双月㈡【藤林朔夜】-天下統一 恋の乱- ✎
「普段着で来いよ」
定期連絡だと言いながらも「普段着で来い」の意味がまったくわからなかったが、俺は指示にしたがった。
やがて弦夜が指定した庵に着いた。
庭の方に回ると、縁側で杯を持って佇む弦夜がいた。
弦夜は何時もの着崩した着流しではなく、仕立ての良い着物に身をつけていた。
「おー朔夜。早くこっち来いよ。美味い酒を飲ませてやるからよ!」
苛立ちを感じながら弦夜の元へと急ぐ。
「どういう事だ?定期連絡ではないのか?」
「ん?まぁ座れよ」
そう言いながら弦夜は杯を俺に手渡した。
「政宗から美味い酒をもらってよ。朔夜にも飲ませてやろうと思ってな」
「政宗様と呼べ」
「小十郎さんと一緒な事言ってら」
弦夜は反省する様子もなく、俺の手の中の杯に酒を注ぐ。
「朔…知ってっか?今日は俺達の『誕生日』なんだってよ」
「なんだそれは?」
「んー…要約すると美味い酒が飲める日ってことだな」
「忍は酒など飲まない」
「まぁまぁ…見てみろ」
弦夜は俺の持つ杯に自分の杯を軽く当てた。
「空にしかないはずの月が、今夜は特別に地上に降りてきている」
杯に視線を落とすと、それぞれの杯の中に月が映ったいた。
「な?今夜は特別だろ?月見酒と洒落こもうぜ」
「………」
俺は黙って酒を煽った。
喉に熱さを感じる中、口の中には何とも言えない余韻が漂っている。
空になった杯を弦夜へと差し出した。
「今夜は特別だ。月が綺麗だからな」
再度杯に酒を満たすと、中に月が浮かぶ。
俺は弦夜の杯に自分の杯をそっと重ねた。
「双子月だな」
弦夜がふっと笑みを漏らす。
「俺達と同じだ」
「弦と一緒にするな」
「一緒だろ?朔は俺の半身、俺は朔の半身なんだからよ」
「………」
「今晩は任務の事は忘れて、朝まで飲み明かそうぜ」
「今日だけだ…」
俺達は空が白むまで、二人きりで酒を飲み交わした。
ꔛ𖤐
弦夜&朔夜( ᐛ )( ᐖ )
🍰*˖…ꕤ𝙷𝚊𝚙𝚙𝚢 𝙱𝚒𝚛𝚝𝚑𝚍𝚊𝚢ꕤ…˖*🎂
たまにはしがらみを捨てて、二人でお酒を酌み交わすのも良いかなぁと思いました(*´艸`)
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