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~思考の流儀~ 感情を抑えると心が複雑になる


ブラジルに長く住んでいた人から聞いた話だが、ブラジル人はお酒を飲んでも人が変わることがないようだ。日本だとお酒を飲むと人が変わったように陽気になったり、攻撃的になったりする人がたくさんいるが、そんな変化がブラジル人には見られないという。

これはブラジル人日ごろから感情を自然に出して生活をしているからに他ならない。日本人はそれだけ感情を抑えて生きている人がたくさんいるのだ。だからストレスを抱えたり、鬱になるケースが少なくないのだろう。

感情は理性と比べて低く扱われがちなので、人とのお付き合いにおいてあまり感情的に振る舞うと大人げないと見なされたりする。それゆえに感情的にならないよう、多くの人は自分を押し殺す習慣を身につけているのだと思う。

だが、感情を出さずに生きていると、感情の流れが悪くなって心におりのようなものがたくさん溜まってくる。気持ち良く生きるには心をシンプルにした方がいいのだが、感情を煮詰まるとそれは複雑になっていくのだ。

その意味でも、感情はなるべく出した方がいい。普段出さないと溜まったものがゆがんだ形となって突如として出てきたりする。こういう感情の表出はもちろんよいものではない。

感情を出す時は、いい感情だけでなく、マイナスの感情もうまく出すようにしたほうがいい。例えば、怒りの感情もそうだ。怒りはコントロールすべき感情だとよくいわれるが、怒りの人が本来本能的に持っている攻撃性に付随する感情だから、素直に感じる怒りなら本当は出したほうがいいのだ。出すとよくない怒りとは、抑圧した感情のなかでいびつに歪んでしまったものである。

現代人は損か得かを計算しないと生きていけないような社会に生きている。そんな計算を正確にするには理性的な能力こそが求められ、感情は必要でない。

しかし、人は損か得かで動くより、まず気持ちよく生きることを考えるべきだ。それには感情を抑え込んだりせず、日ごろから感情の流れをよくしておく事が大事だ。シンプルで心地よい気持ちになるには、感情をコントロールする技術ばかり磨いていてはダメなのである。


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