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HamCup学園 丸腸はな

【丸腸はなのサイドストーリー】

「お嬢、お時間よろしいでしょうか」

放課後、丸腸が校舎裏に呼び出されたのは、予想外の再会だった。幼稚園時代からの子分、ござ、アイス、しゅん、ヒーロー。4人は変わらぬ忠誠心を胸に、今も丸腸の前に立っていた。

「お前ら、なんでここに...」動揺を隠せない丸腸に、子分たちは頭を下げる。
「お嬢を守るのが俺たちの務めですから」
「お嬢のためなら、どんなことでもします!」

その言葉に、丸腸の脳裏に、あの日の記憶がよみがえる。


丸腸とジュニア、ござたちの出会いは、ら太幼稚園の虎組にまで遡る。

「お前、丸腸っていうのか。なかなかいい顔してるじゃねえか」
「俺の彼女になってくれよ!」
「ざけんな!丸腸ちゃんは俺の彼女だ!」
「どういうつもりだ、このやろう!」

ござ、アイス、しゅん、ヒーローの4人は、転入してきたばかりの丸腸に一目惚れした。あまりの美貌に、我を忘れて丸腸に言い寄るござたち。だが、言い寄るというよりは、どちらかというと言い争う様相を呈していた。

「お前なんかに、丸腸ちゃんはもったいない!」
「ああ?お前のような奴に任せられるか!」

言い争いは、やがて殴り合いの喧嘩に発展する。4人は我先にと丸腸の彼氏の座を争った。

そんな修羅場に、丸腸が乱入する。
「うるさいわね。あんたたち、何やってんの?」

鋭い眼光を放つ丸腸に、ござたちは我に返る。
「あ、あのさ、丸腸ちゃん...」
「俺たち、君の彼氏になりたいんだ!」

すると丸腸は、不敵な笑みを浮かべた。
「ふーん、彼氏ね。でもね...」

次の瞬間、丸腸の拳が、ござ、アイス、しゅん、ヒーローたちの腹部に突き刺さる。
「うぐっ!」
「な、なんだこれは...!」

わずか数秒で、4人は地面に屈してしまった。丸腸の腹パンは、ござたちの想像を遥かに超える威力だったのだ。

「私は、自分より弱いやつとは付き合わないのよ」
そう言い放ち、丸腸は颯爽と立ち去っていった。

あまりの衝撃に、ござたちは茫然自失。だが、その瞬間から、彼らの運命は大きく動き出していた。
「かっ、カッコいい...!」
「あんな強い女の子、見たことない...!」

丸腸への恋心は、いつしか尊敬と憧れの念へと変わっていく。4人は誓ったのだ。
「俺たち、丸腸ちゃんについていこう!」
「ああ、彼女のために、もっと強くなるんだ!」

こうして、丸腸と子分たちの絆が芽生えたのだった。



あの日から、ござたちは丸腸を「お嬢」と呼び、忠誠を誓うようになった。
その言葉に、丸腸は胸が熱くなるのを感じた。だが、HamCupのメンバーには、自分の家がヤクザの名門という素性を隠しているのだ。
「わかったわかった。でも、学校では目立たないようにしてよね」
そう言って子分たちを諭し、丸腸は慌ただしく立ち去った。

自宅に戻った丸腸を出迎えたのは、いつものようにジュニアだった。ジュニアと丸腸は生まれた時からの付き合いである。授乳期から丸腸と共に過ごすジュニアを、ござたちはと親しみを込めてアニキと呼ぶようになった。

「お嬢、お帰りなさいませ」
そう言って丸腸の制服を畳むジュニアに、ござが声をかける。
「ジュニアのアニキ、HamCupオークションの準備で、お嬢を支える俺たちの活躍ぶりを見せてやろうぜ!」

「お嬢のためなら、俺たちは何だってするんだ!」とアイスも続ける。

ジュニアは困ったように微笑む。
「皆様の忠誠心は嬉しいですが、お嬢のお勉強の邪魔にならないよう、ほどほどに...」

「バカ言うなジュニキ!」としゅんが割って入る。「勉強だけじゃ、お嬢は一家を継げないぜ?」

「そうだ!実践経験も必要だろ?」とヒーローも同調する。

子分たちの言い分に、ジュニアはため息をつく。
「まったく...お嬢の前では争わないでください」
そう諭しつつも、ジュニアはござたちの熱意に心を動かされていた。

オークションの準備に追われる丸腸。そんな丸腸を陰ながら支えようと、ござたちとジュニアは秘密の作戦会議を開いていた。
「お嬢に気づかれないよう、そっと手助けするのが俺たちの役目だ!」とござが力説する。
「だが、バレたらお嬢の怒りを買うぞ...」とジュニアは懸念を示す。
「大丈夫だって!」とアイスは自信満々だ。「俺たちなら上手くやれるさ!」

そうして始まった、ござたちとジュニアの秘密作戦。
まずはしゅんが、オークションに出品する絵を描こうとする。
「お嬢が喜ぶ最高の一枚を...」
だが、出来上がった絵はシュルレアリスム風の抽象画。
「こんなの出品したら、オークションが台無しだ!」
後ろから現れた丸腸に、しゅんは腹パンを食らってしまう。

次はヒーローが、出品アイテムを集めると意気込む。
「俺の営業トークなら、みんなの心をつかめるはず!」
しかし、集めてきたのは怪しげなガラクタの数々。
「こんなもの、オークションに出せるわけないでしょ!」
ヒーローも、丸腸の腹パンを免れない。

ござとアイスは、オークションの宣伝をしようと、SNSを駆使する。
「お嬢、俺たちのITスキルで、オークションを大々的に宣伝してやるぜ!」
だが、投稿した内容は、丸腸の恥ずかしい幼少期の写真の数々。
「バカ野郎!何勝手に私の写真をさらしてんのよ!」
ござとアイスも、容赦ない腹パンを受ける羽目に。

そして最後に、ジュニアがオークション会場の設営を試みる。
「お嬢のために、完璧な会場を...」
だが、凝りすぎた装飾は会場を窮屈な雰囲気にしてしまう。
「ジュニキ、あなたまで...!」
ジュニアも、丸腸の怒りの腹パンを食らってしまうのだった。

そんな光景を目撃したのは、ほかならぬほんてぃだった。
「ちょっと丸腸、なんで設営を手伝ってくれてる人に暴力振るってるの!?」

慌てて言い訳する丸腸に、ござたちが割って入る。
「いえ、これは腹パンではなく、お嬢様の愛情表現なのです!」とござが真剣な眼差しで説明する。

「そうなんです!お嬢に腹パン罵倒されるのは、俺たちにとって最高の御褒美なんですよ!」とアイスも続ける。

ほんてぃは、子分たちの言葉に首を傾げる。
「ちょっと待って。そもそもなんで君たちは丸腸のことを『お嬢』なんて呼んでるの?」

「それは...」と言いかけたござに、丸腸が慌てて口をはさむ。
「な、何でもないの!私たちの間のちょっとした冗談なのよ!」

ほんてぃは納得がいかない様子だったが、追及するのは控えることにした。
「まあいいけど...それにしても、愛情表現だの御褒美だの、よくわからないけど...よし!本当にそうなら、俺にもしてみろよ!」

そう言って、ほんてぃは丸腸に腹パンを要求する。丸腸は戸惑いつつも、観念したようにほんてぃの腹に拳を叩き込んだ。

「うぐっ!」
予想外の痛みに、ほんてぃは膝をつく。丸腸の腹パンは、子分たちが受け止めているものとは比べ物にならない威力だったのだ。

「ほ、本当に御褒美なのか、これは...」
苦悶の表情を浮かべるほんてぃを見て、ござ、たちは羨ましそうに言う。
「いいなぁ、ほんてぃは...お嬢様に特別な愛情を注がれて...」

ほんてぃは呆然としつつも、なんとなく状況を飲み込んだようだった。
「丸腸、君も大変だね...こんな変わった人たちに絡まれて...」
苦笑しながら呟くほんてぃに、丸腸はため息をつくのだった。

「ったく、お前らのせいでいろいろ勘違いされちゃったじゃん...」

「もういい!私一人でやる!」
怒りに任せて子分たちとジュニアを追い払う丸腸。だが、彼らの必死の姿を思い出し、ため息をつく。
「あいつら、私のことを思ってくれてたのね...」

結局、丸腸は子分たちとジュニアを呼び戻し、みんなで力を合わせてオークションの準備を進めることに。
「お前らの気持ちは嬉しいけど、次からは言ってよね?」
「お嬢、すみません...でも、俺たちお嬢の役に立ちたいんです!」
「ふふ、ありがとう。でも、もう勝手なことはしないでね?」

こうして、丸腸と子分たち、ジュニアの絆は、さらに深まっていくのだった。

オークション当日、会場は活気に溢れていた。丸腸とHamCupメンバーは、最後の準備に追われる。
そこに、燕尾服姿のござたちが現れた。
「お嬢、俺たちも微力ながらお手伝いさせていただきます!」

ござはオークションの司会を務め、抜群の話術で会場を盛り上げる。
アイスは、即興のベース演奏で雰囲気を演出。
シュンは、出品作品の魅力を引き出すディスプレイを手がける。
ヒーローは、次々と客を呼び込み、会場を大いににぎわせた。

一方、裏方ではジュニアが大活躍。
「お嬢に色々と気を遣わせないよう、細部まで完璧に...」
そう呟きながら、ジュニアは会場の隅々まで目を光らせる。

そんなジュニアの姿を見た子分たちは、感嘆の声を上げる。
「さすがジュニキ!お嬢想いの仕事ぶりは、俺たちの目標だ!」

ジュニアはそっと微笑んだ。
「お嬢のためなら、私も皆様も、全力を尽くすのみです」

オークションは大成功を収め、HamCupのメンバーたちは歓喜に沸く。ござたちも我が事のように喜ぶ。
「お嬢、おめでとうございます!」

そんな子分たちの姿に、ジュニアは頷く。
「皆様のおかげで、お嬢も幸せそうですね」

だが、その陰で丸腸の心に不安が募っていた。
「このままじゃ、いつかバレちゃうかも...」

その不安は、現実のものとなる。
オークション後、SNSに一つの書き込みが現れた。
「丸腸って、ヤクザの跡取り娘らしいぜ」
「マジか!HamCupは、そんな奴に支えられてたのかよ」

噂は瞬く間に広がり、HamCupへの中傷が相次ぐ。
丸腸は、言葉を失っていた。
「どうしよう...このままじゃ、HamCupにも迷惑がかかる...」

孤独と不安に押しつぶされそうになる丸腸。
だが、一人で抱え込むことはできない。
思い切って、ほんてぃに相談することにした。

「ほんてぃ...私、話があるの」

ほんてぃは、真剣な面持ちで丸腸の話に耳を傾ける。
丸腸は涙を浮かべながら、全てを打ち明けた。
「私、本当はヤクザの跡取り娘なの...でも、HamCupのみんなと一緒にいたい...」

ほんてぃは、丸腸の肩に優しく手を置く。
「丸腸、君は君のままでいい。君の家がどうだろうと、君は僕らの大切な仲間だ」

その言葉に、丸腸は救われる思いだった。
ほんてぃの優しさと強さに、心が震える。
「ほんてぃ...ありがとう...」

その瞬間、丸腸は気づいてしまった。
ほんてぃへの、友情とは違う感情に。
「私、ほんてぃのことが...」

だが、その想いを口にすることはできない。
自分はヤクザの娘。
表舞台で活躍するほんてぃの足を引っ張ってはいけない。

丸腸は、胸の奥にその想いをしまい込んだ。
ほんてぃへの恋心は、誰にも告げられない秘密。
それでも、ほんてぃの言葉に救われたことに変わりはない。

「ほんてぃ、私...HamCupを続けたいの」
「そうだね。君はHamCupになくてはならない存在だ」

そう言って、ほんてぃは丸腸に微笑みかける。
その笑顔に、丸腸は新たな決意を得るのだった。

真実を知ったHamCupメンバーも、変わらぬ笑顔で丸腸を迎え入れる。
「丸腸はいつだって丸腸だよ。俺たちの仲間だ」

丸腸は、仲間たちに支えられていると実感した。
たとえ秘密を抱えていても、前を向いて歩んでいける。

その日の夜

「お父さん、私...HamCupを続けたいの」

丸腸の父、丸腸組の組長オンタムは娘の顔を見つめる。
「お前がそこまで言うなら、認めるしかないだろう。だが、いつかは跡を継ぐんだぞ」

その言葉に、丸腸は涙を浮かべて頷いた。

「お父さん...」

そこへ、丸腸の母ヨメタムが現れる。
「あなた、はなの気持ちを尊重してあげましょう。私たちは、娘の幸せが一番大事なんですから」

オンタムは、妻の言葉に耳を傾ける。
「わかった。はな、お前の決意は伝わったよ。HamCupでの活動、存分にやれ」

丸腸は、両親に感謝の言葉を伝える。
「お父さん、お母さん、ありがとう。私、がんばるね」

ヨメタムは、娘を優しく抱きしめた。
「はな、あなたなりの道を歩んでいきなさい。私たちは、いつもあなたの味方よ」

家族の絆に包まれて、丸腸は新たな一歩を踏み出すのだった。

HamCupの活動は、新たなステージへ。
メディアの取材が殺到し、一躍時の人となった丸腸。
その活躍ぶりは、両親の胸を打つ。

「あの子、立派になったなぁ」とオンタムは目を細める。
「ええ、はななら、どんな道でもきっと大丈夫よ」とヨメタムも微笑むのだった。

そんなある日、ジュニアが丸腸に告げる。
「お嬢、子分の皆様が、一時的にお嬢の元を離れたいと...」

驚く丸腸。だが、ジュニアは続ける。
「皆様、お嬢のためにもっと強くなりたいのだそうです」

丸腸の目に、決意の炎が宿る。
「わかった。みんなの成長を信じよう」

数年後、再会した子分たちは、見違えるほど逞しくなっていた。

「お嬢、ござです。メタバース構築の第一人者になりました。お嬢のために、最高のメタバース空間を創ってみせます!」

「お嬢、アイスです。シュンと組んで、NFTと音楽を融合させた新しいアートを生み出してます。今じゃ、業界の最先端を行く存在になれました」

「お嬢、ヒーローです。今や世界を股にかける超一流のセールスマンとなりました。お嬢のために、どんな商談もまとめてみせます!」

成長した子分たちの姿に、丸腸は目を丸くする。
「みんな、すごいことになってるじゃない...!」

ジュニアも、感慨深げに頷く。
「皆様、お嬢のためを思って、それぞれの道で頂点を目指されたのですね」

子分たちは、丸腸に力強く告げる。
「お嬢、俺たちはいつでもお嬢の味方です。この力、ぜひお嬢とHamCupのために使わせてください!」

丸腸は、仲間たちに感謝の言葉を贈る。
「みんな、ありがとう。あなたたちの力、借りさせてもらうわ」

こうして、丸腸とござたちは、新たな絆で結ばれるのだった。

HamCupも、ござたちの力を得て、更なる発展を遂げる。
メタバースを活用した革新的なプロモーション。
NFTと音楽の融合によるユニークなコンテンツ。
世界規模に広がるセールスネットワーク。

丸腸を中心とした彼らの活躍は、業界の歴史に大きな足跡を残すことになるのだった。


エピローグ

「お嬢、お帰りなさいませ」

いつものようにジュニアが出迎える。
だが、今日の丸腸の表情は、いつもと違っていた。
「ジュニキ、みんなを集めてくれるかな?」

応接室に集まったのは、子分たちとジュニアだ。
「お嬢、どうされましたか?」

丸腸は、懐かしい思い出を語り始める。
「私が初めて腹パンをした相手って、知ってる?」

ござたちは、顔を見合わせる。
「もしかして、俺たち...?」

丸腸は微笑む。
「そう。あの日、私はあなたたちに、強さの本当の意味を教えてもらったの」

ござたちの目に、涙が浮かぶ。
「お嬢...俺たち、ずっとお嬢についていきます!」

ジュニアも、感慨深げに頷く。
「お嬢、あの日から、ずいぶんとお強くなられました」

丸腸は、仲間たちに感謝の言葉を贈る。
「みんなのおかげよ。これからも、よろしくね」

「「「はい、お嬢様!」」」

丸腸の心の片隅には、ほんてぃへの想いが秘められている。
いつか、この想いを伝えられる日が来るのだろうか。
それでも今は、HamCupのために、仲間たちとともに歩んでいく。

丸腸を囲む、変わらぬ絆。
その絆が、彼女の歩む道を、いつまでも照らし続けるのだった。

おわり

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