脱プラスチックを求めた高校生と、亀田製菓、ブルボンの話し合い

学校にエアコンをつけてほしい。9月入学の導入を検討してほしい。部活動の強制加入をやめてほしい。これらは全て、全国の高校生たちがChange.org(チェンジ・ドット・オーグ)上で発信したキャンペーンです。

4月には休校延長を求めて、高校生らが200以上のキャンペーンを立ち上げるなど、若者の意見表明のためのプラットフォームとしてChange.orgが広く使われていることを私たちはうれしく思っています。

今年5月にはじまった「亀田製菓さん、ブルボンさん:プラスチックの過剰包装を無くしてください!」もまた、お菓子メーカーへの「プラスチックごみ削減」を求め、高校生が立ち上げたキャンペーンです。
個包装を全部なくしてほしい、と求めるキャンペーンだと誤解され、一部では「無知な高校生が文句を言っている」といった声も寄せられましたが、実際のところどうだったのか、企業の反応はどのようなものだったのか、提出に同行したChange.orgスタッフがキャンペーンの背景や、企業との話し合いの様子などをリポートします。

キャンペーンをはじめたきっかけ

3提出 

発信者の高校生、Aさんの通う学校は都内にあります。
通学路にあるタピオカ屋の前には、いつもプラスチックごみが溢れていました。
中学生の頃から環境問題に興味があったAさんは、見かねてひとりでゴミ拾いをはじめ、やがて友人も加わるようになり、自分たちにできることを勉強してきたといいます。

そんなAさんが、新型コロナウイルス感染症の自粛期間に気になったのは「お菓子のごみ」でした。

「コロナの影響もあり自宅のプラスチックごみが一気に増えました。自分たちの世代が消費するお菓子が、もっと環境に配慮した包装になってほしいと考えました」

Aさんは5月にキャンペーン「亀田製菓さん、ブルボンさん:プラスチックの過剰包装を無くしてください!」を立ち上げ、7月28日、29日の両日に各社に約18,000名の署名簿を提出し、意見交換を行いました。亀田製菓とブルボンを選んだ理由としては、両社がもともと環境問題への関心が高く「業界全体の脱プラスチックの動きをさらに加速できると考えたから」だそうです。

「おいしさや形や品質の維持も大切なので、過剰なお菓子の包装やトレーなどのプラスチックゴミを減らす取り組みや、プラスチックにかわる材料・デザインを考えていただきたいです」

Aさんはキャンペーン文にこう書いているのですが、「個包装の全廃」を求めるキャンペーンだと誤解した書き込みもSNS上には目立ちました。プラスチックごみ削減と、製品の品質維持・向上を両立させるための取り組みは、各企業がこれまでも努力を重ねています。Aさんは今回のキャンペーンを始めるにあたり、亀田製菓、ブルボンがこれまでに行ってきた環境に配慮するための施策も署名提出前からリサーチを重ねてきました。両者の取り組みを後押しするためのキャンペーンだったことは、ここで強調しておきましょう。

亀田製菓とブルボンの反応

Change.orgでは、日々さまざまなキャンペーンが立ち上がります。私たちはだれもが無料で自由な発信のできるプラットフォームを提供し、また、発信者の方にも無料で戦略サポートを行っています。このキャンペーンでは署名提出への同行サポートも行いました。

提出当日は両社ともに、署名を受け取るだけでなく、Aさんと意見交換の時間を設けてくださいました。そのなかでは、キャンペーンについて「たくさんの署名によって環境に対する取り組みや方向性が間違っていないと感じられた」「背中を押してもらえた」など、前向きに捉えていることが印象的でした。ブルボンの広報担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、「この度のプラスチックごみの削減の趣旨につきましては、全くその通りであり当社と方向性が一致するものと考えています」とコメントを出しています。すでに環境に配慮した取り組みを行っている2社にとっては、今回のキャンペーンが話題になったことは、脱プラスチックの取り組みをあらためて広報できる機会でもあったようです。

また、各社とも、プラスチックごみ削減に向けた動きについて詳細に教えてくれました。

亀田製菓はプラスチックトレーをなくす取り組みに業界で最初に取りくみ、他社にも影響を与えています。環境に配慮しつつ、おいしくて安全な商品を作るために、これまでどのような努力をしてきたのか、実際の商品を見せて紹介してくれました。

空気を多く入れることでトレーを抜いても割れにくくさせたり、個包装と外部包装の幅をぴっちりさせることで破損を防いだり。パッケージが減った分だけ原材料に投資ができ、お菓子をさらに美味しくできた例もあったようで、実際にECOパッケージを導入して売り上げはあがっているとのお話しがありました。賞味期限への影響を考慮した安全性試験など、ひとつの商品で脱プラスチックの取り組みを行うのにも大変な労力がかかります、それでも「未来のお客さんにもおいしいお菓子を食べてもらえるように、今を変えたい」と話されている姿が印象的でした。

ブルボンでは、「これまでプラスチックを薄くしたり、バイオマスプラスチックを使ったりなどの取り組みをしてきましたが、プラスチックトレーを抜いた商品についても検討中です」との話があり、より環境負荷の少ない素材についてのディスカッションを行うこともできました。近い将来、さらなるプラスチックごみ削減に向けたアナウンスもできるとのことです。

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亀田製菓さんからは最新のECOパッケージのお菓子、ブルボンさんからは紙パッケージや簡易包装のお菓子に加えて「プチグマ」のぬいぐるみがAさんにプレゼントされました。貴重な対話の機会をありがとうございました。

若者が意見を言いやすい社会へ

日本では若者の政治参加の低さが以前より問題となってきました。
2016年には、選挙権が20歳から18歳に引き下げられましたが、投票に行く人が少ないことが問題となっています。
2019年7月に投開票された参議院選挙では30歳未満の投票率は約3割でした。

一般的に、若者世代は身近で具体的な課題に対して問題意識を感じて声をあげるほうが社会参加しやすい傾向にあると言われています。

今回の「お菓子のパッケージ」もそうですが、Change.orgで部活動の問題や、エアコン設置など、若者のまわりにあるイシューを中心に高校生たちがキャンペーンを立ち上げるのも、それが身近で具体的な課題だからかもしれません。そして、署名提出をうける側の大人たちが、その声に真摯に耳を傾け、意見を交わす様子にもまた、大きな希望を感じました。

今後も、自分たちのまわりにあることについて、自分たち自身で声をあげること、変化をおこすことが若者世代にとってあたりまえの選択肢になるように、Change.orgではひきつづき若者によるキャンペーンを応援し、成功事例を増やしていきたいと思っています。

若者世代にとっては、声をあげる同世代の姿がもっとも刺激的であり「自分の声に価値がある」と感じるきっかけになるはずです。声をあげる若者のロールモデルが増えるよう、Change.org Japanは今後も若者の発信をサポートしていきます。