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ネタバレ「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」感想

150分の大作で、最後まで飽きさせない。

深い悲しみの中、作品を作り上げた京アニの皆さんに敬意を表する。

映像もすごく綺麗で見入ってしまう。背景画は実写のよう。水の表現がヤバいという噂は噂以上。現実よりも現実みたい。美しい自然の有り様は、主人公の純心と呼応する。

残酷な描写がなくとも、ヴァイオレットの義手で戦争の過酷さを描く手法も効果的であった。

以下、良作であることを前提としたツッコミどころをいくつか。

戦争孤児で身寄りのない幼いヴァイオレットが、養父がわりとなった大人の少佐に恋する設定が弱いし、少し抵抗を感じてしまった。

少佐は少女であるヴァイオレットに手取り足取り読み書きを教えるが、それは父性の出現なのかと思っていた。

教育を好意と勘違いしてしまう幼いヴァイオレットの心情は理解できる。

さらに戦場という過酷な現場に駆り出され、常に死と隣り合わせの状況で、吊り橋効果によって、少佐への想いが募るのも理解できる。

島で先生をしている少佐も子供たちに「先生大好きー」と抱きつかれている。子供は往々にして、自分のために時間を使ってくれる大人が好きだ。

ただ、この物語の根幹となる「愛」の育まれ方が、俗に言う「光源氏効果」と「吊り橋効果」って、弱くない?気持ち悪くない?

百歩譲って幼い少女であるヴァイオレットが恋に落ちちゃうのは仕方ないとして、いい年した大人の少佐が、ヴァイオレットに恋しちゃうのは、ロリコンと言われても仕方ない。

下手したら、少佐の兄貴もヴァイオレットに恋してそうだもの。

あと少女を戦場に駆り出す設定もよく分からない。戦力にならないでしょう。何かヴァイオレットに特殊能力があるのかもしれないけれど、その描写はなかった。

職場の社長が「ヴァイオレットちゃん」と呼んでるのも減点対象。職場で部下の女性をちゃん付けはNGです。

ヴァイオレットに会いたがらない少佐も自己保身の塊のように感じた。

ヴァイオレットを戦争の道具として使って傷を負わせてしまった負い目から会いたくない、なんてのは、我が身可愛さからでしょう。

自分の過去と向き合いたくない、逃げたいから、ヴァイオレットと会いたがらないなんて、自分勝手にもほどがある。

戦争で死を覚悟した時に、遺言のように「愛してる」とヴァイオレットに伝えたのも、自分勝手。

そんなこと言われたからヴァイオレットは、少佐のことが忘れられなくて、ずーっと引きずることになってしまう。あれは残酷で自分勝手。

愛を、男女間の愛ではなく、家族愛として描いていたら、多少は違和感が減ったと思うけれど。

細かいところだけど、ヴァイオレットの日傘の持ち方、横に倒してバッグに挟むのは危険よ。しかもそれが切手になるなんて。

ユリスの弟、5歳って設定だけど、あのバブバブ喋りは2歳レベルだよ。5歳って翌年は小学校入学ですから、普通に大人と変わらずハキハキ話せますよ。

あと挿入歌いりますかね。

正直、浮いてたと思います。長丁場の作品、あの歌で没入感から我に返ってしまった方もいるのではないか。

あとヴァイオレットが船から飛び降りて浜辺に到達するまでが早過ぎる。出港しているわけだから、ある程度の水深のところを船は進んでいるはず。水深が確保された場所から浅瀬までの距離は少なくても数百メートルは必要であろう。

その距離をあの短時間で浜辺まで泳ぎ切るのは早すぎるように感じました。

オープニングの題字の出方はカッコ良かったです。それゆえにエンディングでの出し方がもったいなかった。郵便屋さんとの会話で「彼女の名は、」って言った後で、デイジーがかぶせ気味で「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」って言っちゃうけど、そこは彼女にいわせずに、バーンって、題字が出るとカッコ良かったし、オープニングとリンクしたのに。

色々言ったけど、良い作品です。

未見の方は是非。
アニメ好きで、この映画を見て得るものがない人はいないのではないでしょうか。