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不思議な話 ❶
白蛇の恩返し? 何だそれって思うよね
だからなんだという話なのでサラッと見過ごしてくれたらいい
私が勝手にそう思っているという話なので
まだ子供達が幼稚園くらいの頃、夜中から大きめの台風が来ると、テレビで何度となく注意喚起がされていた
珍しく私の住む地域に最接近するとかで、確かに自宅前の木々も激しく揺れ、唸って聞こえていた中、トイレに入っている息子が私を呼ぶ声がして
紙でも切れたの?
なんて呑気に声を掛けてドアを開けると、息子は何故か頭近くの壁の方を指差している
何?
そう言いながら指差す方を見上げると、換気扇が動いていない
換気扇回そうとしたのに動かないから見たらいたの
慌ててそう言う息子
いつも換気扇を回してしなさいって怒られてるから、今動いてない言い訳でもしているの
かと思ったのだが、白い塊が見える
ん? これは?
白い小さな塊が微かに動いて見えた
え...?
そう、そこにはまだ小さなひょろっとした子供の白蛇が、戸愚呂を巻いてペロペロと細くて赤い舌を出してこちらを向いて鎮座していたのだ
嘘でしょ! 何でこんなとこに?!
しかも白蛇?
素っ頓狂な私の声に、子供達が集まって来た
ひょっとしてこの子蛇は、これから来るかもしれない嵐から避難して来たのかもしれなかった
だが、いくら小さいとはいえ蛇は蛇だし、かと言ってこちら側には網目が邪魔しているから出ては来れないだろうが、自力で来た道を出ていく風でもないし、どうしたものかと考えてはみたものの、ここで一晩もおかしいと子供達とも話し合い、やはり出て行っていただくことに
素手ではやはりちょっと怖くてゴム手袋を装着し、そっと網を外したのだが、子蛇は逃げるでもなく、頭をもたげる事もなく、ただ成り行きを見守るように、ただ鎮座したまま大人しくしていたので助かった
そうしてそろりとその子を掴むと小窓を開けて
無事にお家へ帰ってね
そう呟きながら解き放つ
その子は外の風に乗るように、まるで飛ぶようにして地面へひらりと降りて行った
龍が飛んでるみたい
それがその時の私の感想
ホントに怖くもなく噛む素振りも一切なくて大人しかったし、手から放たれるその時、尾の部分がそろりと手袋越しにクルッと撫でて行ったのが何故か可愛く思えた
その子はその後、何故か再び換気扇に来訪するのだが、そんなにここがいいのならと、朝までそこにいていただいたのですが、嵐の去った翌日の早朝、鎮座したままだったその子は再びゴム手袋の手を一撫でしてまたしても朝の爽やかな風に乗ってひらりと地面に着地して寝床へと帰って行ったのでした
あの一撫ではありがとう?
なんて勝手に思ったのでした
わざわざ2階のトイレの小さな換気扇を選びしかも2度も壁を登って来たのかと、その姿を想像すると少し笑えた
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