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テイラースウィフトの成熟/folklore

『今年に入るまでは、新しい音楽をリリースするのに完璧なタイミングっていつだろうって、考えすぎていた。でも、私たちが生きている今という状況は、何事も保証されてなんかいないんだということを繰り返し私に思い知らせた。私の直感は、愛しい何かを創り出せたのなら、とにかく世に出してみようと訴え続けていた。それなら、やってみようかなって。』


テイラーのとても素敵なメッセージとともに聴いた『folklore』がやさしく幻想的で、心の中の愛しい大切なものを呼び起こすようだった。
森や霧、その空気のマイナスイオン、光や空の色や温度や肌触りまで、音という波でたくさんのものが伝わってきて目が潤んだ。

『完璧なタイミングっていつだろうって、考えすぎていた』と言っているように、テイラースウィフトが確固たる地位を築く成功を成し遂げてきたのは、彼女自身の魅力と、そして戦略勝ちが大きかったのではと思います。

自分がいつ何をどうすべきか綿密に計画通りにやってきたテイラーが、コロナ禍で予定通りの計画を実行することが出来ず、そして計画になかったことを直感で行ったのが今回の新作のリリース。

カントリーから決別し、ポップスで世界中の人々を熱狂させ、ダンスサウンド、エレポップへとすすんでいったところで、まったく別の方向転換となるインディフォークの要素で構成された新作。

カントリーミュージック出自のテイラーと、アコースティックサウンドとはとても馴染みがいい。

カントリーアルバム過去3作の中にもこういう幻想的で憂いのある曲はいくつかあった気がすると思い、聞き比べてみたが、新作は全く原点回帰ではなかった。
folkloreには過去作とは姿の違う、成熟したテイラーが詰まっている。
過去作はもっと猛る想いがあふれているものだった。


『成熟』とは、
〝そんな風に今まで考えなかったが、ある時からそんな風に考えることが出来るようになっていること。
他者に自分の採点をまかせないこと。
今まではやろうと思ってなかったことがいつの間にか出来るようになっていたり、何かに振り回されることなく自然とやろうと思えたり、その術がいつの間にか身に付いていること〟

そういうのが“成熟”したことの証拠だ。


人為的な表舞台から去り、自分の心の中へ帰っていく、そんなテイラーが浮かぶ


自由な空想、思い出、恐怖、湧き出るイマジネーションに心踊らせながらペンが止まらないテイラーの姿を想像すると愛しいなと思う。


『心から愛するものを完成させたら、それをすぐ世界に届けるべきだと思った』


こんな、彼女の素直な言葉に背中を押される。

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