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21/22 選手別講評【GK・DF編】

我慢のシーズンと言われていた21/22シーズン。蓋を開けてみれば3つのトロフィーを獲得した。これほどの成績を残したのだから「成功のシーズン」と誇っていいだろう。

ジダンが残していった軌跡と、自身の過去の栄光を繋ぐべくしてスペインに戻ってきたカルロは、いきなりラモスとヴァランを失った。それでもレアル・マドリーを知る男たちによる自信と挑戦は、我々の想像をはるかに上回った。そんな彼らの1年間を3編に分けて振り返る。


この記事では「GK・DF編」として選手別講評をしていく。



1.ティボー・クルトワ

「14番目」をスペイン語の序数でdecimocuarto(デシモクアルタ)というらしい。10番目(デシモ)+4番目(クアルタ)でこう言われてるらしいが、日本人からするとカタカナの羅列はどうも覚えにくい(ことにしておく)ため、私はデシモクルトワでいく(言いたいだけ)。

これまでのラモス・ヴァラン率いる最終ラインには何よりも経験と知恵がそこにはあったが、今季の最終ラインは自信と負けん気で成り立っていたように映る。

  • 中央を崩されても絶妙な距離感で近づくクルトワがいる安心感。

  • サイドを攻められても高さと長さでは負けないクルトワがいる安心感。

  • センターラインの最後尾にクルトワがいる安心感。

「GKが止めてくれるだろう」という禁物な考えでさえも通用してしまう理不尽なGKが我々には居た。

日頃のクルトワへの感謝と彼のビッグイヤーの夢を、ゴールという美形でフィールドプレイヤーが叶えるはずだったが、またあの夜はクルトワに感謝することになってしまった。

P.S. 祝!プロボーズ成功。また守るものが増えました。出会いは奥さんのペット(!?)


13.アンドリー・ルニン

ウクライナ人の彼は、世界情勢的に笑っていられる日が少なかったかもしれない。リーグ優勝を決めた日、欧州王者に輝いた日は少しでも笑ってくれただろうか。クラブは彼と彼の家族を最大限にサポートしていたことだろう。

彼の実力は申し分ない。ただマドリーでは「習うより慣れよ」の場をそう簡単に設けさせてくれない。今後数年はクルトワの独壇場が続くことを考えると、経験を求めに行ってもらいたい。そして数年後、またベルナベウのピッチに立ってもらいたいと願う。

P.S. 彼の母国に一日でも早く平和が訪れることを祈っている。


2.ダニ・カルバハル

この男は分かっている。自分がどこにいればいいのか、どこを守ればいいのか、そしていつ調子を上げればいいのかを。

数年前まで怪我とは無縁で「鉄人」とあだ名をつけられるまでだった彼は、ここ近年レギュラーの座が怪しくなる時期があった。彼は調子の波が比較的大きく、ミスの多さに調子の悪さが出るタイプだ。

しかし、彼はチームのあり方と勝ち方を知っている重鎮の一人。大事なゲームには必ずコンディションを間に合わせる男だ。

一時期は「衰え」をちらつかせたことはあったが、シーズン終盤以降は三連覇時代を彷彿させるレベルにまで復活したと言っていいだろう。

 彼が右サイドバッグを支配する時代はもう少し続きそうだ。

P.S. 奥さんが美人過ぎて羨ましい。


3.エデル・ミリトン

今季の最終ラインは自信と負けん気で成り立っていたように映る。

「負けん気」とは彼のつもりで書いた。

眠りから覚めたような覚醒ぶりでレギュラーを獲得したのはもう昨季の話だ。今季から新たにアラバとタッグを組むことになった。

自慢の身体能力の高さと近寄りがたいフェイスでボールと相手を跳ね返し続け、熟した試合数はリーガとCLだけでも46試合(計51試合のうち)に上る。これはクルトワ、ヴィニに次ぐ数字だ。

来年はここにリュディガーが入る。なかなか最愛なるパートナーが見つからないという見方もできるが、「個」という言葉がよく使われるマドリーで「個」としての能力をもっと高めてもらいたい。

P.S. 強面コンビを早朝から見るのには勇気が必要になりそう(震)。


4.ダビド・アラバ

「負けん気」のもう一方が彼だ。いい意味で背番号4の重みを感じすぎていないのか、加入一年目からチームの番長となった。

まんまるでくりっくりな目をした可愛げのある顔は、ハンサムなミリトンの心を鷲掴みにしたのだろうか。ミリトンとのコンビは想像以上に息が合い、ほっとしたファンも多いだろう。

初のクラシコで先制点をもぎ取り、初のラリーガ挑戦でトロフィーを掲げ、3度目のビッグイヤー獲得を決めた。さらにはファンの層を「白い椅子」という世界中どこにでもあるオブジェ界にまで広げていった。

アラバとマドリードの地で再会を果たしたカルロは、彼をCBとして起用し続けたが、数回ほどラテラルに回した。サイドに回ってもその精度は絶品。実際に第13節ラージョ戦ではピンポイントクロスをベンゼマまで通した。

長年を過ごしたバイエルンを離れ、マドリーにやってきた彼がフリー移籍だったというと誰もが羨ましがるだろう。リュディガーが来るにしても彼の左足と明るい性格には来季も頼りたいものだ。


5.ヘスス・バジェホ

グラナダから戻ってきた彼は、ヴァランの背番号を受け継いだ。

ラモス・ヴァランの牙城を崩せずにグラナダへ飛んだ彼は、今年もベンチを温める日々が続いた。

そんな彼は4月のエスパニョール戦でDFリーダーを任された。実はその試合が初のスタメンでいきなりのこと。アラバが前節のシティ戦で負傷、ナチョとミリトンが累積で出場停止になっており、カゼミロと即興コンビを組むことになったのだ。

マドリーはその試合でリーグ制覇を決め、バジェホは記念すべき試合の11人に選ばれたわけだ。それ以降、彼は消化試合ゆえに、スタメンをもらえるようになり(カルロの優しさだぞ)、ダービー(笑)も最終ラインを守った。

来季もマドリーにいるかどうか定かではないうちの一人だ。

P.S. チームの中では意外にもいじられキャラであることが極東マドリディスタ達にばれてしまいましたよ。


6.ナチョ・フェルナンデス

ラモスがいなくてもナチョがいる。ヴァランがいなくてもナチョがいる。カルバハルがいなくてもナチョがいる。

そして、今季はアラバがいなくてもナチョがいた

トップチームデビュー以降、リーグ戦では自身最多タイの出場試合数(28試合)を記録し、CLでは計13試合のうち9試合も守った。

彼無しではチャンピオンズのタイトルはなかっただろう。「縁の下の力持ち」という言葉は彼のためのものだ。

決勝こそ控えに回ったが、シティ・チェルシー・パリと、優勝候補全ての試合でハイパフォーマンスを繰り返し、「ナチョ(弘法)役職(筆)を選ばず」ということわざもできた(勝手に作った)。

彼は間違いなくワンクラブマンとしての真の立役者。契約延長の話も上がっている。うれしい限りだ。



12.マルセロ

マドリーで15年以上の月日を過ごした我がキャプテン。彼には、セビージャとのクラブ間合意を破り、意思を持ってマドリーに加入した経緯がある。

彼について語りたいことはたくさんあるが、ここでは今季を振り返る。

彼のマドリーでのラストゲームは最終節のベティス戦だった。70分から途中投入となった彼は、すべての思いを左足に乗せてるかのような落ち着きだった。キャプテンから副キャプテン(ベンゼマ)へのラブリークロスは惜しくも実を結ばなかったが、副キャプテンのエースは、彼をお膳立てしようと20分間必死だったことだろう。

ラモスの歯痒い退団を機に、「マルセロこそは」と願うサポーターも少なくなかった。彼がマドリーにもたらしてくれたタイトルは25個。最後の2個はラリーガとチャンピオンズリーグのものになった。

マドリーからまた一人レジェンドが去っていく。15年半続いたブラジリアンストーリーが美しい引き際でもって終焉を迎えた。これこそまさに"立つ鳥跡を濁さず"。



23.フェルラン・メンディ

彼がディフェンシブサードでボールを持つとヒヤヒヤしてしまうのは私だけだろうか。だが彼は我々が思ってる以上に身体能力が高く、しっかりピッチを見ているのかもしれない(馬鹿にしているわけではない)。

加入一年目でラリーガ制覇を経験し、早くも3シーズン目が終わった。今季は陸上選手に多いとされる怪我を患い、悩まされる一年になった。

近年のマドリーで世代交代がもっとも潤滑に進んだのがこのポジションであり、そんな中ビッグイヤーを掲げられたのは出来すぎた話だろう。

来季はリュディガーの加入により、早めのポジション争いが始まるかもしれない。個人的にはもう五段階ほど攻撃力増し増しで戦って欲しいと思っているが果たして。

P.S. 笑うと目立つ白い歯が好き(急な告白)


つづく


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