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-我々はもうDAOのある世界にいる。そしてもう、戻れない- NounsDAOFork雑感。

こんにちはカロンです。NounsDAOで色々なことが起こっており、更にそれについて色々な人が色々なことを書いたり言ったりされています。それは本当に素晴らしいことですね!やっぱりNounsDAOって人気があるんだなぁ、、と思います。

そういう感じなので私も書いておこうかなと。そう思って久々にnoteを書いています。よろしければ。長いです。まぁゆっくりと。

そして無料です。よろしければ最下部のところでぜひサポートを!!!超喜びます!!

基本用語

  • Nounder(ナウンダー)=NounsDAOを作った10人。

  • Nouner(ナウンナー)=Nouns Ownerの略。NounsNFTを持っている人。

  • Prop=Proposalの略。提案。こういうのしたいからお金頂戴、とかNounsDAOにこういう機能を足そう、という提案。


そもそもDAOとは?

ここからかなぁと思っているんですよね。もちろんNounsDAOをご存じの方であれば「何を今更」って思われるかもしれません。一方で、NounsDAOからDAOを知った人はそもそも「DAOにも色々あるよ」ということが盲点になってたりするかもしれません。

もちろん「DAOって何?」って方もいらっしゃると思いますので説明しますね。わかってるよ、って方は飛ばしてください。

DAOとは、「スマートコントラクトに基づき、自動的に運営される仕組み」です。

これです。これが大事なんです。DAOという言葉はよく誤解されています。

よくあるDAOの誤解1「みんなで話し合って決める組織でしょ?」

すいません、違います。だって、みんなで決めるだけなら例えば学校の学級会も、みんなで話し合って決めてますよね? だいたい決まらなくて多数決になりがちですけど。。日本の国会だって議長がいて国会議員がいて話し合いで決めてますよね。

ではそれらはDAOでしょうか?違いますよね、それがDAOなら、家族だって一応みんなで話し合って決めているのでDAOってことになってしまう。

改めて、DAOというのは「スマートコントラクトが中心にあって、それがオープンになっている(誰でもその動きが見える)、そしてそれにあるプログラムによって決まっていく」という組織なんです。

そしてDAOの特徴はズルが出来ない、という点にあります。

例えばスマートコントラクトで、「AとBというウォレットがどちらもお金を10送ったら、合計20がCのウォレットに送られる」と書いてあったとします。これは条件が揃ったら絶対に実行されます。(そう書いてあるし誰もそれを改ざん出来ないから)

Aが10しか送ってない、Bが0なのにCに送られることはないし、Cに10しか送られない、ということも無い。途中でDが出てきて少し盗んじゃう、ということもない。ブロックチェーンに書き込まれているので原理的に、インターネットがある限り、誰もメンテナンスしなくても続く、終わらない。基本的にはこういうシンプルな仕組みが中心にある組織がDAOです。

ちなみに言うとこれが今までの社会では難しかったんです。例えば不正会計とか起こるじゃないですか。「お客様から預かったお金を20%手数料で引いて残りの80%をここに送りますよ」と言っているのにそれを運営している人が少し抜いてしまったり、なんてことが頻繁に起こります。それはお金のやり取りを誰か人が担当していて、しかも基本的にはそこは透明でない状態だからです。

一方、少なくともお金の分配については透明性のある、そして必ず実行されるという組織がDAOです。「話し合い」とかはやりたければやればいいけどやりたくなければやらなければいい。NounsDAOだって一応Discordがありますけどどこに参加していないNounerもたくさんいます。話し合いたければ話し合えばいいけど、基本的には投票が出てきたら自分の判断で投票すればいいだけです。

よくあるDAOの誤解2「DAOって、オークションがあって、その売上が貯まってそれをみんなで使う組織でしょ?」

すいません、違います。それは「NounsDAO」であってDAOが全部そういう訳ではないです。オークションシステムがないDAOもたくさんあります。

例えばENS(EthereumNamingService)。これは長いウォレットアドレス(0x….)をわかりやすい文字列(xxx.eth)に変更できるサービスですね。ここもDAOです。どういう仕組みかと誰かが新しいENS(名前)を取るときには登録料がかかる。その登録料が貯められる。その登録料をどのように使うか、は「$ENS」という暗号資産が投票券となって投票で決める。

(ENSの投票画面)

これもDAOです。その他にもたくさんのDAOがあります。どれも「スマートコントラクトが中心にあって、お金のやり取りが透明化されている」ということが共通点です。

オークションがあってその売上が100%トレジャリにいって、それに対して提案して、、ってのはNounsDAOの特徴です。そうじゃないDAOもたくさんあります。

NounsDAOに何が起こったのか?

さて、NounsDAOに何が起こったのでしょうか?時系列で見ていきましょう。

1.2022年11月頃/Noun純資産をオークション額が下回りだす。

まず起こったことは、オークションの落札額が、トレジャリに貯まっている全額をその時のNounsNFTの数で割った額が下回り始めた、ということです。

それまではNounsに期待をしていたり注目が集まったりしていたことが要因で、トレジャリ/NounsNFTの枚数(これを便宜上「1Noun純資産」と呼びましょう)がオークションの販売額よりも下回っていました。

仮にオークション額が100ETH、1Nouns純資産が90ETHだったとしましょう。この場合、100ETH払ってNounsDAOに入った人(Nounsのホルダーになった人)は、そこでNounsDAOが解散してしまうと90ETHしか戻ってこない、ということになります。(まぁその時点で解散することは考えづらいですが)

これだけ考えると損する取引ですが、色々な目論見がありNounsNFTは人気でした。

目論見というのは例えば「仮に100ETH払っても、提案が通れば500ETHとかもらえるかもしれない、得だ」という人もいたでしょうし、「Nounsという面白い仕組みを勉強するためには多少損しても構わない」と思う人もいたかもしれません。「そもそもEthereumが始まった時に1ETHを30円で買ってるんで100ETHなんて自分に取っちゃ3,000円だよ、だから100ETHでも90ETHでも関係ないよ」って人もいたかもしれません。とにかく、そのときにはオークション販売額が1Noun純資産より高かったのです。

これが2022年11月頃に崩れ始めました。

(Nouns落札額月間平均)

例えばNounsNFTの落札額は、開始当初月間平均150ETH(!)でした。2021年12月に50ETHを割り込みますがその後回復し、50以上が続き、2022年9月は約71ETHでしたが、10月約51ETH、11月は約37ETHと下降しています。これはNounsだけの話ではなく、NFT市場が冷え込んだことがとても大きいでしょう。

2.Rage Quiteが提案される。

2023年3月に「Rage Quit」というものが提案されます。

(Prop248)

Rage Quitとは直訳すると「怒ってやめる」ということです。

(余談ですが、オンラインゲームで自分が負けてるとブチッと回線切って逃げちゃう人のことを言うそうです、知らんかった)

NounsDAOに出された提案、この「Rage Quit」は「自ら宣言してNounDAOをやめる。その代わりにその時トレジャリにある金額をNounsNFTで割ったものをもらえる」という機能を足そう、というものでした。これは結果として反対多数で却下されますが、結構大事な出来事なので「こういう提案があった」ということは抑えておいておくといいと思います。

3.提案が却下されることが多くなる。

この頃から、NounsDAOに提出される提案のうち、特に多額の資金を必要とするものが却下されることが多くなりました。これはあくまで想定ですが「NounsのトレジャリをNounersで分配したほうが得する人」が「トレジャリの資金が減ることを嫌がった」ことが要因とも思われています。

つまり、1Nouns純資産以下でNounsを手に入れた人は、その時にトレジャリを全NounsNFTで割ってくれたほうが、もっと言うとその場で解散してくれたほうが儲かるわけです。

例えばNounsNFTが100枚あって、トレジャリに10,000ETHが貯まっているとします。すると、「1NounsNFTあたりの価値は100ETHである」と言えなくもないです。

※個人的には言えないと思うんですけどね。。これって「株価×株式発行枚数=時価総額」、つまり「企業価値とは時価総額だ」という考えに基づいていると思います。企業とか団体の価値ってそういうものかねぇ、、と個人的には思っています。が、まぁ、そういう考えの人がいるのも理解できます。

その中で50ETHでNounsを落札した人がいたとします。。この人はいま即時、NounsDAOが解散する、あるいは「辞める人には頭割り分配られる」というRageQuitの機能がつけば100ETHもらえる可能性があります。すると50ETH得することになります。

これがなにか大きな提案があって5,000ETHが使われてトレジャリが5,000ETHになってしまったとします。そうすると仮にRageQuitの機能がついても自分がもらえるのは50ETHとなり、買ったときと同じ額になってしまいます。更にまた提案が通って2,000ETHが使われた。トレジャリは3,000ETHなので1NFTあたり30ETH、、そうなると赤字になってしまう。

つまり、「トレジャリのイーサを減らしたくない人たち」は提案にNoを投票し続ける、ということが起こります。

そうなると元々「トレジャリにある資金を使って面白いことやろうよ!多少、トレジャリの額が減っても面白ければいいじゃない」という人たちとしてはつまらなくなってしまいます。

こちらの「提案が拒否されることが多くなった」というのは「トレジャリが減るのを嫌がった人が増えたから」とも思われていますが、NounsDAOが巨大化したことも要因、と考える人もいます。

つまり、巨大化したので提案がたくさん出る。本当であればその一つ一つをちゃんと吟味しなければいけないんだけど、別に自分がお金もらえる提案ばかりというわけではないし、皆、忙しい。なので提案を吟味している時間がない。じゃあとりあえずよくわからないからNO、となった人もいるのでは?という想定もされています。

4.NounsDAOのV3アップグレードが提案される。

2023年8月にNounsDAOのV3アップグレードが提案されます。

Prop354

これはNounsDAOに様々な機能が追加される、というものでした。ここで注目すべきは「Fork」の機能が追加されているということです。ここは大事です!このNounsDAO V3、様々な機能が追加されていますが一番大事なのはこのForkといっていいと思います。

Forkとは食器のフォークの先が分かれていることから「分岐」を意味します。今のNounsDAOとは「別のDAO」(大事!コレ大事!後で説明します)に、分かれたければ分かれようという提案ができる機能、を追加したい、ということも含めたV3へのアップグレードの提案でした。

これが賛成多数により可決。しかしここでNounsDAO史上初のことが起こります。

5.NoundersがVETOを行使。

ここでなんとNounders(NounsDAOを立ち上げた10人)がVETOを行使します!!!これは結構すごいことでした。


※VETOとは?(大事!)

VETOとは「拒否権」のことです。これは共和政ローマ時代に護民官という役職の人が持っていた権利に由来しており、文字通り「どんな提案も拒否できる権利」です。これはかなり強い権利です。なぜなら、どれだけ話し合ったり、多数決で選挙したとしてもこの拒否権を持っている人が拒否してしまえば終わってしまう、ということになるからです。(帝政ローマ時代にはこれは皇帝のみに許された権利でしたし、いまの国連では常任理事国である5カ国のみが保有しています。)

NounsDAOでもNoundersの強い権利としてVETOが設定されています。

私見ですが組織を作る時にアクセルだけではなく、こういういわばブレーキを設定している、というのがすごいな!と思いますね。こういうのはなかなかできる人はいない。NounsDAOのVETOはあくまで「NounsDAOの根幹を揺るがしかねない提案が可決されたときのみに使う」という注意書き付きで設定されていました。これが史上始めて行使された、ということになります。

つまりこの提案(NounDAO V3へのアップグレード)をNoundersは「NounsDAOの根幹を揺るがしかねない提案」と考えていたことがわかります。


6.NounsDAOのV3アップグレードが再提案される。

VETOにより拒否されたのもつかの間、もう一度同じ提案が再提案されます

Prop356

ちなみに今回はタイトルに「Will Not Cancel」、キャンセルしないでね、と付記されています。

これが8月25日に賛成201対54で可決。Fork(分裂)機能を含めたNounsDAO V3は実装されることになります。


※なぜ、NoundersはVETOを再度行使しなかったのか?

ここで疑問になるのは、一度は拒否したNoundersがこちらを再度拒否しなかったのか、という点です。

最初のV3は史上初のVETOを使ってまで拒否したのに、まったく同じ2度目の提案は拒否していない。なぜなのでしょうか?これは本当に想像するしかありませんが、2点考えられるかもしれません。

  1. 二度も同じ提案が可決されたのであればこれはDAOの総意だろうと思って受け入れた。

  2. あまりにVETOを使用しすぎると「Noundersの力が強すぎる」と批判が高まると思い控えた。

もちろん、真相はNundersしかわかりませんが、どうなんでしょうかね??ほんと聞いてみたいものです。


7.Forkの提案→賛同→実施

そして9月8日にForkが提案されます。このForkは下記のような条件です。

・全体の20%が賛成すれば、Fork投票期間に移行する。
・Fork投票期間にForkに同意した人は新たなDAO(ここ大事!後で説明します。)に行く。
・Forkに同意しない人はNounDAOに残る。
・ForkedDAOに行った人のNounsNFTは没収。そしてそのNounsはNounsDAOへの投票権利を失う。


※分岐先である「新たなDAO」について

分岐先である新たなDAO、仮にそれを、フォークされたDAO、ForkedDAO、F-DAOと呼びます。(あくまで私の仮称です) これについて説明しておきます。

例えばFork期間の時には、こういう意見も聞かれました。

「いまのNounsDAOに不満がある人が集まってより良い、新たなDAOを作るんだ」

残念ながら私はこの意見には懐疑的でした。なぜなら、F-DAOには、オークションシステムも、提案システムもまだ何もない状態だったからです。確定していたルールは「Forkに参加した人はその時のトレジャリの頭割り分の資金を貰って抜けられるよ(つまりRage Quitできる)」ということだけでした。ちなみにそのルールがスマートコントラクトによって確定しているのでこれだけでも「DAOである」とは言えます。

もちろん、もしかしたらそちらに行った人たちが話し合って「じゃあこっちでこういうのやろう」という話が始まるかもしれません。でも、それはどこで? まだその段階でDiscordも無いんですよ。更に誰がリーダーシップを取るんでしょうか? 基本的にはF-DAOにいった人たちは「Nounsを持っている」ということは証明できますが、本当の実名もどういう人かもわからない。(人によってはツイッターアカウントとかと連携させていますが、それでも基本的に仮名)

まずはリーダーを決めるために投票が必要かもしれません。でもそのための投票システムは誰が作りますか? じゃあそれを選ぶために立候補と選挙をしましょうか?で、その投票システムは誰が作りますか??

これはほんと「投票をするための投票をし続ける」みたいなことが発生してしまいます。

これはあくまで私の個人的な意見ですが、おそらくForkを先導していた人たちは別に「Nounsの仕組みに問題があるから自分たちでもっといいものを作ろう、そのためにNounsDAOの資金を我々で受け取ろう」とは考えなかったと思います。単に「今のうちにトレジャリの資金を受け取って手仕舞いしよう」と思っていた人が大半なのではないでしょうか? あるいはそもそもこれが目的でオークションで落札した人もいたはずです。

「今はトレジャリを頭割りした金額より、オークション代金のほうが安い。なら、とりあえず安値でNounsを手に入れてForkさせれば儲かる」と。これはいわば「利ざやを稼ぐ人」ということでアービトラージ派と呼びましょう。(人によっては今回のことはこの派によって先導され、この派がメインで起こした、という見方をしている人もいます。)

そして「利ざや稼ぐために入ったわけじゃないし何なら今だとちょっと損するけど、まぁこのさきどうなるかわからないから今のうちにForkしておこう」というのが穏健的撤退派。

あるいは、「NounsDAOの仕組みは素晴らしいしもっと楽しみたいけど、やっぱりちゃんとやるとなると色々大変なんだよな…提案とかもちゃんと読み込まないといけないし。。そこまでは出来ないから一旦ここで抜けとくか」という人も多かったはずです。好きだけど消極的撤退派。

おそらく、Forkに賛同した派閥はこの3派だったはずです。この3派がまとまって「よし、じゃあNounsDAOよりもっといいもの作ろう!」となると思いますか? ならないと思うんですよね。。

ですから私は「F-DAOにいった人は殆どがRage Quitするだろうなぁ」と思っていました。更に、NounsDAOをもっと良くしたい、という人ならF-DAOに行かないだろうなとも思っていました。結果的にはそのとおりになっているように感じます。

こちらについては著名なNouner(Rage Quitに参加したので元、となりますが)の一人である中島聡さんも先日のスペースや自身のメルマガなどで主旨としては下記のようなことをおっしゃられています。

仮に新しいDAOが出来たとしてもそこにいる人はどういう人達かわからない。
・場合によっては、たくさん人がいるように見えて実は裏ではごく少数の人が繋がっているかもしれない。
・そうなるとどういう運営がされるか全くわからない。
・一部の人が結託して他の人には非常に不利な運営がされるかもしれない。
・だから自分はNounsDAOに残るか、ForkしたらすぐにRage Quitするかの二択だった。

※中島さんのメルマガの内容は一部、こちらのnoteで読むことが出来ます。
NounsDAO の終わりの始まり

ちなみに、中島さんは、「Rage Quitも本当にお金が戻ってくるかどうかしっかりコントラクトを読み込んだ」、とおっしゃってました。さすがですね。ついつい「こっちに行ってRage Quitしたらお金戻ってくるんだー」と信頼してやっちゃいそうですけどね。まさに「Don't trusty, Verify.(信用するな、検証せよ)」ですね。

それから中島さんは派閥でいうと「NounsDAOはよく出来ているけど、なかなか本気でコミットしている時間も無いし…」という理由でのFork賛同とおっしゃってました。


さて、Forkの本題に戻ると、Forkの提案が出され、翌9月9日にはForkに20%の票が集まります。Fork投票期間がスタートします。つまり、Forkはします、あなたは行く?残る?の投票がスタートした、ということです。

そして9月16日にFork投票期間終了、この時にあった全846Nounsのうち、約55%にあたる472NounsがForkに賛同、つまりNounsDAOを抜ける、ということになりました。

これがとりあえず、「起こったこと」です。

現在:Fork後の世界

そして、今に至ります。今はどうなっているんでしょうか?いくつかのトピックで見ていきます。

トピック1:ForkされたNouns

まず、ForkedDAOにいった472のうち、現時点で285がRage Quitを行い、資金を引き出しています。つまり、完全にNounsDAOから離れた、といえます。Rage QuitにしたNounsはここに入っています。

Rage Quit済(OpenSea)

今回のForkでは、Rage Quitすると約35ETHが戻ってくる、ということになります。

これはバーン(償却)扱いになるので投票も出来ないNounsです。

更に、Escrawという、預託状態なのが187です。それはここにあります。

Forked, Not Rage Quit(OpenSea)

これはつまりF-DAOに所属している状態、と言ってもいいでしょう。ただこのF-DAOにおいてなにか建設的なこと、例えば新しくオークションシステムを作ろう、とかそういうことが進んでいるとは少なくとも私は知りません。この人たちはこれからRage Quitすることで35ETHを得るか、ここにとどまるか、の二択です。もちろんNounsDAOに戻ることは出来ません。

ちなみにForkに参加すると「Nouns Fork 0」コレクションのNounsをオリジナルのNounsと引き換えにもらえます。

トピック2:Noundersの「投票力」の話

実は見過ごしてはいけないのは、「結果としてNoundersの力が大きくなった」という点です。NoundersにはNounsDAO開始から5年間、彼らへの報酬として、毎日生成されるNounsのうち10%(毎0番台)が自動的に送られています。Noun0、Noun10、Noun20、、、Noun100というふうに。現在、NoundersはNounsを40枚持ってます。(Fork後に獲得したものも含む)

Fork前は39枚でしたから、全部で846枚のNounsのうちの39枚、つまり約4.6%の票しか持っていなかった、ということになります。(10%、約80枚持ってるはずだけど上げたりしていたから39枚)

nounders.eth(OpenSea)

それが今では全有効投票数386のうちの40ということで約10%の投票力を持っているということになります。これをNoundersが想定していたかどうかは謎ですが(聞いてみたいものですよ、ほんと)、とにかく「Noundersの力が上がった」とは言えそうです。

NounsDAOの投票には有効最低投票数ともいえる「しきい値」というものがあります。仮に賛成が100%でも全体の10%が投票に参加していなければいけないというものです。

これがFork前は84票でした。その時点で39枚しか持っていなかったNoundersは仮に39票を賛成に投じても、他に誰も投票しなければ(ちょっと考えづらいですが)、その提案は可決されない、という状態でした。

それが今では、しきい値が38になりましたから、Noundersが賛成に投票して、他に誰も投票しなければ可決できる、ということになります。

元々持っていたどんな提案でも拒否できるVETOに加えて、状況によっては自分たちだけで可決出来る、という意味でとても力が強くなったとは言えそうです。あくまで原理的に、であってNoundersが自分たちだけで可決したり拒否したりはしないと思いますが。

トピック3:落札額はどう変化したか?

元々、今回の契機としては「1Nounsあたりのトレジャリ額」を「オークション落札価格が下回ったこと、でした。これは現在どうなっているのでしょうか?

現在トレジャリには約13,570ETHが貯まっています。そして票として有効なNounsは386枚です。つまり1Nounsあたりの純資産(とでも言えるのは)、35ETHということになります。

直近の落札額は、特に大きく値を下げたNoun853の16.35Ξ(これは歴代最安値です)以降、19.64ETH、19ETH、20.46ETH、22ETHと続いています。

史上最安値となったNoun85

仮に今、またForkが行われると、例えば20ETHで落札している人はRage Quitで10ETH儲かるということになります。Forkを始めるには20%の賛成があればいいので約77票ということになります。決して大変なことではないので、「またForkが起こるのでは?」という声もあります。

仮に77票がFrokに賛成してまたFork投票スタート、そこでその77票が抜けると、77×35ETH=2,695ETHがトレジャリから抜けることになります。NounsDAOに残るのは10,875ETHとNounsNFT309枚。これで1Nounsあたり純資産はまだ35ETHなので。。と、1Nouns純資産とオークション価格が釣り合うまでForkが続く、ということも起こり得るかもしれません。そんなことやってると「NounsDAOちょっとなぁ」と思う人が増えて入札がされない、そしてオークション価格が下る。。

うーむ、どうなることやら、とは思いますね。。。

まとめ:「DAOは人類には早かったの」か?

はい、というわけで色々と経緯含め見てきました。

今回のNounsDAOの件で、ツイッターなどでよく見られた言葉が「DAOは人類にはまだ早かったのか?」といった文言です。

これについては私はその問いの立て方にあまり同意できないな、と思っています。

というのは今までの経緯で見たてきた通り、非常にすべてDAO的に、みんなの投票によって決まってきた結果だからです。どれをとっても誰かがルールを無視して、例えばスマートコントラクトをぶっ壊して進めたことはひとつもありません。

逆にいうと、もしNounsDAOが不完全な、DAOではない組織だったらこのようなこと、例えばForkは起こってなかったかもしれません。どこかの途中で提案を覆して「やっぱりV3やめよう!」とかForkの途中で「やっぱりこれ無し!」とか言っていたら結果は変わっていたかもしれません。しかしそれだとやっぱり「なんだよ、DAOじゃないじゃん」となってNouns"DAO"ではなくなってしまったかもしれません。

NounsDAOは「もっともDAOらしいDAO」と言われます。私は今回の経緯を見ていても「本当にDAOらしいなぁ」と思います。

一方でじゃあ何が問題だったのか、というとこれらが挙げられると思っています。

・あまりにも、初期のNounsの落札価格が高かった、結果としてトレジャリに多額の資金が貯まり、それを狙う人も現れた。

最初のNounsオークションの落札額は613ETHです。そして最初の月、2021年8月の月間平均落札額は151ETHです。NounsDAOは誕生した最初の月だけでトレジャリに約3,485ETHを持つ巨大DAOになったことになります。素晴らしいことではあるのですが流石にこれは、巨大で高価すぎたと思います。結果論ですが。

もちろん、落札額が高いから注目が集まり、トレジャリが集まるから落札額も高くなるので難しいところです。

そうなると、世の中では、特にWeb3/NFTの世界では「儲かる可能性があるならなんとしてもそれを実現しようとする」人は現れるものです。今回のForkの提案をした人の動機が「儲けるため」だったかどうかはなんの証拠も無いから断言できません。ただまぁその可能性はまったく否定できません、その可能性は高いだろうと私も思っています。儲けるために、誰もが「そりゃできるだろうけど現実的には難しいんじゃない?」というForkを成立させてしまったというのは皮肉だなぁと思います。

・Nounsの目指す理念は素晴らしいものの曖昧ではあった。

Nounsのビジョン・目的は「Nounsの仕組み、キャラクターはすべて無償で提供する、その結果としてNounsブランドの周知を実現する」というものでした。これは素晴らしいものだと思っています。だからこそいろんな人が、Nounsを持っていなくても、Nounsで遊べる、だからみんなNounsを好きになる。しかしこのビジョンには「それはビジョンに沿ってない」という強制力はあまり無い。(と、私は感じます)だからForkしてRage Quitとなった時に「待て、それは本来自分たちがやりたかったことなのか?」と一歩押し止める力がなかったのではないかなぁと感じました。

大きくこの2点が解決されればまた違った結果になっていたかもしれないな、と思っています。

最後に:いや、我々はもうDAOのある世界にいる。そして戻れない。

今回の件を見て私は「おお、もう我々は完全にDAOのある世界にいるんだな」と実感しました。もし今回の件で、NounsDAOの中央にあるスマートコントラクトがぶっ壊れて、NFTの金銭的価値もゼロに、トレジャリの中身が誰か分からないクラッカーが全部持ってった!なんてことが起こったら「うーん、早すぎたのかなぁ」とも思いますが、そうではありません。

NounsDAOの仕組みは今日も動いていて、1枚のNounsNFTは下がったとはいえ約500万円で落札されている。そしてトレジャリにはまだ30億円分のイーサが貯まっている。このトレジャリを使ってまだまだ何かは出来る。それは素晴らしいことだと思います。

そして何より、我々はNounsDAOで出来る楽しいことを知ってしまっている。それはもう戻れないと思います。

ということで、まだまだ注目ですNounsDAO。

おまけ:Forkが起こりづらいNounsDAOタイプのDAOの事例

ところで。今回、トレジャリにある純資産を狙って、Forkが起こったことになります。しかし例えば私の大好きなGnarsDAOなんかはForkの話なんか私の知る限り出てません。

GnarsDAO

おまけとして、これは何故か?を書いておきます。

1.理念が明確である。

NounsDAOの今回の経緯で「Nounsの目指す理念は素晴らしいものの曖昧」と書きました。一方でGnarsDAOの目指すビジョンは明確です。それは「子どもたちが彼らのヒーローからエナジードリンクを売りつけられなくて良い世界を作る」です。彼らのヒーローとはたとえば憧れのスケーターなどです。そういうエクストリームスポーツは往々にして活動資金が足りない。だからスポンサーを募る。スポンサーは彼らのファンである子どもたちに何かを売って、スポンサー代を回収したい。だからスポーツ選手は彼らのファンである子どもたちに「これいいよ」と勧める、という構造です。

GnarsDAOはこれをやめよう、と言っているわけです。具体的にはオークションシステムで貯まった資金をアスリート支援に使っています。

こういう理念があるから、理念に沿わないことが仮に出てきた時に「それはアスリート支援につながるのか?」と立ち止まれるきっかけになるのではないかと思っています。

この点はNinjaDAOのCryptoNinjaNounsも近いなと思います。あのDAOで「あそこでトレジャリとオークションに価格差で儲けてやろう」という人ってあまり出ないような気がします。だからCNNでは多分おそらくではあるんですが「Forkしよう」という話は出ないのではないかと思います。ああ、そうそう、そもそもイケハヤ氏が「うちはFork禁止」と宣言してましたしね。

2.トレジャリにそんなにお金が無い。

Gnarsはトレジャリの資金をアスリートのスポンサードにどんどん使っているのでトレジャリにお金があんまりない(笑)

現時点でGnarsのトレジャリにあるのは約14Ξ(約300万円)です。発行済みNFTが4775枚ですから1NFTあたりのトレジャリ資産は約0.003Ξ(約700円)ということになります。今の落札額は大体0.013Ξ。

だから誰もForkとか言い出さない。そして「儲けよう」という人にあまり目をつけられない。

こういう感じでNounsDAOから派生したSub-DAOの中でも色々なものが色々な方向にすすんでくんだろうなあと思います。

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