ふたつの〇
今晩は満月だ。かみさんが出したアンケートで木皿が当たった。今朝それを受け取りに渓谷にある古い町に向かった。谷川沿いのすれ違い困難な山道をひやひやしながら抜け、砂利の駐車場に着いた。案内所で当選券を見せ、工房小屋に案内してもらった。40代後半ぐらい職人さんが手を休め、丸い直径27㎝の木皿を4枚並べ、この中から選んで下さいという。決めがたいので「どれが一番お好きですか?」と聞くと、「よく聞かれるんですよ」と言われ、無粋な問い*をしてしまったと気付き、ぱっと目に入った1枚を選んだ。*その方には4枚全部が完全品だ。それに優劣をつける要求をするのは大変失礼なことだ。選んだ皿は楓の木だそうで、淡い肌色の木の地の色に、虫食いの黒い点があるのも景色になっている。木目も美しいが、木目を横切るように杢模様が波のようにキラキラ浮かんでいる。杢は木が重力によってたわんでできるそうだ。製作自体の時間はそれほどかからないが、材木を乾燥させるのに3年かかったとのこと。とてもいいものを手に入れた。手には丸い木皿、夜空高くにはハーベスト満月。ふたつの〇で、私のハートは二重丸◎。
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