出会って、翌年沖縄の紅型の美しさに強い衝撃を受けて、染色家になることを決意しました。紅型と和染に学び、図案・型彫り・染めまでを一貫して行う「型絵染」の技法を生み出したのです。

今回の展示は「芹沢銈介の四季」人間国宝の型絵染作家である作品は、民藝館でじかに見てきたときと同様に用の美がはっきりと感じられました。

無限の可能性を秘めている

民藝館とは対照的に一つひとつの作品に解説がついていているのも新鮮でした。
中でも「御滝図のれん」にまつわるエピソードが別冊で載っていたのがいただけました。

一つの構図の作品が完成されるまで14年、長いもので27年の歳月かかかっていて、どんどんブラシュアップされていったのだそうです。
確かに1930年代の作品は若い感じがして1960年代では洗練されて年を追うごとにデザインが進化していくのがわかりました。

様々な文様が表現されていた

型染の型になるデザインはスケッチからはじまり、抽象度を上げてそのものの存在を平面に落とし込む作業なのだと思いました。
「四季曼荼羅図」を見たときに、それは確かに立体で表現されていました。
同時に春夏秋冬、東西南北という四つの方向があって、宇宙の真理の曼荼羅を型染めで表した作品だと気が付きました。

そのような視点でみると春夏秋冬もそうですが、文字を立体的に型にする、というのが特徴的です。文字を立体として捉え型を掘り、色を付けることや白く抜くことで、その文字のイメージを全体で表現していることです。
春なら春の文字を立体にして色で春らしく、春の植物や動物を描いています。
来場記念にポストカードをいただいたのですが、夏の白抜きと地が紺のところが暑い夏を爽やかにする感じが伝わってきました。

母が行ったときの作品にも「四季曼荼羅図」があったので、時を経て同じものを見ているんだなと心に残る作品と出会えました。


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