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本のほとり

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本が好き。本を手がかりに広がる随想です。本に触れて考えたこと、思い出したこと。
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#鍵のない夢を見る

【随想】本のほとり#2|辻村深月「君本家の誘拐」

家では「仕事が忙しいから」と言い、職場では「子どもが小さいから」と言う。どっちも中途半端でどこか満たされない。だから、専業主婦の友達に「すごいね〜」などと言われると、嫌味を言われているみたいな気分になった。完全に私の被害妄想だ。 保育園からの呼び出しに内心舌打ちして自己嫌悪。無理させるから完治しない赤ちゃんの下痢に、一生このままなんじゃないか、というくらい落ちて泣きそうになる。母の声が聞きたくなった。 辻村深月の短編小説「君本家の誘拐」は、はじめての子育てに奮闘するママが