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酔った勢いで、なんて言えれば楽なのに


私はお酒が飲めない。一滴たりとも飲めない。

「そんなかわいこぶって」
「飲めそうな顔してるのに」
などと言われることもしばしばだ。


放っておいてほしい。

飲めないものは飲めない。
アレルギーなのだから。

もし救急搬送され、その後のことまで
面倒をみてくれるという人だけ
私にお酒をすすめてほしい。
それならば注いでいただいた分だけ飲みましょう。
飲みますとも。




そんなことはさておき、
飲めない私も飲みの場は好きだ。

職場の飲み会、友達との差し飲みだって大歓迎だし、なんなら浮足立って行くこともある。
恋人と飲むお酒は格別最高だ。至福の時間ですらある。

もちろん一緒に飲んでいる私はジュースなのだけれど。


飲めないくせに、なぜ飲み会が好きなのかを考えることがある。

ニンゲンが見えるからだ。
その人の心のうちを少しばかり覗き見している気分になる。

そう言ってしまうと私が下心のある下衆な奴に思えてきてしまうが
要は『少しばかりよそ行きの殻を脱いだあなた』を垣間見れることが好きなのだろう。

・いつもは無口なのにお酒が入ると饒舌になる
・いつもは仕事の話しかしないのにお酒が入るとプライベートの話しをする
・お酒が入るとパーソナルスペースのバグが起こる
・普段は敬語しか話さないのにお酒が入ると砕けた言葉で話かけてくる
・まじめな人なのにお酒が入ると面白いことばかりする
・酔っぱらうと楽しくて楽しくて満面の笑みになる

人はお酒を飲むと普段と違う顔を見せてくれる。


もちろん楽しいことばかりでもない。

・お酒が入ると人が変わったようにケンカ腰になる
・足元がおぼつかず転んでしまう
・飲みすぎて病院のお世話になる

良い一面だけではなく、あまり良くない一面も見せてしまうことがある。

大人になってくると大抵の人はある程度のセーブをかけることができるが
みんながみんなそうあれるわけでもないし、体調や精神面も大きく影響することだってある。
何でも加減が大事だという話しだ。




ずいぶんと前置きが長くなってしまったが、
私はアルコールを飲めないけれど
飲んでいる人を見るのが好きだということが伝わっただろうか。


見るのが好き、
そしておそらく羨ましいのだろう。


終始素面の私には到底マネできないほどに
自分をさらけ出せる機会がある人が。


・酔った勢いで普段上司には言えない愚痴を言った
・酔った勢いで普段は話しかけるのも緊張する相手と仲良くなれた
・酔った勢いで好きな相手に気持ちを伝えてしまった


良いこともそうでないこともあるだろう。

それでもやっぱり少しばかり羨ましいなと思う。


” 酔った勢いで ” なんて、

私には一生訪れることがないのだから。



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