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本を読む習慣とか

子供の頃から本ばかり読んでいた。その理由はたぶん家に本がたくさんあったからだろう。ウチの父親は本人もそう言っていたが、ビンボーなウチの出で、高い本とか買ってもらえなかったのだろう。父親は大人になってそこそこの給料をもらえるサラリーマンになって(昭和のリーマンってやつだ)、どこまで自覚的であったのかは知らないが、当時流行った百科事典やら日本文学全集とかを本棚とセットで購入したりした訳だ。「庭付きの家を購入した人が芝生を植えて犬を飼うみたいな感じ」とか、たしか初期の村上春樹の短編に書いてあったはずだわ。
もちろん本人は購入したことに満足して最初に届いた配本のうちの漱石とか芥川とか太宰あたりの最初の数ページを開けて読んで、それっきりだったのだが、ヒマな子供の(子供というのは基本ヒマをもてあましているもんだ)私はその中で面白そうなものを拾い読みしたり、百科事典だと厨二病っぽい魔法具とかヒーローとかの話をひとつ読んで、それに関連する話を読んでたりしていた訳だ。

初回配本で満足した父親は、そのあとに続く第二回、三回配本にカネを払うことに躊躇して結局ウチの全集は全巻揃うことなく当初の3分の2ぐらいの数量で終わった。だから私も文学史とかに出てくる日本近代文学の代表的な作家の代表的な作品はだいたい読んだんだが、ウチになかった分、二葉亭四迷とか独歩とか安吾とか横光利一とかだけど、大学入る頃まで読んだことなかったんだよね。だからどうしたって事ではあるが。

で、今から思えば文学全集もいいけど、中公から出してた「世界の名著」もあればよかったんだけどね。あれがあったらなんかあった時にちょっと出してきて簡単に調べられるからねって、そんなこと滅多にないか。
こんな話を書き始めたのも、定年後に何をしたらいいのかわからない人のために、新しい趣味を持ちましょうとかいうエッセイみたいな文章読んでて、それに「仕事で調べ物をしていた人は、定年後は歴史なんかを調べてみたらどうでしょう」とか書いてあってさ、そんなの聞いたジジイが本の代わりにYouTubeの陰謀史観とかにハマるだけなんだけどねぇとか思った訳。何事も基本を抑えとかないとトンデモ本とかにハマるからね。

基本が何かとかいうのは面倒だし説教くさくなるからやんないけど、まあ人文系なら「世界の名著」だし、歴史系なら文献の取り扱いとか論文とエッセイとチラシの裏の書き込みの違いが何かちゃんとわかってから楽しみましょう、インプットばかりしてるとアウトプットもしたくなるのもわかるけど、それが周りの迷惑にならないように気をつけましょうとかエチケットレベルの話をしてるのか、私は。

そんな感じで中学生か高校程度で日本近代文学のだいたいのところを読んだガキがどうなったかというと、別にどうにもなってない。人の道とか(しらんけど)を踏み外した訳でもないけど、人よりなんか優れたことをした訳でも能力がついた訳でも世界を救えた訳でもない。学校の国語の授業は退屈だったし(だって学年の初めに配られた教科書、1週間程度で最後まで読み切ってしまって中身全部わかってたからね)作文とかも書けなくていやいや書いただけで評価も普通程度だったはず。社会や理科の方が成績は良かった。でも大学受験あたりから国語の点数が他の教科より上になってきた、特に勉強してなかったんだけど、それはおそらくそれまでの読書量で読解力とかが高くなってだんだろうね。ダラダラゲームをやってたら知らんうちにレベルが上がってました的な。

ああ、あともひとついうと、大学卒業の時に卒論のある学部だったもんで卒論を書かされて諮問だなんだでかなりボコボコにされて学生はみんな半泣きにされてそのトラウマで卒論提出できなくて何年も留年しましたとかいう話もあったぐらい就職の世話とか全然しないくせにこの仕打ちかいとか当時は思ったけど、まああの特訓で基本的な文章の書き方教えてもらったし(STAP細胞騒動であの小保方さんの観察日記がどんなレベルのものかとかすぐにわかる程度に論文の書き方とかがわかるって話ね)、その後の実生活ですぐにわかるレベルじゃないけど役には立つことになりました。

あれ、なんかタイトルの本を読む話とだいぶずれてきてるけど、まあヨタ話にはよくあることで、変なタイトルに釣られてうっかり読んでしまった人は、残念でした、お疲れサマンサ。

あとおまけでいうと、ガキの時期に名作とか読んじゃうと、中身もわかんないでただ読んだだけで済ましてしまうっていう残念な結果になることがあるよ。でもまあそれは年寄りになってまたヒマを持て余すようになってから読み返したら一粒で二度美味しいとかいう話ができたらいいんだろうけど、たいていは老眼になって昔みたいに細かい文字を長時間読むだけの集中力がないからね。だからって言ってYouTubeとかに走るのもなんなんだけどね。

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