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介護職、「居場所」創りを模索する①


お元気ですか。

どてさんぽ です。

今回のテーマは「居場所」

 介護の対象となるご利用者は、その時過ごしている場所を「居場所」として実感されているのだろうか?
そう考えたきっかけがあります。

あるとき、訪問先の住宅に入居されていたご利用者が
「ここは自分の居場所ではない」と呟いていたことが報告されました。

その方は、事情があって家族から離れて生活されていたのだけれど、
訪問する職員は家族とも協力しながら、
集団の中の一人ではなく、
個人としてその方に向き合い、配慮している様子が見て取れる背景がありました。

とはいえ、家族から離れて過ごす寂しさがあるのか…

早速介護職員間で検討がなされました。

最近家族のいる自宅に帰りたいという気持ちが強くなっている様子であることが報告されます。

そして、マズローの5段階欲求 から

生理的欲求  (〇〇が食べたい、寒いからあたたかくしてほしい、気持ち悪
                   いから尿パットを交換して欲しいなどの欲求)

安全の欲求  (お金や命の危険にさらされることなく生活できること)

これらを職員が満たすことはできても、

社会的欲求 (自分を受け入れてくれる他者の存在)

承認欲求 (自分の存在を認めてほしい)

これらを満たすことは、介護職員では難しいのかもしれない、
という中間地点での結論が出ました。

それでも
改善策として

① その方に向けられたご家族の配慮を言葉で伝え、ご家族が居なくても気持ちが伝わるように関わる
 「これは、娘さんが持ってきてくださった○○ですよ」
 「今週○日に息子さんがいらっしゃいます」

② 短時間であっても本人が気持ちを表現できる時間を持てるようなお声がけをする。
 「訪問時、気になることがありませんか?」等


といった支援内容を新たに計画に組み入れ、実行することにしました。

その後、この方から「ここは自分の居場所ではない」という言葉を聞くことはありませんでした(実際の思いを正確に慮ることは難しいのですが)。

しかし、

時間が経つにつれて新たな疑問が湧いてくるのです。

人は、どのような場所であれば、自分の居場所があると感じられるのか?

どこかで聞いたことのある言葉たちを並べてみます。

“自分の能力が評価されて、必要とされ、誰かの力になることができる場所”

“ポジティブな気持ちを共有できる人がいる場所”

“家族などお互いのことを大切に思う人たちがいる場所”

“何かしているから、何か出来ることがあるから だけではなく、自分がここにいるだけでこの場所に属していると実感できる場所”

“似たような人生経験を持っている人たちの集まる場所”

“自分の存在を排除しようとする者が少数派である場所”
                            …などなど

自分の存在に自信を持って、そこから「居場所」は生まれるんだ
というメッセージが、これら何処かで聞いたことのある言葉たちの中には含まれているように思います。

今度は、「居場所」という言葉を含めて文章を作ってみると…

何かができるにしても、できないにしても、私はここに存在していて、私を排除しようとする“何か”から攻撃を受けても揺るがされることはありません。
誰かが“私”を攻撃してきても、“私”の味方をしてくれる“あなた”がいる場所ならば、そこが私の居場所です。
大切に思うものの不在は、私の居場所という感覚を薄める。


先のご利用者が「自分の居場所がない」と呟いときの「居場所」とは、
その人自身が主体として他者および周囲に関心を向けるという側面からの話だとみることができます。

先述した、「家族がいなくても、家族の気持ちが伝わるように関わる」
という支援計画を、介護をする者が自然に生み出してしまうのは、

あなたが他者に対して関心を向けるのと同様に、家族もあなたに対して関心を向けていることを伝えたい。

そんな無意識の感覚の顕れだったのかもしれない。

***

主体的に他者の存在に関心を向ける前提には、

”私”が存在していることを、”私”自身がゆるすという自信(もっと強く言えば、確信)があっての言葉のように思えます。

私は、私に許可を取ってこの世に生まれてきたわけではないのに

私が存在することを、私自身が許す 

なんてことができるのかしら?

なにか、ヒントになる考えはないかと
本を読んでいると、こんな言葉が目にとびこんできました。

「『居場所』というものに、この時代、老人だけではなく若者もまた渇いている」 鷲田清一(2015).『老いの空白』岩波書店, 30頁

 たしかに、
 …居場所は、介護を受ける者だけの問題ではないですね。

 今回の宿題と、次の課題をいただきました。

                           ではまた👋

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