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21/22 選手別講評【MF編】

この記事では「MF編」として選手別講評をしていく。

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8.トニ・クロース

シーズン開幕前に行われたEUROを最後に、ドイツ代表のユニフォームを脱いだ。

「今後数年はマドリーに集中したいと考えている。」と書かれたメッセージ画像を投稿したクロースに、多くのマドリディスタが恋をした。

ゲームコントロール、ファイナルサードへのパス成功率、畜生発言、圧倒的音痴(NEW!)。どれをとっても右に出る者はいない。

カルロは未だに、クロースはアンカーにもなれると思っているのに対し、本人は「僕はカゼミロじゃない」と断言。カルロからすれば、そんなの知るもんかと、今季も何度かクロースをアンカーに置いた。当然、その試合は難色を示した。

それでもあの2人とピッチに立てばゲームは我々のものになることを今季も難なく証明。

現行契約のまま行けば、来季がラストシーズンとなる。彼の現役人生も最終コーナーを過ぎている。

P.S. リヴァプール戦後のインタビューの鋭い返しは何度見ても秀逸。


10.ルカ・モドリッチ

全盛期の後に全盛期が来る男、ルカ・モドリッチ。

36歳だからなんだと言うんだ。当然かの如くフル出場するし、連戦だってトップギアで戦うし、指揮官の横で大はしゃぎだってする。

3連覇した頃から世代交代は謳われてきたが、まだまだ最前線でボールを追いかけ、味方を走らせる達人の域を降りようとしない。

今季からカマヴィンガを味方につけ、いつでもルカたちのポジションの代役を備えていたが、彼の加入が起爆剤となったのか、本格的に26歳説がより濃厚になった。

未だに信じられないのは、昨年、近年のパンデミックにより財政が圧迫したことを受け、クラブの減給要求を呑んだことだ。そんなクラブ思いのバロンドーラーに、クラブは今年も単年での契約延長を発表した。

1年とは言わずに、5年、10年、いや生涯契約を締結してもいいのではないか。

あぁ、彼から10番を譲り受けようとしたフランスの彼はいい度胸をしているではないか。


14.カゼミロ

フランスで優勝を決めた翌日、マドリーの面々全員がカゼミロにとりつかれた。

彼はこのツイートが気にいったのか、プロフィールに固定している。なんて可愛いのだ。

一家に一台ではなく、1チームに1カゼミロと言われているかは知らないが、それほどどのチームも欲しがる生粋のボールハンター。

19/20、20/21シーズンは点取り屋も兼任したと言うならば、今季のカゼミロは「堅実な猟師」とでも言おうか。

ポルトへのレンタル後、七年に渡ってアンカーで覇権を握ってきた彼には無限の知恵豊富な経験がある。時にポジショニングを誤るミスや足の遅さが問題視されるが、それはノーマルカゼミロのレベルの高さ故にそういった弱点が目立つだけだろう。

大の苦手とするリオネル・メッシがスペインから離れた彼にとって今のリーガは敵無しと言っても過言ではない。

マルセロが抜け、ブラジル軍団の最年長になる。来季からは新進気鋭で波に乗るブラズーカの先頭を行く。


15.フェデ・バルベルデ

ベニシオ君(バルベルデの息子)は2歳にして、決戦が終わったファイナルのピッチ上に立った。

かつて、マドリーのエンジンはモドリッチと言われることが多かったが、今はバルベルデがその役割を担っている。

長い足でボールを突き、地面を押し、ボールを運ぶ。彼はどんなに激しい上下動も厭わない

右足を振り抜けばスティーブン・ジェラードが現れる。6-0で大勝したレバンテ戦(第36節)では、3本ものミドルを打ち、全てがクロスバーとポストを叩いた。

カゼミロ、モドリッチ、クロースがビッグイヤーを持ちながら掌を見せて「5」を示す中、バルベルデはあの日の夜から”ビッグイヤー・カウンター”が起動し、今メーターは「1」を指している。

まだ23歳だが、暗黒期を支えたうちの一人。彼からはすでに溢れんばかりのマドリディスモを受け取り、それは監督からの愛されようからも分かる。

次チャンピオンズをとると、みんながフェデ・バルベルデになる。


17.ルーカス・バスケス

数年前、ジダンから右SBコンバートプレイヤーとして推薦された。

ジダン・エフェクトによりそのコンバートは成功を得たものの、カルバハルが不調の時の代役感が否めないままだった。

一方で、カルロは、彼とカルバハルで多すぎる試合数を分け合うような起用を続け、ルーカスは重要なラテラルへと成り上がった。

ルーカスは派手なプレーをするタイプではなく、サポーターからも気づかれにくい地味だが効果的な動きができるタイプだ。それが結果に結びついたのが、今季で言えばアウェイクラシコの決勝ゴールとアウェイオサスナ戦の3点目だろう。

どちらも後半アディショナルタイムでのスプリントからのシュート、そしてゴール。フルタイム出勤なのにもかかわらず、試合終盤にスプリントをかけられるほどの運動量と、糸を出しそうなゴールパフォーマンスは何年も前から変わらない。

P.S. MF登録だった訳はマドリーの七不思議に。


19.ダニ・セバージョス

昨季終了後、彼にとって煙たい人間がチームを離れた。それがジダンだ。ジダンがスペインにいた2年間をロンドンで過ごした彼は、今がチャンスとばかりにスペインへ戻ってきた。

しかし、待ち受けていたのは2021年7月の東京五輪エジプト戦。彼はこの試合で全治2か月の怪我を負い、その後もスペイン代表の練習に参加したことでさらに怪我が悪化。結局、チームに復帰したのは半年後の2022年1月だった。

彼はマドリーに来てから何度も転がっては起き上がる人生を歩んでいる。

怪我からの復帰後、カルロはセバージョスを2~3試合に1回のスローペースで彼を起用した。それも10分も満たないプレー時間で。

しかし、彼の豊富な運動量とひた向きさに、カルロはクローザー適正を見出したのだろうか。チームがCLを勝ち上がっていくにつれて、ほぼ毎試合セバージョスを交代枠のラストピースとして託した。

ウーデゴーアはロンドンに住み着き、セバージョスはマドリードを愛し続けていた。そんな七転八起な人生と性格の彼に、レアル・マドリーでの未来が宿って居ることを期待したい。

P.S.  五輪での負傷後、練習に参加せずリハビリに徹していれば…


22.イスコ

マラガで生まれたファンタジスタ。マドリードに拠点を置く魔術師

彼は決して現代的なフットボールをする選手ではない。だがそれで良かったのだ。マドリーがそもそも時代の流行に則ったクラブではないから。

ロン毛+小太りと、見た目の印象がいかがわしかった昨季からは、わずかながら容姿にも気を遣っていたようにも見えた。

とは言っても、容姿の変化だけでスタメンの座は奪えない。出場試合数はリーガで14試合、CLでは3試合に留まったラストイヤーだった。

ジダンはイスコを中央に置いて0トップを採用したり、名義上右サイドという名のトップ下のような役割を復活させ、試合数を与えていたが、カルロは決まってそういう不規則なことをしない。規則をベースにチーム作りをするカルロはイスコの使い道にも随分と悩んだことだろう。

ただ忘れてはならないのが、彼はCLファイナルを5度経験しており、そのうち今季を除いた4度はピッチに立ったことのあるスター選手だ。彼の偉大な功績にスタンディングオベーションで拍手を送りたい。


25.エドゥアルド・カマヴィンガ

2021年夏頃までフランスで赤いユニフォームを身に纏っていた18歳の少年は1年後、その時と同じ国で欧州王者の称号・ビッグイヤーを掲げていた

エン〇ペ・プロジェクトが難航したことを受け、フロントは豪快なハンドルさばきで目的地をカマヴィンガに変更した。

過去に誰も崩せなかった中盤トリオの後釜に18歳(当時)の少年を抜擢するのは、今となればとてもリスキーな話だが、あの時にリスクどうこうの話をしてる暇なんてなかったのも事実だ。

プレーが荒い・カードを貰うのが早い・無駄なランニングが多い

加入当初は上のような厳しすぎる声がよく飛んでいた気がするが、試合数をこなしていくにつれ効果的なランニングが増え、カードのことを考えるプレーもできるようになった。その落ち着きはベルナベウに相応しい。

そしてカルロは、カマヴィンガ(とバルベルデ)を、ゲームのインテンシティが落ち、ガソリン補充が必要な時の控えとしての起用方法を見出し、ベテラン3人を支えた。

長年解決してこなかった3つの後釜問題のうち、ひとつのピースは彼に決まったと言っていいかもしれない。あとは、彼らと同じピッチに立てる間にどれだけ成長できるかだろう。

やっぱり、ヒーローは遅れてくるのだ。

P.S.  リーガもチャンピオンズも獲ってしまう19歳は普通じゃない(皮肉を込めて)。


つづく


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