またね
美容学校を卒業した。国試はとりあえず終わった。無事かは分からない。3/29に合否が出るけれど、そこで合格じゃなかったら4月から無職だ。このシステムはちょっとリスキーすぎるけれどかなり刺激的だなとも思う。
2年間、すごくあっという間で、呆気なかった。筆記試験のためにみんなで毎日6回過去問を解いては間違えたところを添削して、飽きて、ツムツムを始めた最後の1ヶ月が1番青春だなと思っていた。そこまで話さなかった子、ざらにいる。私はツムツムで最強と言われているシンデレラの使い手だったからみんなから「ツムツムするな」と言われていたがツムツムをし続けた。高校を卒業したら就職しなと言われていたけれど、どうしても美容学校に通いたくて、毎日家に大量の資料が届くように片っ端から資料請求をした人間の折れなさを舐めないでほしい。
そういう話が出来るまでは仲良くなれなかったな。それでも卒業式会場で言う「またね」は、本当の「またね」にしたいなと思った。
卒業式の袴を着付けして、髪を綺麗にしてくれたのは祖母の知り合いのおばあちゃん美容師さんだった。成人式の時も着付けをしてくれた人だ。
インスタで出てくるような美容室では全くない、昔ながらの美容室。着付けしてもらうのは私だけで、美容師さん、祖母、姉と私の4人だけの空間。大きすぎる声で雑談をしながら準備した。「腰がもうだめで」「歩けなくなるのは嫌だから山に行ってたのに、山に行けなくなっちゃった」なんて言いながら一生懸命結んでくれた髪は、私の見せた参考画像とはかなり違った。だけどすごくかわいくて。「かわいい、ありがとう」っていえば美容師さんは私なんかより数倍可愛い顔で笑ってくれた。
美容室の玄関で写真を撮って、「またね」って言うときも、本当の「またね」にしたいなと思った。美容師さんも、「またね、絶対また会おうね」って、人生を重ねた手で私の手を握ってくれた。今から卒業式なのに、その前に泣きそうになってしまった。髪が解けたら使ってね、と渡されたヘアピンはなんだかお守りのように思えて、神社で買ったお守りと一緒にカバンに入れた。
引っ越すために自分の部屋をひっくり返して片付けてみると、何年も前に貰ったTwitterで繋がっていた人からのメッセージカードが沢山出てきた。誰のことも忘れていない。でももう、連絡を取る方法がわからない人ばかりだった。この人達とも別れるときには「またね」と言っていたのだろうけど、きっともう果たせないものになってしまっている。だから余計に最近言った「またね」が重い。もう会えない人は多くなっていくばかり。会いたくなければいいのだけれど、「またね」なんて言う人は会いたいに決まっているよ。
担任からクラスLINEで送られてきた「元気でね」は、「またね」よりも果たしやすい約束だった。だけど、「またね」よりももう会えないような気がした。私は誰にだってまた会いたい、THE YELLOW MONKEYのJAMのごとく、会いたくて、会いたくて、会いたくて、会いたくて、会いたくて。
いつ、「また会えたね」と言えるのか分からない、その不安が春らしかった。
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