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ドストエフスキーの作家像

チェブラーシカを通じて知り合った人が、日本から船便でモスクワまでこの本を送ってくれた。

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「ドストエフスキーのある翻訳について、痛烈に批判している本だ」ということだった。

ロシア文学は長くて敬遠されがちである。そして、昔の訳の本は、図書館で見ても、字が小さく、古く、余計に敬遠してしまう。

ロシア好きの私でも、ロシア旅行に行こうと思うまで、ドストエフスキーを読もうとは思っていなかった。

そんなときに、「字も大きいですよ。新訳ですよ。」と宣伝され、本屋に行けば、新訳の本が平台においてあった。新訳の本は「ドストエフスキーの作家像」の本で痛烈に批判されている翻訳だが、当時の私はそんなことを知らずに、「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」を読んだ。

字が大きくて、長いロシア文学もスラスラ読めた。それをきっかけに、たまたま近所の図書館にロシア語版のドストエフスキー全集があり、日本語版のドストエフスキー全集もあったから、1巻から借りて、残すところ、手紙と日記というくらいまで読んだ。

そうしているうちに、新訳をした翻訳者がロシア大使館で講演会をするということで、それにも出かけた。

私にとっては、ドストエフスキーに対して身近に感じるきっかけとなった。しかし、ロシア連邦に関わりのある人たちの間では、この新訳の評判が非常に悪かった。

私の周りのロシア関係者が感じていたことが、この本でも書かれている。

特に、次の言葉はかなり印象的だ。


「誤訳にとどまらず、テクストの改ざんや空想のテクストに踏み込んで、作者を僭称する特権を許されていると勘違いしている。」(17ページ、4行目~5行目)

私も、日本に広めたいものを翻訳したいと思っているが、この本に書かれていることを肝に銘じておきたいと思った。

わざわざ船便で送ってくださり、感謝している。

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