スパークル【真田幸村】-天下統一 恋の乱- ✎ 3 ちーかま 2024年4月23日 22:04 説明し難い感情を胸に、俺は一人庭で鍛錬をしていた。雑念を払うように己を奮い立たせる事数時間、気がつけば空は薄暗く、ぼんやりとした月明かりが俺を照らしていた。「もうこんな時間か…夕餉を取るのも忘れていたな」「幸村様?」廊下が軋む音に振り向くと、そこには陽菜が立ち尽くしていた。「夕餉の場にいらっしゃらないと思ったら、こんな時間まで鍛錬ですか?」陽菜は呆れ顔をしながら庭へ降り、俺へ手ぬぐいを差出してきた。「あ…いや…俺に近づくな」「えっ?」顔を曇らせた陽菜を見てさらに焦りが募る。「その…なんだ…俺は…今、汗臭いからな」陽菜はキョトンとした顔をし、次の瞬間コロコロと鈴の様な笑い声を上げた。「ふふっ…鍛錬お疲れさまでした」「お疲れさまはお前もだろう。その…明日は祝言だというのに今日も働き詰めで…」「それでしたら信幸様も同じです。今部屋に伺ったら、まだ仕事をされていました」兄上の名が出たところで、心臓が掴まれたかの様な痛みを感じた。「今から信幸様にお夜食をお持ちするんです。幸村様も如何ですか?」「かたじけない。ではお願いするとしよう」「ふふっ…承知しました」陽菜はいそいそと台所へと向かって行った。「失礼します」湯を浴び、着替えを済ませたところで陽菜の声が聞こえた。「お夜食をお持ちしました」「これは…」皿には甘い香りのする、穴の空いた菓子が山盛りに積み重ねられていた。「きなこどうなっつです。幸村様お好きですよね?」「あぁ、陽菜の作るきなこどうなっつは天下一品だからな」「嬉しいです」陽菜は茶を注ぎながら、赤い顔をして微笑んだ。「お夜食を召し上がりましたら、幸村様も早くお休みくださいね。明日は剣舞を披露してくださると、信幸様から聞きました」「あぁ、明日は兄上と義姉上の門出だからな」陽菜は少し困った顔をして「何時も通りに陽菜と呼んでください」と言った。「しかしだな、兄上と婚儀を結べは俺にとっては…」「家族ですから」「………」「明日は幸村様と家族になる日でもあります。私にはそれが嬉しいんです」「陽菜!」「!」俺は思わず陽菜の手を握りしめた。「俺は…」俺は陽菜に感じていた感情の正体に、ようやく気づいた。(そうだ…俺は陽菜が…陽菜が好きだ)「幸村様?」「いや…何でもない。呼び止めて悪かったな。明日の晴れ姿楽しみにしている」「はい!」頬を染め退室する陽菜の姿を、俺はただ黙って見送った。伝える事の出来ない言葉を胸に秘めながら。ꕀ꙳私は思いつきやフィーリングで行動する事が多々あります。この動画もSSも、ふと思いつきで作りました。私の中で幸村さまは『恋に不器用な人』そして『誠実な人』そんなイメージを形にしてみました。 #動画 #創作大賞2024 #オールカテゴリ部門 #二次小説 #幾田りら #真田幸村 #スパークル #天下統一恋の乱 #恋乱 #恋の乱 3 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート