「なぜ現金を贈り物にしてはいけないのか?」 お金と幸福について

早めの夏休みをとり、船旅をしていた。

大型船で感動していたら、船で出会った船好きいわく「こんなのは小型船です。」ふだん船で旅行をしない私からすれば十分大きいが、人間は何でも慣れてしまうので、船好きから見れば小さいのだろう。

旅行中に数十冊の本を読んだ中で、一番面白かったのは大澤真幸著の「<問い>の読書術」だった。本の達人によるオススメ本の紹介で、本のセレクトショップだ。

その選ばれた本のなかで一番面白かったのが、マイケル・サンデルによる「それをお金で買いますか 市場主義の限界」だった。現在社会はあらゆるものが購入可能な市場社会になり、モラルが低下していると警鐘を鳴らしている本だ。

たとえばある幼稚園では、子供の迎えに遅刻する親に困り、罰金を取ることにした。そうすると遅刻への罪悪感が減り、かえって遅刻が増えてしまったという。

他にも様々な例が出されるのだけど、「市場はなぜ道徳を締め出すのか?」という問いをこの本は与えてくれる。

結論を言うと、お金は本来、目的を叶えるための手段に過ぎず、手段は目的よりも価値が低いため、お金に変換できるようにした時点で価値が低くなるからだ。「ああこれ買えるのか」と思われた時点で価値が低くなって対応が雑になる。

「いや、そんなことはない。お金は誰だって欲しい大切なモノだ」と思うかもしれないが、じゃあなぜ現金を贈り物にしてはいけないのか?目上の人や大切な人への贈り物に、現金を贈るのははばかられる。

それはどこか、お金は価値の低いものだと直感しているからではないか。最近ではギフトカードや商品券など、お金に準じたプレゼントも多く、市場主義が徐々に浸透しているけれど、それでも現金を贈るのは失礼と感じる。

「人を手段として用いてはいけない」というのはカントの定言命法(とにかくそうしとけ)だが、「手段と目的を混同してはいけない」とはよく言われる。しかしお金については、ついついそれが単なる手段であることを忘れがちだ。

「お金で買えるものに、お金をつぎ込んではいけない」という教訓と、お金で買える幸福の限界、ということをこの本は示している。
それにつけても金の欲しさよ。


あとお金に関連して幸福についての本も多く読んだけど興味ある方のみで。

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