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大阪都構想、再び否決──11月2日の在阪朝刊

※2020年11月2日にCharlieInTheFogで公開した記事(元リンク)を転載したものです。


 大阪市を廃止して4特別区に再編する大阪都構想の住民投票が11月1日、投開票され、約1万7千票差という僅差で2015年に続いて再び反対多数となりました。住民投票の結果を伝えるため、各在阪一般紙は2日付朝刊で臨時の版を製作しました。


都構想2度目の否決を報じる各紙

朝日新聞

 朝日新聞は「14版△◎」で確定結果を掲載。「◎」は取り直し(一度作った版を破棄して、新たに作り直した版)を意味する記号で、通常の最終版「14版△」に修正を加えたことがわかります。地域面題字は「大阪」に統一されました。

 地域面は「14版△」で区別の得票は、開票作業が難航した東住吉区が開票率70%、賛否2万4000票ずつとなっています。一方、3面では同じ「14版△」でも区ごとの賛否分布で東住吉区を「反対多数」の色で示しており、同じ「14版△」の編集作業時間の間にも開票の進捗があったことがうかがえます。なお地域面の区ごとの開票は、東住吉区以外は確定結果を掲載し、全体の開票率は98%でした。

毎日新聞

 毎日新聞は2個版を入手。「14版☆」は選管最終発表の数字、「14●版」は開票率98%でした。地域面は題字を統一せず、入手したもののうち前者は「市内」、後者は「堺・泉州」です。最終結果が出た「市内」面には区ごとの開票結果を掲載していますが、開票中に締め切りを迎えたとみられる「堺・泉州」面では一覧表自体が載りませんでした。

 大阪の毎日新聞の通常時最終版は「14版」。昨秋の版建て再編で最終版の締め切り時間が繰り上がり、深夜に大きなニュースが入った時や、選挙報道などで臨時の最終版「14版☆」がお目見えするようになっています。

 毎日新聞は版建て記号の種類が他に比べて多く、そのせいでどのように使い分けているのかはっきりしない場合があります。「14版☆」のほうでは2社面が「14版☆◇」となっており、「14●版」の1社面は「14版○○」となっています。「◇」は取り直し記号と推定されていますが、「○」「●」は追っ掛け版とみられることは分かっていても使い分けがよくわかりません。

読売新聞

 読売新聞は「14版」と「13S●」を入手。どちらも地域面題字は「大阪」に統一されていますが、前者では版数記号の「●」が付き、紙面も差し替わっています。

 他紙と異なり、1面で両版とも確定結果を掲載できているのが特徴です。3社面でも区ごとの確定得票を掲載。ところが、地域面は前者が確定結果、後者が開票率98%で生野区と東住吉区が開票途中(いずれも賛否24000票ずつ)の値です。1面の確定結果も、「14版」ではカラーグラフィックスになっています。

産経新聞

 さて、厄介なのが産経新聞です。同じ「14版☆」が2パターンあるのです。同じ版数表記なのに異なる版とは摩訶不思議であります。ここでは便宜的に「14版☆早」「14版☆遅」と呼ぶことにします。

産経新聞大阪本社版朝刊。どちらも「14版☆」だが……

 「14版☆早」は1面の区ごとの開票結果を示す地図で、東住吉区と生野区が未定を示す灰色で塗られています。脇には「午前0時現在」の文字。票数グラフでも開票率は97.83%。2面も「14版☆」となっており、区ごとの票数一覧は午後11時時点の値で、淀川、北、城東、住之江、生野、東住吉の各区で未了の数字になっています。

 一方「14版☆遅」は1面で地図もグラフも確定結果を示しています。2面はやはり「14版☆」ですが、区ごとの票数一覧は午前0時時点に更新され、未了は東住吉区のみとなっています。

 版が異なるのに、版数表示で区別しないとなると、もはやなんのための版数表示なのかと思えます。過去にも同じ版数表記で異なる版という例はあったようですが、このときは単なるミスなのかなと思っていました。しかし1面のみならず2面でも、となると、意図的なのかなという感じがします。

 なお地域面題字は「14版☆早」が「堺・泉州」のもの、「14版☆遅」が「市内」のものです。印刷記号は早い方が「美1操◇」、遅い方が「美1操◆」でした。

日本経済新聞

 日経大阪本社は、通常、広告部分を除いて全国共通の内容になっている1面と第2社会面を独自に差し替えました(1社面は通常時も独自差し替えで今回も同様)。

 1面の開票結果の値は「阪14版」は開票終了後の数字、「阪13版」は午後10時30分現在で開票率77.09%となっています。

「阪」の付く版数表示はレア

 昨夏の参院選でも日経大阪は1面を独自に製作していますが、このときは版数表示に「阪」の字を付けていませんでした。

大阪日日新聞

 反対多数確実が報じられた直後の大阪維新の会の記者会見で、まさかの幹事社を務めた大阪日日新聞。鳥取の新日本海新聞社で印刷して大阪までわざわざトラック輸送してくるため、大阪の新聞としては異常に締め切り時間が早いことで知られています。このため、反対多数確実の結果が間に合うかどうか心配する新聞マニアの声もタイムラインでは見受けられましたが、今回は間に合いました。

 1面の開票状況は22時30分時点、開票率77%の値を掲載。1面の本記と解説記事は否決を受けた内容となっていますが、他の面の記事は結果を前提としない内容で埋まりました。告示後に展開された各党の主張のまとめや、大都市制度をめぐる議論の経緯など、いかにも「早版用原稿」という記事が並びました。

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