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大好きだったバラのこと

我が家にはバラの木があった。20年近くもの間、毎年春と秋にたくさんの花を咲かせてくれた。

私は元々草木に全く興味がなく、母が玄関の花を植え替えても全然気付かなかった。「見てないの?」と言われて見に行ってみても、その前にどんな花が植えてあったかも思い出せないくらい。結婚して庭のある家に暮らしても、花を植えたいと思ったことはなかった。心が荒んでいたのかもしれない。

そんな私がバラに興味を持ったのは、職場の先輩のおかげだった。私の母くらいの年齢のその先輩は、自然が好きで山歩きをしたり、庭仕事をするのが好きな人だった。ある日、昼休みに歩いていけるバラ園に誘われた。バラ園には沢山の種類の色とりどりのバラが綺麗に咲いていた。品種によって花の形や香りも異なるバラをとても綺麗だと感じた。それから、バラを育てるための本を買って庭に植えるならどんなバラがいいか想像するようになった。それでも、私が好きだと思える色や形のバラの苗木をどこで買うのがいいのかわからずーその時はまだインターネットが今ほど身近な存在ではなかったーそれから数年が過ぎた。

出産のために退職し、インターネットでいろいろな買い物をするようになったある日、ふとバラの苗木もネットで買えるのでは?と検索すると、すぐに見つかった。どんな花が咲くかの写真もあって選び易く、土も一緒に買うことができた。いつかバラを植えたいと思ってから2年近く経って漸くオレンジがかったピンクのバラを植えたのだった。

ものぐさな私は殆ど世話をしなかったのに、バラはいつもとても綺麗に咲いた。見知らぬ人からも「どんな手入れをしているんですか?」と聞かれることもあるほどだった。

それが、去年の春の花が終わった頃、急に枯れてしまった。

何か嫌な知らせみたいな気がして、暫くの間ドキドキしながら過ごしたけど、結局悪い知らせはどこからもなかった。

バラの木はすっかり枯れたのに、すぐそばに植えてある別の木は元気。一体バラに何が起こったのかわからないまま、もしかしたら木が復活するかもと、水をやってみたけど復活することはなかった。

ネットで「カミキリムシの可能性」という記事があり、思い出した。いつだったか忘れてしまったけど、バラの木にカミキリムシを見つけたことがあった。その時の私は、そのカミキリムシを平和に見守ってしまっていた。

ネットの記事は更に、木を切って幹に穴が空いていたらそれでカミキリムシの仕業が確定するとの事で写真もあった。

休みの日にすっかり枯れた薔薇の木をノコギリで切ってみると、ネットで見た写真と同じように、幹の真ん中に穴が空いていた。

カミキリムシをやっつけなかった自分の責任で、我が家の殺風景な庭を精一杯彩ってくれていたバラを失う事になるなんて。。それから数ヶ月、バラが咲いていた場所を見るたびに家の守り神を失ったような気がして辛かったけど、それから私の中で様々な変化もあった。更年期症状で不安定になったり、子どもが進学で家を離れたりなど。その時々で自分に向き合い、元気に過ごすために出来ることをやるようにした。筋トレしたり、山に登ったり、アロマの教室に行ったり、レイキを習ったり。

先日、たまたま行ったホームセンターでバラの木を見つけて手に取った。また同じ場所にバラを植えようかという気持ちになっている自分に気がついた。