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凛々しい顔して「ノープランです!」と言ってきた中年社員との面談で、ボクは失神しそうになった。

我が部署に40歳の社員、鈴木君(仮名)が転籍してきた。

彼が元々勤めていた我が社のグループ会社は、長年赤字続きで、ついに会社まるごと他社へ売却されることになった。働いていた社員たちは、社全体の「ノンリストラ制度」なるありがたい?制度により身分は保障され、基本的に本人の希望に沿った別グループ会社への転籍が行われる。
これにより流れてくる社員の受け皿となる部署側からすると予算も計画も大修正をいいられることになるが、もはやこればかりは組織人として受け入れざるをえない。

そしてなんと今回。

どうやら我が部署に悪魔の「ロシアンルーレット」が命中したらしく、鈴木君は自身が築きあげてきたキャリアをぶん投げ捨てて、まったく異業種なる我が部署を希望してやってくる悲劇が起きてしまったのだ。

転籍してきた初日

会議室に彼を呼んだ。
この手の初日オリエンテーションは変な空気になることは経験則でわかっている。良い話にはならない。ぜったいに。
相手は、キャリアをぶん投げ捨てて、出世する野望も丸投げした中年社員だから。

あ。ちょ待てよ。

ボクは予防線を張ることにした。
昨今、どうやら“ボクら”の選んだ我が県知事が全国的に有名になっているようで、そのたぐいの話題で今は騒がしき状況。

この流れや風潮で少しの言葉違い、受け取り側の印象の違いで「二人っきりの場で圧力を受けた」「パワハラだ」はたまた「会議室のドアを開けさせられた」「初日挨拶で菓子折りを要求されそうだった」

なんて言われることだけは避けたい。
ぜったいに。

いまの県知事の問題については、
ニュースを見ていないダメ男のボクは詳細を知らないからコメントはできないけれども、“一般的には”パワハラは訴えた側・被害者の強さという力は確実に存在し、 訴えられた側は確実に無罪を立証できるまで一方的に追いつめられていくものだ。

まったくハラスメントでなくとも。

そう、痴漢の冤罪えんざいのごとく。
だからまずは、そのような状況を避けることが得策だと判断し、 ボクは次席のマネージャーに話し合いの場に同席するよううながし、そしてきっちりと議事録をとらせることにした。

案の定、話は弾まなかった。

「答えられる範囲で教えてほしいのだけれども、どのようなキャリアプランを思い描いてココを希望したのかな?」

一瞬の間があった。

鈴木君は少し考えて、困ったような顔で答えた。

「それはノープランです」

うっ…は!?

採用面接なら一発アウトなるフレーズを彼は堂々と、躊躇せずに発した。

いやいや、そんなことはありえない。
定年まで少なくとも20年余りの年月があるのに、ノープランで新天地に希望だすなんてさすがに無謀すぎる。

待て待て待て……
そうか。

面談を進めるうちに、
次第にボクは、鈴木君は天才なのではないかと思い始めていた。天才は規格外、時に一般人の理解を超えてしまうこともある。

40歳から全くの新しい職場で、諸々もろもろの人たちにお世話になるのであれば、普通の人間なら人の目を気にして目標を語ったり、仕事したい“フリ”を装ったりするもの。
実際、凡人非モテのボクは欲しいものがあって妻におねだりしたいときは、必要以上にエネルギッシュに家事をやったり、仕事の大変さを熱々と語ってアピールしてきたものだ。

そういうことをせずに悪気わるぎなくノープランを主張してきたスズキッスは凡人の理解を超えた天才なのではないだろうか、と。

そうだ。

一般的にプランやアイディアというものは表に出した時点で陳腐になり模倣される。
だからスズキッスはそれを避けるためにボクの前で表面的にノープランを装っているだけであろう。

そうやって何としてでも自分を納得させたかったボクは、
その後も様々な質問を絞りだし、スズキッスに必死に食い下がった。

が、
いつまでたっても納得の回答がえられない。

最後の最後に出てきた言葉は、
「私は風を起こします」
というキメ台詞ぜりふだった。

ボクは失神するかと思った。

明日、無謀にも丹後100kmウルトラマラソンに出走します。

ハッキリ言う。
凛々しいドヤ顔で。

「今回はノープランである」

たったいまボクのnoteを愛読してくれている変態読者さんですら、
「100kmもの距離を走るのに、 ノープランで挑むなんてただのアホな中年ではないか。」
と、思ったかもしれない。

いや、待てよ。

ゆづおは表面的にはノープランを装っているだけだ、
プランやアイディアというものは表に出した時点で陳腐になり模倣される。だからこのオープンなSNSの場でそれを避けるために表面的にはノープランを装っているだけだ、と勘ぐったかもしれない。

ありがとう。

でも違う。
ただただ、
ノープランなだけである。

真っツルツルの
超シンプルまでにノープランなのだ。

というのも素直に、今回はウルトラマラソンのスタートに立つには失礼な練習量なのだ。
通常月間200kmの練習を必要とされるところをボクは今年はたったの100km/月平均。

もはや参加すること自体が大ギャグの状況。つまるところプランなんて大層なことを語る資格がない、というシンプルな理由なのだ。

でもでも…
インスタのリール動画でも表現させて頂いたが、ボクら家族には丹後に積み重ねてきた10年の歴史があるから。子どもたちが楽しみにしているから。

だから今年も…
家族の待つゴールを目指して。
いまの最善を尽くす。

45歳のキモオッサンオーラだけは失わすことなく全開で。

※インスタでもしもコメントしていただく際は、妻にnoteの身バレを防ぐべく「パパ」呼びでお願いします笑


最後におまいらに言っておく。

「風を起こします」

キリッ!



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