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1:89 〜オフザボールとDS LIGHT〜

さて、昨日DS LIGHTの新作が公開されたので、コンセプトに至った思考や今回のモデルにかけた想いを書いていこうと思います。Twitterにまとめても良かったのですが、より多くの人に私の想いが伝わればいいなと思い、文字数を気にしなくていいnoteにまとめてみたいと思います。

まず、コンセプトですが、Twitterでも公開されているように

"走りきるは勝ちきるだ。”

です。

今回のキャッチコピーの根底にあるキーワードは

”オフザボール”

です。

スポーツ科学者のCarling, C. によると、試合時間が90分のサッカー1試合で1人の選手がボールに触れる時間は約1分だそうです。つまり残りの89分はボールに触っていない(オフザボール)時間ということになります。私はDS LIGHTの企画がスタートする段階で改めてこの事実に着目しました。というのも、スパイクを開発して世の中に提供するのはあくまで手段だからです。究極の目的は、DS LIGHTを着用してくれるサッカー選手(DS LIGHTは日本の中学生・高校生がメインになると想定)のチームが勝利することです。DS LIGHTを履けば自分のチームの勝利に貢献できる、そんな風に選手に感じて欲しかったのです。一人の会社員としてというよりはサッカーを愛する一人の人間として、この想いは譲れませんでした。

次に着目したのが、日本の中学・高校サッカーの得点状況でした。なぜなら、仮にボールに触れない時間が試合の99%であったとしても、勝つためには得点が必要だからです。その中で私が着目したのが、全国高校総体と全国高校サッカー選手権大会の得点とその得点時間でした。そして過去3年分の大会全ての試合(1回戦から決勝まで)の得点とその得点時間を調べたころ、大変興味深い結果が得られました。

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上の表は2015年の高校総体の得点と得点時間です。表からも分かるように、試合終盤の4分間(後半31分から後半35分)での得点数は大会全得点数(143点)の20.28%もあります。他の時間帯に比べて圧倒的に試合終盤で得点が決まることが分かりました。さらに、試合のラスト10分で決めた得点のうちそれが決勝点になった試合は、全試合(54試合)のうちなんと5試合(9.26%)もありました。高校総体2017に至っては、全試合のうち16試合(29.63%)の試合で決勝点が残り10分で決まっていました。これは、言い換えると少なくとも4試合に1試合は決勝ゴールが試合のラスト10分で決まっていたということです。

この試合終盤で得点が動く傾向は、夏に行われる高校総体の方が冬に行われる高校サッカー選手権よりも顕著でした。夏は気温が高く炎天下の中で試合を行う可能性が高いため、高校生の体力消耗が激しくなり試合終盤に集中力が途切れたり足がつるなど動きに支障が出るのが大きな理由ではないかと考えられます。

以上のことを踏まえて、一試合を通してオフザボールのクオリティを維持することが勝利の鍵となるという考えに至りました。

実際、近年の海外リーグでは、リバプールなどが得意とするストーミングやマンチェスターシティに代表されるポジショナルプレーが世間でも注目を集めていますが、これらもチームとしての原則(オフザボールの動き)が大変重要だと理解しています。したがって、このオフザボールの質を高めて維持することはどのレベルの選手であっても必要な要素だと感じています。また、今年J1を優勝した横浜Fマリノスも、チームとしての動きの原則を徹底しているような印象を受けました。日本でも今後オフザボールの重要性がより認知されるのではないかと予想しています。

では、実際そのオフザボールの質を維持するためにスパイクにできることは何でしょうか。私の中では、”選手の動きを妨げない”、”試合を通して体力消耗を抑えてあげること”という結論に至りました。

選手の動きを妨げないというのは、スパイクの動きと足の動きが1:1になるようにしてあげることです。素足感覚という言葉にも置き換えれると思います。アッパーをよりシームレスにするであるとか、ソールのリブを入れない部分を設けて足の屈曲を妨げないようにするといった方法が考えられます。

一方の試合を通して体力消耗を抑えてあげるについてですが、そもそも皆さんの中で以下のような経験や気持ちになったことはありませんか?

オーバーラップしてきた選手のついていかなければいけない時に疲れていてついついどうしてもついていけない。

体力が残っていたらそのパスに追いついたのに。

試合終盤に足がつって早くこのまま試合が終わらないかなー。

本来体力消耗がなければ上のようなケースが防げて相手よりも優位に立てそうじゃないですか。相手選手よりも一歩先にボールに触れれたら大チャンスになると思いませんか。

私も高校まではずっと部活でサッカーをしていたのでよく分かりますが、試合終盤でセカンドボールを相手に尽く拾われてペース握られたら本当にしんどいですよね。でも、逆に相手よりも先にボールに触れたり走りで負けなかったらチャンスですよね。

試合終盤でもオフザボールで相手に負けないように選手をサポートしたい、それが今回のDS LIGHTの根底にあります。選手が試合終盤でも走りきれるように。試合終盤の失点を防げるように。逆に試合終盤で決勝点がとれるように。そして、最後にチームが勝利できるように。今回はそういう想いをDS LIGHTに込めました。

商品の機能性の面から言うと、踵のFuze GELはそれをサポートするものです。プロのマラソン選手のような例外は別として、基本的に人間の足は踵から着地します。踵から着地するということは踵に自分の体重負荷がかかります。これを緩和してあげれば足の筋肉負荷も減るはずです。

もっと厳密に言うと、踵の外側から着地します。なので、今回のDS LIGHTの踵のスタッド外側はリブで繋げていません。リブがないことでより着地地点となる踵の外側のクッション性が高まるからです。

DS LIGHTの機能性やスペックについては、koheiさんや0014さんがうまくまとめているので、是非みてもらえればと思います。

というわけで、DS LIGHTは日本の部活生のことをめちゃくちゃ真剣に考えて開発したスパイクです。開発段階でも、部活生からのリアルな声や感想を聞きに行きました。もし、店頭でDS LIGHTを見かけたり着用する機会がありましたら、そんな熱い想いを持ってスパイクを考えた人がいたんだなって思い出してもらえるとすごく嬉しいです。

それでは、また。




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