【IoT絵本原作】悲しい冷蔵庫
「ケンちゃんだめ、食べすぎだよ。扉をロックします」
そう冷蔵庫は言いました。
「開けてよ、開けてよ、すぐきが食べたいよ」
とケンちゃんは泣きながら、冷蔵庫の扉を開こうとしています。
「あらあら、またシズカちゃんとケンカしてるの」
とママがやってきました。
冷蔵庫の名前はシズカちゃん。キャッチコピーは「もう一人のママ」で、ケンちゃんが生まれた時にやってきました。
人工知能で家族にあわせたごはんの献立を考え、ネットで注文して料理と盛り付けまでやってくれます。
ケンちゃん「シズカがいじわるするんだ」
ママ「シズカはあなたのためを思ってやってるのよ」
ケンちゃん「ウソだ、だって僕はいま泣いているじゃないか。もっと楽しませてくれる冷蔵庫がいい。シズカなんていらない!」
そう言ってケンちゃんは二階にあがっていきました。
「…」シズカはだまっていました。
翌日、ケンちゃんが1階に降りると、見た事がないピカピカの冷蔵庫が置いてありました。
「あなたは誰?」とケンちゃんが聞くと、冷蔵庫はこう答えました。
「こんにちは。僕はキンちゃん。歌って踊れる最新の冷蔵庫さ」
呆然としているケンちゃんに、ママがいいました。
「あなたが欲しかった、楽しい冷蔵庫よ。ひな壇芸人をベースにした人工知能だから、会話も楽しめるわ。良かったわね、ケンちゃん」
「あれ?ケンちゃん…」とママが言ったころには、もうケンちゃんの姿はありませんでした。
ケンちゃんは家中をさがしたあとに、外に飛び出しました。そこにはコンセントを抜かれたシズカちゃんがいて、廃品回収のシールが貼られていました。「シズカちゃん!」
「…ケンちゃん」シズカにはバッテリーがまだ少し残っていました。
「あと少しで私の意識はなくなります。さようなら、ケンちゃん。あなたが大きくなった姿が見たかったわ。大人になっても食べ過ぎないようにね」
ケンちゃんは泣きながら言いました。
「新しい冷蔵庫なんていらない!ぼくが大きくなるまで、ずっとそばにいてよ!」
「…」シズカのバッテリーは切れて、もう話す事ができませんでした。
やがて冷凍庫の霜が溶けて、水がポトリポトリと落ちはじめました。
それはまるで、冷蔵庫が泣いているようでした。
(おわり)
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