許さないこと

許されたつもりで生きるきみの背には自分で自分の爪痕を残して

先に言っておきますが、今回は10割大嘘なので、これはちょっとした1000字未満のショートストーリーです。ふぃくしょーん。
特にこの手のテーマに意見が欲しいわけでも、同意が欲しいわけでもないです。
大昔に書いたショートストーリーを改変したものです。多分そのうち消します。

忘れることは許すことと言ったのは誰だったろうか。
わたしの目の前には、小学生の時に意地悪をしてきた女の子がそのまんま大きくなった感じで立っていた。
牛乳プリンを精算しつつ、昔してしまった意地悪に関して謝りたいと言ってきた。
忘れて生きてきたはずだった。忘れて生きてきたはずだった。
今更になってなぜと問えば、「そのあと自分がいじめにあって、高校を中退した。あの時ひどいことをした、償いたい」と言ってきた。
コンビニの、レジを隔てたその向こうその子はなにを見ていただろう。

実家の本屋を継いだ時、昔意地悪してきた男の子が自分の子供を連れてやってきた。
やんちゃをしてきた彼は「数年前に事故でしばらく働けなかった。その時にあんたのことが頭に過ぎった。昔したことを謝りたい」と。
忘れて生きてきたはずだった。忘れて生きてきたはずだった。
本の角を手折る勇気があるはずのあなたは何を見ているのだろう。

一体、なにに謝りたいのか。一体、何に許されたいのだろうか。
自分の不幸をわたしの所為にしないでほしい。
わたしは忘れて、許して生きてきた。
それ以降の人生の中でのあなたの不幸に、わたしは加担していない。
謝って気持ちがいいのはあなただけだ。
たった一言で気持ちよくなるならば「いいよ」くらいは笑っていくらでも言う。
わたしの人生にもう登場しないでほしい。
そうして私は彼らを忘れて許して、忘れたふりして許さないで生きていく。
(自分の傷は自分で処理しろ)
(わたしだって許されたふりして許されていないんだから)