演劇作品で映像作品で……でも、映画ではなくて
なんとか2日目も更新できた。
とりあえず3日は継続しよう。そうしないと三日坊主も名乗れない。
話題は昨日に引き続いて「WAR in the BOX」について。
本日は「どうして配信にしたのか?」という事を話してみようと思う。
劇団Conflux Ⅹ周年記念公演
WAR in the BOX
「どうして?」と聞かれたら「流れで」という回答になってしまう。
というのも、以前から私は「演劇の配信」に懐疑的な所があったし、実際、今でもまだそのような感情を完全に拭い去る事ができたわけではない。
舞台があり、観客がいて、役者がいて
様々な「特別」な「非日常」の詰め合わせが「演劇」だと思っている。困ったことに。
多分、ちょっと古い考え方なのは理解している。
理解しているのだが、私が演劇に求めるのは「非日常感」なので仕方がない。性分なのだろう。
だから正直な話「配信公演」に流れが傾いた時に最後まで抵抗していた。
配信公演に話が流れるのは仕方がない。
いや、むしろ妥当な判断だった。
妥当な判断だと理解をしながら、一方で納得できていない自分がいた事も事実だ。
なんと不便な生き物だ。
しかし、結果的には大成功だと思った。
今では掌を返して「配信公演にしてよかった!」とあちらこちらで吹聴している。
あの時の硬派な私はどこに消えた!?
じゃあ、具体的に何が良かったのか?
抽象的な表現をすると「足し算ではなく掛け算」だった事だ。
何故、抽象的に表現したのかわからないけど。
具体的に言えば「演劇×映像」のいいとこ取りだった。
ひとつ目は完全にカメラ台数でボコボコに殴られたこと。
当初は
・全体を映すカメラ1台
・上手を狙うカメラ1台
・下手を狙うカメラ1台
上記の合計3台位を想定していた。
それが気がついたら8台のカメラに囲まれていた。
役者数が9名なので「役者数≒カメラ数」というトンデモ状況が生まれた。
舞台から客席を見たら記者会見の気持ちを疑似的に味わう事ができた。
いつか行うかもしれない謝罪会見の予行練習になりました。
ふたつ目は映像の妙義を感じたこと。
これが一番「配信公演にしてよかった」と思った部分だ。
さっき「カメラ台数が多くて素晴らしい!」みたいな事を言ってたけど、
もちろん「画角が多い映像が素晴らしい」というわけでもない。
画角と映像表現が多いハリウッドアクション映画よりも、
定点カメラ長回しな邦画の方が好きな人間なので、そちらに流れる事はないだろうと思っていた。
しかし、この8台が絶妙な数だった。不必要な画角がひとつたりともない。
そして、これだけ画角があれば飽きない。
演劇の配信はどうしても「引き絵」が多い印象がある。
人間の目はズームイン/アウトができないので、私たちが舞台を見ている時も基本的には「引き絵」のみ。
そして、私が演出する時は「引き絵で見た全体像」を一番大切にするので「引き絵」になるのは至極当然だと思っている。
でも、演劇が映像化する時の一番の弊害はどうしても「飽きがくる」ところにある。
どんなに素晴らしい脚本で演出で役者であろうとも、それは逃れられない運命なのかなと思っている。
劇場という空間にいれば常に空気が滞留する事なく動き続けている。
役者の台詞はもちろん、ちょっとした動き。空気感。
観客席の一体感だったり、逆に不一致感を感じたり。
劇場という大きな生物の中で蠢いている感覚。
それを感じる事ができないのは損失だ。
いや、損失なんて言葉では全く足りない。
でも、完成した映像を見ているとその空気の流れを感じる瞬間がそこらかしこにある。何故か。
演劇作品でもあり、映像作品でもあり、でも映画ではない。
その絶妙なポイントを突いている。うまく言葉にできないのだけど。
みっつ目は尊重と線引き。
この作品には2人の演出家がいる。
「舞台作品としての演出」と「映像作品としての演出」
ひとつの作品に演出が2人存在していることなんてまずあり得ない。
作品の方向性がブレブレになる。普通は。
しかし、この2人の演出家は自分の専門領域では存分に力を発揮して、相手の専門領域には決して踏み込まない。
もちろん、作品の方向性をすり合わせるために対話はしていたと思う。
でも「ココからはお任せします」という線引きが絶妙に上手い。
そして、2人とも自分の仕事に誇りを持っているし、何より「演劇/映像」が好きなんだと感じた。
それぞれが得意で、何より好きで好きでたまらない分野を持っている人間同士が集まって作った作品が面白くないわけないよなぁ……って思った。
いや、まぁ、もちろん「好み」という何人たりとも犯す事ができない領域はあります。
ありますが、その好みを越える可能性がある気がします。
「どっちがいい」でも「どっちが悪い」でもなく、単純に「選択肢が広がった」という感覚が強い。
強固でありながらも、柔軟に変化できるしなやかさを常に意識したいものです。
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