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2023/09/27|実家とは違う何か

実家は実家っちゃ実家なんだけど、気持ち的には別物だ。
本当の実家の近所にもともと祖母が住んでいて、彼女の介護のために両親がそっちへ引っ越した。「両親が住む家」という意味では実家と呼べるかもしれないが、一人暮らしするまでの29年間×365日をここで暮らしてきたわけじゃない。学校帰りにちょっくら「寄った」回数は数えきれない。でも「帰った」ことのない家へ帰るのは、未だに不思議な感覚だ。

今日は珍しくそんな実家(仮)でPCを開き仕事した。MTGまであと10分だというのにこの家のWi-Fiパスワードがわからずネットに繋がらない。さすがに慌てたがなんとか間に合い胸を撫で下ろす。母はリビングのテレビでYouTubeの都市伝説チャンネルみたいなのを見てて、一応私に気をつかって音小さめにしてくれているが、会議に音が混じらないかヒヤヒヤした。
多分これは世の中高年YouTube履歴あるあるなのかもしれないけど、放っておくと本当に訳分からん怪しいチャンネルにどっぷり浸かってたりするので恐ろしくなる。2chにありがちなスカッと嫁姑バトル(?)を延々と読み上げる動画などを嫁と姑で仲良く見てるらしい。正直やめてほしい。


認知症の祖母は週5でデイサービスへ通っていて、最近はショートステイを試したりもしてる。トラブルメーカーまではいかないけど、認知症の影響で大声を出しちゃう他の利用者に食ってかかっていくことがたまにあるらしい。半分は正義感、もう半分は「ここの人たちと自分は違う」っていう変なプライドの表れだろう(実際はみんな大差ないのだけど、祖母の中では職員さんの味方をしてあげてるつもりっぽい)。
最近それを知った叔母が「なんかわかるわぁ……」と自分の母親との血のつながりをしみじみ感じてて、今日その話を聞かされた私も同様に(わかるわぁ……)となってしまった。母はわからないかもしれないが、私はわかってしまう。私も、きっと叔母や祖母も、性格はあまりよろしくない。

今や私の名前を思い出せない祖母も、もうだいぶ前に亡くなった祖父も、孫に見せる顔はいつだって甘く優しかった。数人いる孫の中でも一番会ってた私が一番かわいがられてきた自信がある。実際とてもいい思い出ばかりなのだけど、他の縁戚などから伝え聞く話を総合すると、(私の母や私に対して見せていた顔と違って)誰から見ても全方位に「優しい」って感じの人ではなかったのだろうな、というのが近頃の私の見解である。
まあ、だからといって祖父母と私の思い出が劣化してしまうことはない。もし彼らのことをよく思わない誰かがどこかにいるとして、私の思い出にまで泥を引っかけられる筋合いもない。

(自分の身内と重ね合わせて考えるのなんて本当は嫌なんだけど、あえて誤解を恐れずに言えば)いま私の好きなアイドルたちを呑み込まんとしている社会の荒波の「元凶」もまた同じ人間である。誰かにとってはひたすら恐ろしい悪魔みたいな存在、別の誰かからすればただ優しいだけのジジイだったとしても別に不思議はない。もちろん私だって「いっぺん地獄から蘇ってきて自分で腹を切りやがれ」と叫びたいほど超絶ムカついてる。こんなことになってるのに一人だけ逃げやがってと思う。アイドルの未来が明確にぐらつく中、社名にこだわってる場合かよとも思う。
だけど身内はもちろん、スタッフや"子どもたち"一人一人にさえ違う顔を見せていたかもしれない中で、その記憶を一括で真っ黒に塗りつぶすことが、長期的に見てアイドルにどんな影響を及ぼすのか見当もつかない。どこを塗りつぶすべきなのか、どこは塗りつぶさなくてもいいのか。罪なきアイドルに考える暇さえ与えない世界が少し怖い。被害者のためにタレントのためにファンのためにステークホルダーのために会社は対応を急いでほしい。急ぐべきだ。今のこのカオスな状況で「正しい」とされることなんてきっとそれしかない。でもこの「急ぎ」が後から別種の暴力に変化し、誰かを見えないところでじわじわ苦しめるかもしれないことを、私は正直恐れてもいる。

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