日韓夫婦であるということの難しさ

 おはようございます。2023年の正月は、ワイプの実家である韓国に10日ほど帰省していました。コロナの影響で、実に3年ぶりの帰省でした。そしてこれが結婚後初の帰省でした。私はワイプと日本と韓国での遠距離交際中からワイプの実家に泊めてもらうこともあったので、ワイプのご両親とはよく知った中であり、一般的な義両親の家に行くような負担感はなく、気楽に過ごせました。また、これまでは「外国人の彼氏」「予備サウィ」(사위:娘の夫)という扱いだったのが、今回は正式に「サウィ」として扱ってもらえたことが嬉しかったです。帰省中のさまざまな出来事については別途記事にしたいなと思いますが、今回はこの帰省の中で感じた日韓夫婦であることの難しさについて書きたいと思います。
 よく、日韓夫婦(に限らず、国際結婚)における難しさとして、「言葉の壁」「文化・習慣の違い」ということが挙げられます。名詞の形で挙げられることの多いこれらのトピックですが、動詞を用いてより正確に表現するならば、「互いの母国語が違う中で、どちらの言葉をメインで使用し、意思疎通を図るか。言語力を起因として生じた軋轢をいかに解決するか。」「文化・習慣の違いがある中で、どのように妥協点を見出すか。」といったことが、難しさの正体と言えると思います。これは若干辞書的な説明によっていますね。より実際の夫婦生活に即して説明するなら、以下のように記述できるかと思います。
 日韓夫婦は、「日本語か韓国語かのどちらかを夫婦のメインの言語として採用し、残る一方をサブとして使用する。」「日本式・韓国式のどちらかをメインの文化・習慣として採用し、残る一方をサブとして使用する。」という状況の中で、採用された側は、それを当然のこととしてみなしてしまいやすく、サブとして使用される側への理解がどうしても浅くなってしまいます。また、サブとして使用される側は、採用された側への不満を抱きやすくなります。ここに葛藤が生じやすくなります。具体的に言うと、日本語をメイン言語とする日韓夫婦において、日本人側は韓国人側の努力を軽視しやすく、韓国人側の「伝えたいけど言語の問題でうまく伝えられない」という状況への理解を怠りやすくなります。また、日本で暮らし日本式の生活スタイルを選択した日韓夫婦においては、韓国人側が「日本人側は、頻繁に実家に帰省できてうらやましい」と思うかもしれません。
 なので、日韓夫婦がこれらの問題を解決するためには、お互いへの対話と、対話を通じた理解によって、少しでも「どちらの言語・文化もメイン」という状態に近づけることが、一番良い方法なのではないかと思っています。
 私とワイプはともに東京で暮らし、日本企業に勤務しているため、メイン言語は日本語、メイン生活スタイルは日本式です。ワイプは日本語が流暢で、日本の生活スタイルもむしろ気に入っているようですが、私は最大限韓国側の要素も取り入れるように努力してきました。言語は韓国語やハンボノ(한본어:韓日語。日本語と韓国語のちゃんぽん)も使用することもありますし、結婚式も韓国で、韓国式でやることに決めました。日本食や日本の行事を押し付けることもしないよう努めてきました。日本:韓国=50:50に近づくように努力しつつ、実態として日本:韓国=60:40くらい、悪くても70:30くらになっているかな、というのが私の感覚でした。
 しかし、10日間の帰省を通じて、義両親と一緒に過ごすなかで、ワイプが育ってきた環境がどういうものかを、身に染みて実感しました。一言でいうと、今の2人の生活スタイルとは大きくかけ離れており、日本:韓国(というより、私:ワイプ)=95:5くらいの配分で今の生活が成り立っていることを知りました。具体的な例を一つ上げると、ワイプのご両親は焼き肉店を経営していることから、食事はディナータイム終了後の10時以降の遅い時間に食べます。また、食べる量も非常に多いです。彼らと同じペースで遅い時間に大量の刺激的な韓国料理を食べ続けた結果、7日目に胃腸炎になり、病院で点滴を打つような始末でした。ワイプはこうした環境で育ってきており、「夕食は19時前後に食べるもの」という、私にとっては常識であり、今の夫婦生活のスタイルが、ワイプにとっては私のスタイルに合わせてくれていた部分であったのでした。どれだけ多くのことを合わせてもらっていたのか、そのことを身をもって知りました。だからと言って、「ワイプ実家のスタイルに合わせて夕食は10時に食べよう」というのは見当違いで、ワイプも健康のために19時前後に夕食を食べることにはむしろ積極的に賛成しているのです。大事なのは、ワイプが育ってきた環境と違うスタイルを選択してくれた」という事実を知ることだと思うのです。私は、ワイプへの感謝と、自分の思い上がり(「十分ワイプに合わせてあげている」)を感じました。
 長々と書いてきましたが、簡潔に言うと、夫婦間の「どちらに合わせるか問題」というのが、日韓夫婦では特に問題になるということだと思います。そして、合わせてもらっている側(私です)は、思い上がることなく、こちらも相手に合わせに行く姿勢、合わせてもらっていることへの自覚と感謝を持ち続けていかなければならないという思いを強くしました。「どちらに合わせるか問題」は、日韓夫婦に限らず、あらゆる夫婦、あらゆる人間関係にも起こりえます。私の発見を通じて、読んでくださった方にも何かしらの気づきがありましたら嬉しいです。多くの夫婦関係が幸せに続くことを願っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?