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話題の漫画『桃の園』をスーパー戦隊シリーズファンの目線から見た感想

(2024.8.14 一部内容を追加しました)

はじめに
批判的な内容が含まれますので、閲覧には注意してください。

ヒーロー『ゴクレンジャー』に憧れる少女・花岡さくらは『ピンク』の育成学校『桃の園』へ入学する。
幼い頃に怪人から守ってくれた『レッド』のように、率先して人を助けられるヒーローになりたいさくらだったが、そこには大きな壁があった。 女は『ピンク』にしかなれず、ピンクに許されるのは戦闘のサポートだけだったのだ。
これは、夢見る少女・花岡さくらが『レッド』を超える『ピンク』を目指す、反抗の物語

(『桃の園』公式のあらすじより抜粋)

2024年8月6日に公開された後、X(旧Twitter)をはじめとするネット上で瞬く間に話題になり大きな賛否を生んだ漫画『桃の園』。スーパー戦隊シリーズを彷彿とさせる雰囲気だが、様々な意味でその真逆を行く世界観と設定からスーパー戦隊ファンを中心として(批判が多かったが)様々な意見が上がっていた。

その直後にスーパー戦隊シリーズのファンからも高く評価されている漫画『戦隊レッド 異世界で冒険者になる』のアニメ化が発表されたことでそちらの話題の方が多くなり、戦隊ファンの間での『桃の園』にまつわる話題はやや落ち着きつつある。

こうしたこともあって公開するタイミングが若干遅い感じはするが、このnoteでは自分がこの漫画『桃の園』をスーパー戦隊シリーズファンの目線から読んだ率直な感想を書いていきたいと思う。
正直に言うと『桃の園』の存在を知った時は「ああ、こういう露悪的なパロディ系か」と思い、自ら進んで読んでみようという気にはならなかった。しかし読まずに意見を言うのも筋が通らないと考え、DLsiteで公開されている第1話を実際に読んでみることにした。


◇謎の多い世界観
読んだ時に最初に抱いた感想は、『世界観がよくわからない』だった。


あくまで第1話を読んだ時点での感想だが、今の時点でわかっているのは先述した「女はピンクにしかなれない」「ピンクはレッドよりも目立ってはいけない」という作中における世間での価値観くらいで、世界観についてやピンクが不遇な扱いを受けている理由の説明が全くなかったので登場人物の言葉に説得力が感じられず、話に入れなかった。
ヒーロー系の作品を描くのなら
・ヒーローはなんのために戦っている存在なのか
・ヒーローと戦っている怪人はどこから現れて何の目的で人々を襲っているのか
などの説明は早めに欲しいところ。



◇この価値観って、なに?

第一として自分が言いたいのは作中で「ピンクはレッドを引き立てなければならない」という価値観が一般的なものとして扱われていることに疑問を感じたということ。

劇中に登場するヒーロー・ゴクレンジャーのデザインを見るにこの漫画はスーパー戦隊シリーズを意識して描かれているのだと思われるが、そもそも戦隊シリーズ第1作の『ゴレンジャー』からしてモモレンジャーは他の戦士と対等の立場として扱われているし、イエローやホワイトなどピンクではない色の女性キャラも存在する。その上『カクレンジャー』や『タイムレンジャー』など、女性がリーダー・まとめ役を担当している作品もある(カクレンジャーの女性キャラはピンクではなくホワイト)。

近年のスーパー戦隊シリーズの一部を見ても
・最初こそサポート役だったが、仲間たちと共に戦いたいという願いから変身能力を手に入れることができた『キュウレンジャー』のラプター283/ワシピンク
・怪力を活かして前線で戦い、終盤ではラスボスの持つ圧倒的な力を見て心が折れそうになった仲間を一喝して立ち上がらせる場面がある強い心の持ち主の『リュウソウジャー』のアスナ/リュウソウピンク
・「自分のハンドルは自分で握る」を信条に、戦隊として戦うことを決意した現在放送中の『ブンブンジャー』の志布戸未来/ブンピンク
など、自分らしく戦う強い人たちがいる。
ピンク以外の色の女性キャラに目を向けても、
・破天荒なキャラだが紛れもないヒーローとしての正義感を持ち、もう一人の主人公とも言える立場にいる『ドンブラザーズ』の鬼頭はるか/オニシスター
・国を治める王として他のメンバーと対等な位置におり、医者として人を救うことに力を尽くしている『キングオージャー』のヒメノ・ラン/カマキリオージャー(※同じくキングオージャーに登場するリタ・カニスカ/パピヨンオージャーは公式では性別不詳)
など、スーパー戦隊シリーズには男性キャラに劣らない存在感を持つ女性キャラが大勢いる。

こうしたキャラがファンの支持を集める中で、「ピンク=女性は目立ってはいけない、サポートに徹するべき」という価値観を世間での一般的なものとして扱っているこの漫画のスーパー戦隊シリーズへの認識はあまりにも浅すぎると感じた。

(どちらかというとスーパー戦隊よりも『僕のヒーローアカデミア』を意識しているような感じがした。ヒーローを育成する学校という舞台やゴクレンジャーのアメコミチックなデザインも若干それっぽい。もっとも『ヒロアカ』も女性のヒーローがメインキャラとしてしっかり活躍しているのだが。)

おそらくこの漫画が描きたいのはヒーローの活躍ではなく

・『ピンク=女性は目立たない存在であるべき』という価値観がまかり通る歪んだ世界

・それを変えるために主人公が奮闘する物語

なのだろうが、既に上記の人物たちのような『男性と対等な女性のヒーロー像』が確立されているスーパー戦隊シリーズを彷彿とさせる雰囲気を出す必要があったのだろうか?と、疑問を抱かざるを得なかった。

以上、自分が言いたいのはこれくらい。

この感想をどんな形で話そうか考えている間に第2話も公開されていた。
まだ全て読むことはできていないがそちらも読んでみたいとは思う。もしかしたら世界観の説明があるかもしれないので。

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