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ザ・ギンブラート(それからちょっぴり告知など)について

おはようございます!みなさんいかがお過ごしですか。本日は「ザ・ギンブラート」(「新宿少年アート」に関しては長くなるので後日)について紹介しようと思います。

なぜこの話をすることになったのかというと、ご存知の方も多いとは思いますが「アーリー90's アートスクアッド」展(以下、スクアッド)が現在絶賛開催中だからなのだよ。

この展覧会は90年代前半に東京の一部のアート・シーンでゲリラ的に行われた活動、具体的に言えば今日のお題である「ザ・ギンブラート」や次回のお題「新宿少年アート」などを中心に紹介している展覧会です。とはいえ私のようにアーリー90'sには生まれていない若人たちが展示を見ても、そもそもの活動を知らなければなかなか面白みがわからないということで、今回は私なりに「ザ・ギンブラート」について説明を試みたいと思います。ちょっぴり長くなりそうな予感ですが、お付き合いください。最後に告知もありますのでね。

概要

1993年4月4日〜18日までの会期中、24時間休みなく行われた展覧会「ザ・ギンブラート」。小沢剛、ピーター・ベラーズ、村上隆、岩井成昭、申明銀、西原珉、中村政人、飯田啓子の8名が、銀座1~8丁目全域、主に歩行者天国(路上)を会場として作品やパフォーマンスを発表した。さらにスモール・ヴィレッジ・センター(小沢剛、村上隆、中ザワヒデキ)、会田誠、宇治野宗輝、謝林、鈴木真梧、パルコ木下など26名がゲスト・アーティストとして参加。タイトルは「銀座をぶらぶら歩く」と「アート」の合成語。ここまでは、鈴木著『レントゲン藝術研究所の研究 第2.5号』の別冊インタビュー22頁、注6に掲載していますが、スクアッド展で色々発見しましたので今回はそれらも加えていきたいと思います。先に断っておきますが、あくまで資料と展覧会で知った情報で、実際にゲリラ的に参加した作家の方もいたそうなので完全に説明するのは難しい&もし欠けている情報をお持ちの方いらっしゃいましたら、コメントにて教えていただけますと幸いです◎

会場となった銀座

高度経済成長によって増加した自動車による大気汚染や交通事故、排ガスや騒音といった交通公害の一時的な防止になり、開放的なイメージに繋がれば、観光客や買い物客の増加に繋がるという考えのもと1970年8月、銀座に「歩行者天国」が導入されました。繁華街という消費経済が生まれることで、貸し画廊システムもまた銀座で急速に発展を遂げることになります。貸し画廊とはつまり、展覧会のための展示空間を作家に貸し、その賃料によって運営する画廊のことです。有名批評家を顧問にしたり、講評をしてもらえたりする画廊もあり、さらに、発表の機会を望む作家にとって自由な表現が可能になりますが、賃料が1週間で20~30万円かかるとなると、その負担は大きいと言っていいでしょう。この日本独特の形態を持つ画廊が連なる「銀座」は日本美術の常識をその閉鎖性とともに作り上げてきた場所であるという意見もあります。

展覧会の目的

「ザ・ギンブラート」の実施概要によれば、会場となる銀座が上記のような場所であると述べた上で、開催目的を以下のように語っています。

「GINBURART」は、その「銀座」そのものを主題とする展覧会です。人間優先の規制の枠に捕われることのない、全面開放された空間とビジョンを展開します。しかし、ここではそうした状況への働きのみに終始するものではありません。むしろ八人の作家が別々のアプローチを持って銀座のイメージを解体していき、美術に納まり切らまい諸問題をスリリングに提示することに主目的があります。
路上でのこの展覧会は、各作家自身の責任のもと作品を発表します。美術館や画廊というまもられた場ではないため、作り手も見る側もより鋭く、やわらかい視覚、思考が必要とされます。それは、ARTとはなにか?という普通な疑問に、より普通に答えるための試みでもあります。消費社会の生んだ巨大な物質文化の中でただよう私たちは、つぎの時代を迎えるべく、さらなる多様な認識の選択を問われています。銀座の街にアーティストが行うこの行動は、習慣的、常識的認識から逸脱しその選択をするうえでの勇気と契機を生み出すことでしょう。

このことから、ホワイト・キューブや貸し画廊とは別のアプローチ(アンチテーゼは言い過ぎる気がしているのであえてこの言葉にしてみました。後日確認してみます。)を試みる、実験的な展覧会だったということがわかります。そしてこのプロジェクト自体が作品だと考えることもできるのではないでしょうか。

出展作品について

銀座の路上、室内問わず、作家の選択した場所に(作品を)設置する。
すべて作家の責任のもとで管理、搬入、出を行う。
作品、パフォーマンスの日時、場所はチラシにて告知。

という条件のもと、作品が展示されました。作品に関して、わかる範囲で解説を試みたいと思います。

岩井成昭
《コインロッカー・エキシビジョン》
「地下鉄の地下道にある出入り口の案内図、救命具、ポスターなど、その内容を点字より表す。構造としての視覚と音を体験できる装置。」ここまでが企画書に書かれた内容で、数点展示されたことが予想されますが、詳細不明ですので、今回のスクアッド展で紹介された《コインロッカー・エキシビジョン》について解説します。荷物を入れるため、料金を支払っての場所を借りるコインロッカーのシステムを、展覧会を開催するため、料金を支払っての場所を借りる貸し画廊のシステムに置き換えて、ロッカー内での展示を試みた作品です。エキシビジョンと銘打ってはいますが、どちらかというとアクションやハプニング的要素が強い作品です。具体的には地下通路にあるコインロッカーのうち、9箇所に設置されたリズムマシーンから音が出る構造になっていて、リズムマシーンから音が出る度に金属製のロッカー全体が振動する仕組みになっている作品です。この作品の記録写真がスクアッド展に紹介されていますので、気になった方は要チェック!
その他には、地下通路に設置された様々な広告などをテキスト化し、点字プレートに変換した作品なども展示されたようです。

飯田啓子
スクアッドに展示されている《ザ・宅急便》が展示されたんだと思います。送り状伝票が3331のちょっとした所に貼ってあったのはご存知?スクアッドにて、是非見つけてみてください。

小沢剛《なすび画廊》
世界最小の移動式画廊として、老舗貸画廊「なびす画廊」前の路上にオープンしました。牛乳箱という牛乳配達を依頼する際に用いる箱の内側を白く塗ることで生まれるホワイトキューブが画廊の展示空間に見立てられていて、貸画廊のシステムへの疑問をユーモアたっぷりに表現しています。この作品はその後プロジェクト化(?)して有名作家の個展を多数開催、95年12月まで活動、その後一旦閉廊しますが97年に《新なすび画廊》として活動を再開しています。

申明銀《THE DOG》
おもちゃの犬を散歩したらしい。詳細は現在調査中。

中村政人《NO PARKING》《鳩よけ》
《NO PARKING》はスクアッドに展示してあります。政人さんの写真集『明るい絶望』の表紙の写真がこの作品ですね。《鳩よけ》は鋭利な突起が付いた立体で、自動販売機や看板の上に設置されたようです。

ピーター・ベラーズ《IMPRESSION SUNRISE》
タイトルがモネじゃん…と思ったら違いました。邦題は「日出ずる国の印象」だとチラシに掲載されていました。イギリス人のピーターもまた日本独自の貸し画廊文化へのアンチテーゼとしてこの作品を制作したそうです。これもスクアッドに展示されています。貸し画廊の料金システムをラブホテルの看板の模擬として制作したそうです。ラブホテルの料金表を調べてみたんだけれどちょっとピンと来なかった…。でも「Rest 23,000-55,000」「Stay 138,000-330,000」という表記の下に大きく「画廊」と書いてあるので、貸し画廊を揶揄する作品であることはよくわかります。

西原珉《芥川賞をねらえ!》
路上に座り込んで、地面にチョークで小説を書くパフォーマンス。
小説の内容は不明。珉さんに確認します。

村上隆《D.P.E.》 (訪問販売)
「画廊に事前に訪問販売することを告知し、作品とファイルをかかえ売り込みに行き、作品が売れたり企画展が決まった場合 だるまに目が入るという作品。貧乏がステイタスになっている美術界の構造を自爆的に暴く(未完)」とチラシに記載されていました。(未完)だったので急遽?実施されたのが《なんでもない日、万歳!》です。街行く人々に、星形のプラカードを渡し、そこへ誕生日を記入してもらい撮影するというもの。以前八谷和彦さんに当時の記録映像を見せていただいたときに池内(務)さんがワインレッドのスーツを着て星のプラカードを持って映っていました。よく考えたら、村上さんはギンブラートと同年1993年に広島市現代美術館にて個展「なんでもない日、万歳!」を開催していますよね…。

オープニングレセプション

この時期は、何かとオープニングパーティーを盛大に行う傾向が見られます。「ザ・ギンブラート」も例外ではありません。出展作家8名に加えオープニングには26名のゲストアーティストが参加しました。この時点で3790文字に達し、26名全員を紹介するとこの倍くらいの文字量になるので、ここからはいくつかピックアップして説明します。

宇治野宗輝《デコラティブツアー》
言葉で説明するのが難しい。簡単に説明すると、上半身裸の男性陣が四角いデコラティブな神輿を担いていて、その上に詰襟(?)を着て天使の羽を背負った宇治野さんが載っているという絵面です。宇治野さんはその状態でマイク片手にツアーをするということだと思われます。

鈴木(喜?)真吾《パーソナル・パーキング・プロジェクト》
歩行者天国に自身の車を駐車するというプロジェクト。スクアッド展の地下にある記録写真を見ると、銀座には似合わない年季の入った大きな車体で、如何にも銀座からは浮いた存在というか、超目立ってるって感じ。展覧会後に作成されたフリーペーパーには鈴喜真吾と表記されているけど、スクアッドだと鈴木真梧って書いてあるのはどうしてだろう。誤植?

MOJO WORK《ティファニーで洗濯を》
三越百貨店ティファニーの前で洗濯を干すパフォーマンス。サイトに詳細が載っているので参考にしてください。

会田誠《アート・コジキ・イン銀座》
日動画廊の前でゴザを敷き、そこで自身の絵や写真を販売。噂では藝大の卒業証書に富士山の絵を描いて販売したとか。この再現がスクアッド展にインスタレーションとして展開されています。

パルコ木下《辻絵描き》
歩行者天国で約130メートルのロール紙に歩行者の似顔絵を描いていくというもの。本当にそんなこと出来たのか不思議だけど、長いロール紙を挟んでパルコさんと池内さんが笑顔で写真に写っていたので多分本当。

スモール・ビレッジ・センター《アンブレラプロジェクト》
小沢剛・村上隆・中ザワヒデキの頭文字から命名されたスモール・ビレッジ・センターは、再現芸術を主目的に活動する、今で言うコレクティブ的な?
歩行者天国でクリストアンブレラ・プロジェクトをビニール傘20本を使用して再現をしたそうです。記録映像などが確かスクアッドで流れていた気がする。

告知

以上が「ザ・ギンブラート」についてのざっくりとした解説です。是非、この記事を読みながら、スクアッド展もチェックしていただけたらと思います。

で、告知です。
なんと!ここ数年、コツコツと活動していた鈴木の功績(?)が認められて(?)トークショウにゲスト出演が決まりました(拍手)!

『アーリー90’s トーキョー アートスクアッド』展を語ってみる。
1990年代前半、東京のアートシーンで何が起きていたのか?
開催日時:04.02 (木) 19:30 ~ LATE
出演:八谷和彦(メディアアーティスト)
ゲスト:会田誠(美術家)、鈴木萌夏(女子美大学院生)

八谷和彦さん、会田誠さんとご一緒させていただきまっす(マジやば)!このご時世なので有料配信になってしまいましたが、是非とも!是非とも!お家でゆったりまったりと見ていただけたらと思います。配信を見るには予約などが必要なので、下のリンクからチケットをポチってもらえたら幸いです◎


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