見出し画像

Change.org Japan ステップアップサポート奨学生インタビュー:谷口歩実さん( #みんなの生理 代表)

Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)では、キャンペーン発信者が「社会を変えたい」と願う声を、より強く、より効果的に発信できるように、さまざまなキャンペーンサポートを展開してきました。これまでは、「キャンペーン本文の改善提案」「メディア展開のサポート」「署名提出の同行」など、署名にひもづくサポートを中心に行ってきました。そしてこれからは、より広く、「社会を変えるためのキャンペーンづくり」の応援にも、力を入れていきたいと考えています。

 そこで、2020年、キャンペーン活動をより活発にするためのスキルアップを応援する奨学金プログラム「Change.org Japanステップアップサポート奨学金」を創設。第1回プログラムでは、NPO法人Community Organizing JAPAN(以下「COJ」)と協働し、【第2回オンライン】COJ主催コミュニティ・オーガナイジング・ワークショップへの参加費を一部サポートすることとしました。

 第1回プログラム奨学生は、谷口歩実さん。2019年12月にキャンペーン「生理用品を軽減税率対象にしてください!」をひとりで立ち上げた谷口さんは、キャンペーン活動を進めるなかで、生理について考える団体 #みんなの生理  を立ち上げ、代表をつとめています。
 谷口さんにとって、ステップアップサポート奨学金はどのように役立ったのでしょうか。お話を伺ってみました。

---COJ研修への参加、お疲れさまでした。今回参加してみて、新しい知識や発見はありましたか?

これまで「コミュニティ・オーガナイジング」というものを全くしらなかったので、たくさんの学びがありました!

一番大きかったのは、「同志」という考え方を得たことです。

生理についての活動って、「生理についての知識を与える人/与えられる人」とか「生理用品を配る人/受け取る人」というかたちで、立場の違いができやすくって。海外の活動事例を調べても、そういうかたちの活動が多くて、「生理の活動ってこういうものなのかな…」と思っていました。

今回の研修で学べた、お互いの価値観や関心をぶつけあって、融合したところを目指していく「同志」のコンセプトは、私がやりたかった活動にピッタリだと思いました。この考え方なら、与える/与えられる関係ではない活動がつくれるかもしれない!と、希望が持てました。

---研修で得たものは、#みんなの生理の活動に役立っていますか?

はい、早速役に立っています!
#みんなの生理 は3人で立ち上げた団体なんですが、COJの研修を受けた翌週に新メンバーが加入して、5人に増えたんです。この機会に団体の活動の方向性をきちんと練り直そうと思って、研修で習ったことをみんなで実践しています。COJの研修は10時間ほどの研修を2日間連続で受ける形式だったんですが、それぞれ学業や仕事もあるので、8つほどのセクションに分けて、少しずつ実施しています。
「今後の役にも立つし、今やらねば!」と思って、教わったことを全部スライドにしています。まだ途中なんですが、90枚を突破しました(笑)

---すごい情熱ですね…!団体内でコミュニティ・オーガナイジングを実践する前と後で、どんな変化がありましたか?

#みんなの生理 の初期メンバーは、お互いに生理のことを話し合うのは好きだし、3人のなかで価値観を共有することはできていました。「マイノリティとされている人たちにとって、生きやすい世の中にしたい」という気持ちが私たちの共通項で、そのことはきちんと共有できていたと思います。

でも、活動としてはなんだか同じところをずっとぐるぐるしているような、ちょっと中だるみをしているような感覚がありました。#みんなの生理 の活動を応援してくださっている議員の方からも、「あなたたちはどこに向かっているの?」なんて言われちゃったりして…
でも実際のところ私たちは、「どこに向かっているか」がわからないのではなくて、「どこに向かえばいいのかを考える方法」を知らなかったんです。でも、コミュニティ・オーガナイジングという手段を得たことで、「どこに向かえばいいのか」をみんなで考えることができるようになりました。
特に大きかったのは、プロジェクトをつくるときの時間軸の考え方を教えてもらえたことです。「ゴールをしっかり設定する」、そして「ゴールにたどりつくまでのタイムラインを組んで、どこにどうエネルギーを注ぐべきなのかを確認する」。こういう考え方が、これまでの私たちにはなかったんだな、って気づきました。
COJの研修って、見ず知らずで関心もまったく異なる人たちとグループを組まされて、ゼロからプロジェクトを立ち上げるんです。あんなにバラバラな人たちと一緒でもプロジェクトがつくれたんだから、「生理に関心がある」って大きな共通点がある私たちにできないはずはない!って思っています(笑)
まだ私たちの研修も途中の段階なので、「どこに向かえばいいか」はしっかりとは決まっていません。でも、半年から1年をかけて、なにかひとつのプロジェクトを達成させたいね、って話をしています。

もうひとつの大きな変化は、「3人でおさまってしまうこと」「3人の外に出すのが苦手なこと」から脱却する手がかりを得たことです。新しいメンバーも含めて、みんな人見知りなので、まだまだ難しい面もあるんですが…(笑)
特にこれまでは、メンバーの間でさえ遠慮しあってしまうことがあったんだな、と、COJ研修を通して気づきました。私も4月から就職して会社員になったし、秋から海外留学に旅立ったメンバーもいたりするなかで、私が「他のメンバーに仕事をふるのが申し訳ない」「私が始めた団体なんだから、私がやるべきだ」ってなってしまって…
でもそれって、持続可能じゃないですよね。団体の成長、メンバーのみんなの成長のためには、仕事を任せないといけない。「仕事をふって申し訳ない」っていう考え方をやめて、「メンバーの間で、仕事ができる機会を平等にしよう!」って思えるようになったのは、私にとっても、メンバー同士の関係にとっても、大きな変化だと思います。
これから先もメンバーを増やして、もうすこし大きな団体にしてきたいな、と思っています。どういう役割で関わってもらう人を増やしていくかを明確にして、大学生にもインターンシップのようなかたちで関わってもらえるような組織づくりをしていきたいです。

---団体のこれからの役に立てたみたいで、とても嬉しいです! ところで、「生理用品を軽減税率対象にしてください!」の署名提出がありましたね。10ヶ月かけて集まった賛同の声を届けた感想を教えてください。

2020年10月2日に、公明党の竹谷とし子議員と矢倉かつお議員に署名をお渡しできました。COJの研修を受けてから提出に行けてよかったな、って思っています。正直にいうと、このキャンペーンを始めた当初は、提出した結果が成功でも失敗でも「署名提出がゴール!」って思っていたんです。
でも、繰り返しになりますが、私たちが本当に達成したい最大のゴールは「マイノリティとされている人たちにとって、生きやすい世の中をつくる」ことだと、COJの研修を通じて気づくことができました。そのゴールを達成するためには「生理がある人も生きやすい世の中になる」のが大事だし、その一歩として「生理用品に軽減税率を適用すること」があるんです。
だから、この署名を提出することは「活動のゴール」なんじゃなくて、「最初のひとやま」なんだ、って思って、署名提出に臨むことができました。

---署名提出では、冒頭で谷口さんがキャンペーンを立ち上げるまでのセルフ・ストーリーを話したところが、とても印象的でした。あのお話で、議員さんも一気に引き込まれていたように思います。

これもCOJ研修で「ストーリー・オブ・セルフ」の組み立て方を教わったおかげです。もともと「なにを、どういう風に話したら、人って動いてくれるんだろう?」という興味はあったんですが、その方法がわかりませんでした。

私が生理用品に関心を持つことになった最初のきっかけは、おばあちゃんから聞いた話でした。「若い頃はお金がなくて、生理用品を買うか、明日の朝ごはんのパンを買うか、迷うくらいだった」という話が、すごく印象に残っていたんです。
去年、大学の卒業論文で、私と同い年くらいで生理のある人たちに、生理用品に関するインタビュー調査をしたら、「お金がないけれど、親に生理用品を買ってと言い出せなくて、友だちのポーチから盗んでしまったことがある」とか、「気持ちが悪いし不衛生だけど、生理用品を交換する回数をできるだけ減らしている」と話してくれる子が何人もいて、とても驚きました。おばあちゃんと同じように困っている人が、私と同世代でもこんなにいるの!?って。
そうして考えてみると、「生理がある」っていうだけで、一生涯で50万円も経済的負担がかかるのはおかしい。「生理があっても大丈夫だよ」とサポートしてくれる社会になって欲しい。そう思って、「生理用品に軽減税率を適用してください」って声をあげることにしました。

署名提出の後の懇談では、こんなお話を最初にさせて頂いたんですが、「ストーリー・オブ・セルフ」のメソッドを知っていたおかげで、自分のことを自信を持って話すことができました。
実際のところ、税制の変更はすごく難しいそうです。でも、竹谷先生も矢倉先生も、貧困や社会福祉、教育、ジェンダー平等の問題として、「生理用品を手にできない人がいる事態」をどう解決していけるかを、一緒に考えてくださいました。「生理用品の軽減税率適用」は達成できないかもしれませんが、「マイノリティとされている人たちにとって、生きやすい世の中をつくる」という最大のゴールへ近づけるようなお話ができて、とても嬉しかったです。

---最後に、今後「Change.orgステップアップサポート」に応募する方へ、メッセージをお願いします。

COJの研修はためになることばかりで、1日でも早く知っていたかった!って思うことばかりでした。だからもし迷っている方がいたら、次回の募集にはぜひ応募していただきたいです。

アクティビズムには正解がないと思います。成功することも難しいし、どんな先例があったのかを知ることも難しいですよね。どうしたらいいかが分からなくなってしまって、私たちの活動も停滞しそうになっていました。
そんなときに、活動を進めるためのひとつの型を知ることができたのは、とてもありがたかったです。自分たちが持っているエネルギーを、前向きに進めていくきっかけがもらえました。皆さんもぜひ、参加してみて欲しいです!

Change.orgでは、今後もさまざまなかたちで、「社会を変えたい」と声をあげた皆さんの活動を応援していきます。ご期待ください!