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新サクラ大戦 アーサーは英国宰相の夢を見るか?

爵位を持つ倫敦華撃団

 新サクラ大戦に登場する倫敦華撃団。彼ら団員は全員が爵位を持つ貴族であるという。こう聞いて思い浮かべるのはどんなイメージだろうか?華やかな舞踏会で華麗に踊る姿かもしれないし、荘厳で美しい屋敷に住まう姿かもしれない。確かにそうした部分も貴族の一面ではあるが、イギリスの貴族にはもう一つ重要な役割がある。つまり貴族院議員として議会と国政に参加することだ。
 今回の話はイギリスの貴族と政治のお話だ。倫敦華撃団が全員貴族という話をもとに、イギリスにおける貴族と政治のかかわりについて考えていこう。

イギリス貴族 =貴族院議員

 イギリスにおいては爵位を長子相続で受け継ぐ世襲貴族であれば、自動的に貴族院に議席を持つことができる。ただしこれは1999年までであり、この年にブレア政権下で貴族院法が制定されたことで貴族院の議席数に制限がかかり、全員が自動的に議席を持つことはなくなった。また自動的に議席を持てるといっても、1963年の貴族法ができるまでは女性は議席を持てなかった。さらにスコットランド貴族とアイルランド貴族は時代によって変化する部分があり…とまぁ、このあたりは上院改革とかかわる部分なので一度置いておく。いずれにしても重要なのはイギリスでは貴族である=貴族院議員であるという構図が成立するということだ。

 では倫敦華撃団ではどうだろうか?団員が貴族なら彼らも全員が貴族院議員ということになるだろうか?
 公式では流石にそんなところまで言及してはくれないので、現実的に考えてみよう。つまり彼らが貴族院議員であった場合はどうなるだろうか?そうなるとかなり過酷なスケジュールになりそうである。
 イギリスの議会は約1年間の会期があり、その間おおよそ季節ごとに休会期間をはさみながら運営される。そして貴族は議会の開催期間はロンドンに滞在し、それが終われば自らの領地に帰って過ごすというスタイルで生活している。つまりここに当てはめれば普段はロンドンのオペラハウスで活動し、敵が出れば華撃団として出撃し、さらに議会開催中は議員として国政に参加し、終われば地方で舞踏会やら晩餐会やらの社交界に顔を出していくことになる。さらに貴族がしばしば行っていたノブレス・オブリージュの一環であるボランティアへの参加なども入ってくるとスケジュールは過密も過密になりそうだ。いくらなんでもそれをやっていては体がもたない気はしてくる。彼らが性質上、基本的にロンドンに滞在して公演やらその準備やらに勤しんでいるとしても、そこに議員としての活動まで入ってしまえば体がいくつあっても足りない状況になりうることは想像に難くない。

儀礼称号としての従属爵位

 ここまで読んで「倫敦華撃団の団員なら貴族だけど議員としての活動は免除されるとか例外扱いされてたんじゃないか?」と思う人もいるかもしれない。

ごもっともである。ぐうの音も出ない。実際華撃団としての活動を議員活動の代わりとして免除されていても納得できるし不思議ではない。

だがちょっと待ってほしい。イギリスの貴族には従属爵位というものがある。これは伯爵以上の高位の貴族は下位の爵位、子爵や男爵などを複数所持することができるものだ。そして伯爵以上になってくると複数の爵位を与えられることが多く、下位の爵位は法定推定相続人(息子の中で最も最年長の者)に与えられることになる。そしてこうした従属爵位であれば貴族院議員としての資格は伴わないため、爵位を持ちながら議員としての活動をする必要はなくなるのだ。

 ではこれが可能性としてはありうるのか?答えはNOだ。というのも従属爵位はあくまで儀礼的な称号にすぎない。よって実際には別にしても法的には貴族院議員の資格を持たないことから貴族としては扱われないのである。結局議論はふりだしに戻ってしまった。
 現実問題として考えれば、貴族の役目である議員としての議会への参加を倫敦華撃団の団員としての活動で代替しているとすれば納得しやすい話になる。

法定推定相続人としてのアーサー

 倫敦華撃団の団員としては貴族であっても、貴族院議員としての資格は持たずに政治と無関係に公演や敵との戦いに専念する。それが倫敦華撃団の在り方なのかもしれない。

 しかしそんな中にも例外は存在する。彼らの中で父親が既に貴族である場合、その爵位を相続する場合は貴族院議員としての資格もついてくることになる。
 そして倫敦華撃団のなかでアーサーは伯爵家の生まれとあるように、少なくとも彼の父は確実にイギリスの貴族で議員資格を持っている。と考えればアーサーが将来的に貴族院議員のとなることは確約されているわけである。ひょっとすれば将来的には大臣や首相になることだってあるかもしれない。
 もちろんその資格と一緒に相続税や領地管理やら使用人の世話やらいろいろな苦労も一緒にやってくることはあるのだが、それはまだはるか先のことになる…はずだ。

 ところで話は少しそれるが、アーサーは女性に苦手意識を持っているという話がある。実際作中でもファンの女性に追いかけられることもあり、人気の高さと気苦労の多さをうかがわせるシーンがあった。
 しかし原因はそれだけだろうか?なにせ彼は歴史ある伯爵家の跡取りであろうし、倫敦華撃団の団長として人気も十分、さらに華撃団の指揮経験でリーダーシップの強さも折り紙付きである。将来政界に進出すれば一国のリーダーとしてのかじ取りを担う可能性だって大いにあるだろう。
 そしてそういうところに周囲の貴族だって当然目をつけてくる。もし娘がいるなら、彼と結婚でもできれば一族の将来は安泰、しかも格の高い貴族家との結婚で自分の家の格まで上がることだろう。と考えれば社交界でも彼が女性から引っ張りだこな上に、貴族たちからも娘との結婚を勧められたりされていそうなのは簡単に想像できる話だ。
 ちなみに近代でも貴族との結婚は重要な意味を持っている。貴族ではないジェントリや富裕層からは一族の格を上げるために貴族との結婚を望んだ者も多い。彼らのように結婚によって貴族に近づこうとしたり、貴族になろうとする者も結構いたのだった。
 とまぁ、その辺のことを考えれば昼間はファンの女性から、夜の社交界では貴族や富裕層のご令嬢から追い掛け回されていそうなのがアーサーという人なのである。そりゃ女性だって苦手になるだろう。ひょっとすると彼は意外と苦労人なのかもしれない。

 さて今回はイギリス貴族と政治について軽く触れつつ、倫敦華撃団について考えてきた。イギリス貴族として彼らがどのように活動しているのか?そこに関してはこれからの作品展開で触れられることがあることを祈りたいところだ。


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