真保裕一『暗闇のアリア』
とある官僚が自殺をした。
しかし、妻は違和感を覚え、元刑事(現在は総務課勤務)に調査を依頼する。
調査を進める中、実は巧妙に仕組まれた連続殺人の可能性が浮上して、警察が秘密裏に特命捜査班を立ち上げる。
……というような内容です。
結論から言えば《真相は闇の中》で、犯人逮捕はできませんでした。
犯人の心の闇や傷の深さが、文章を通して伝わってきたように感じました。
うまく言えませんが、この本の最後の部分に書かれていた
【不思議な感慨が、胸の中でわいていた。夫を殺した犯人彼に疑いない。彼は何十人もの命を奪った。その反面、カンボジアやベファレシアで献身的に働き、多くの命を救ってもきたのだ。彼の歩んだ人生のすべてを知ったわけではなかった。重ねた犯行を決して許してはならないとも思っている。けれど、彼への怒りを、なぜなのか感じられずにいるのだった。 戦場で撃てと命じられてやむなく敵を葬った兵士を恨むのは難しい。それと似た感覚なのだろう。彼自身は誰からも命じられたわけではないが、そんなふうに思えてならないのだった。】
という、夫を亡くした妻の心情が、私にもあります。
彼の心の闇が消える日が訪れるのだろうか?
と、つい思ってしまいました。
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