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イノセントでダーク、フラジャイルでストロング、メランコリックでチアフル…聴き手をかき乱す凛とした女性 coeur de pirate

日本にいるフランス人の方が、coeur de pirateを「フランス版椎名林檎だよ」と言っていたってのを、昔Twitterか何かで見ました。
こういう表現の仕方ってどちらのファンにとってもあまり気持ちいいものではないと思うけど、「なるほどー」と私は少し納得しました。

フランス語が公用語であるカナダのケベック州出身。フランス語で歌っている。フランスやカナダではスター的なアーティストのベアトリス・マクティン。
心地の良いフランス語と、とてもキュートな歌声がたまらない。とはいえ、フレンチポップとは括れないとても美しい世界観のある音楽。
フランスの文化と独自の伝統が織り成すケベック音楽ならではかもしれません。
私が初めて耳にしたcoeur de pirateの曲は『Golden baby』。こんなに琴線にふれる美しい楽曲に出会ったのは初めてで、
私は生まれながらにこの曲を持っていて、この曲に現世で出会うために生きてきたのではないかとロマンチックなことを考えてしまうくらい出会えたことに喜んだ。

夢を見ているかのような美しい楽曲と、可愛いのに芯のある現実的な彼女の歌声が、自分の中のあらゆるものをかきたてる。

彼女の曲はどれも物語をなぞるような、映像的な世界観が見えるようで、色や明度、手触りを感じることができる。

歌声はとても可愛らしい。フレンチポップのロリータ感が好きな人は引っ掛かるようなあどけない声だ。だけど腰を据えてるような力強さがある。
ルックスもとてもキュートだけど、力強い眼光をしていて、両腕には一瞬ぎょっとするカラフルな美しいタトゥーがある。

1stアルバムはクラシックピアノサウンドにイノセントな雰囲気に包まれた軽やかな曲たちで構成されている。不思議なのが、彼女の歌声は哀愁を帯びてメランコリックに聴こえたかと思えばとても暖かく喜びに溢れてるようにも聴こえる。多分こっちの聴きかた次第でどちらにも反転する。

2ndアルバムは前作とガラッと雰囲気が変わり、小悪魔的なヴィンテージ感のあるフレンチポップ的な曲で喜怒哀楽を露に躍動感たっぷりに楽しめる仕上がり。一番『女性的』だなって感じ。


3rdアルバムは英語詩の楽曲が多く、挑戦した内容。1stから7年経ち最初のイノセントで陽だまりの中にいるような雰囲気から一転、まるで荒野にでも立っているのか!と思うような孤高の力強さみたいなのを感じる。成熟したなー、ビジョンの広がりがすごいなーって感じ。ひとりの女性として・母として、愛のために戦っている。裏表全ての感情を表現しているみたいだ。
ピアノサウンドを恋しく思うファンも多くいるだろうけど、その安心な音楽の外に出て、この実験的サウンドで彼女の中の苦難を最大限に美しく強く表現できていて大傑作だと思う。

フランス語の歌詞をGoogle翻訳で見てみても、なんのことを歌っているのかさっぱり分からない。なんかすごく思慮深そうな詩だなと思う。
多分断片的に言葉の訳だけしてみても、ニュアンスとか捉え方とか全然違うものがあるんだろうな。

もう歌詞は理解できなくてもいい。とにかくこの声とメロディーに包まれてたい。 暖かい日、雨の日、幸せなとき、孤独なとき、あらゆるシーンに変幻自在にフィットしてくれる。

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