待ち・望む 2020.9.5

今日の昼頃に再びあの丘を訪れてみた。

前回と同じように猫太郎に街を案内されたが、今回は一箇所のみだった。それは野球場に併設された大きなグラウンド場だった。近くには川もあった。

猫太郎に飛んでみなよ!と言われた。そんなことが可能なのだろうか。どうやって?と質問すると同時に私の身体がボワーっと何かに包まれた感じがした。

さあっもう飛べるよ!私は飛ぶことができるのだと意図してみた。すると、ふわっと体が浮き上がった。不思議と恐怖感がなかった。まるで夢を見ているような、ほんわかした感覚があった。

うおーーー!私は思いきり飛んでみた。ロケットになったイメージだ。私の体はゴオーーという噴射音を響かせながら、ツバメのように空を自由に飛び回った。楽しいぜー。

それを見ていた猫太郎も一緒に空を飛び始めた。しばらく二人で飛び回っていた。街の遠くの山々まで見渡せた。街を行き交う人々はとても小さく見えた。そして試しに空中で静止してみた。猫太郎も横で止まった。

すごいね、この街は。もうこの世界はどうにかなってしまったんだね。猫太郎はその質問には答えなかった。代わりに、今を楽しむことが大切さ!たまには将来への不安とかを忘れないと。

そっかーそのとおりだね。私は笑顔で猫太郎に答えた。すると、自分の周りの空気が虹色に輝き出した。いま君は空に浮かぶ虹色の雲になっているんだよ。猫太郎はそう教えてくれた。

楽しかった。そう思ってそろそろ地面に降りようと思った時、遠くの空に小さな光が見えた。それはゆっくりと横に動いていた。そして徐々にスピードを上げて上空に消えてしまった。なんだったのだろうか。

地面に降りると急に体が重くなってきた。もう飛べそうにない。今日はありがとう。丘に戻ったときに私は猫太郎にお礼を言った。たまにはこういう日も必要さ!猫太郎は陽気に言った。

この日はついに空を飛んだ。試しに家の近くで飛んでみようと思ったが無理だった。あの街はどうなっているのだろう。私はあまり深く考えないことにした。

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