昼ドラ川柳からボーイズラブまで。自分の好きじゃないことで遊ぼう

色んなところに行ってますねとよく言われるけど、遊びをつくっているコンテンツやエンタメ関係者にとっては、遊ぶのも仕事の一部だ。遊びの構造を知るのが目的で、そもそも自分が好きじゃない物を遊んでいることも多い。

これまで一番大変だったのが、ボーイズラブ(BL)の漫画をタイアップで作ってくれという依頼で、三ヶ月間BLの漫画を研究していたときだった。私は男なので、男と男が抱き合っている漫画を読むのは苦痛だが仕事なのでしょうがない。

「シャーロックホームズはBL(ボーイズラブ)です。ワトスンとシャーロックは確実にやってますから、その感覚をまず会得してください」と友達の腐女子に指導され泣きながら漫画を作った。

なにはともあれ、遊ぶときには次の手順で遊ぶ。

1.  好みじゃなくてもウケているものを体験する
2. ウケてるものの構造を考え、抽象化する
3. 抽象化したものをヒントに、自分のものづくりに活かす
(表面的なものをヒントにすればパクリになってしまう)

SHOWROOMの前田さんの「メモの魔力」にも似た手順が書いてあったけど、多くのクリエイターはやっているだろう。試しにここ1週間で体験したものをリストアップしてみた。

1. うたの☆プリンスさまっ

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元々は女性向け恋愛アドベンチャーゲーム。通称『うた☆プリ』。当然ながら私は男なので、これも仕事じゃなければ見ない。知り合いの腐女子にカラオケで劇場版『マジLOVEキングダム』の上映会をしてもらい、萌えポイントや掛け声のかけかたを習う。

「イケメンが紐でいっぱい吊り下げられている演出は、イケメンシャンデリアっていうんですよ」ってのがパワーワードだった。

CGで造形したキャラクターをモーションキャプチャーでダンス演出されており、非常にレベルの高い仕上がり。アニメはVR世界と相性がよいので、実写系とは別にチェックしておかないといけない。

2. パラサイト 半地下の家族 

話題の韓国映画。すばらしい出来であらゆる感情スイッチを全押ししてくる。コンテンツは次のようなマップを参考に、どのような感情を刺激するかを考えながらつくるけど、ほぼすべての感情を網羅している映画。

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この映画を私が抽象化するなら「感情の網羅性」。これは自分のものづくりにも活かしていきたい。

3. 「Sea, See, She―まだ見ぬ君へ」

特にクリエイターのあいだで話題になっている。サウンドアーティスト「evala」による音だけの映画。たしかに新しい体験。音は映像に比べ、実際にそこにあるという実在性が高い。映像だとこれは単なる映像で偽物だとわかりやすいが、音だとリアルな音なのかバーチャルな音なのか判別が難しい。「音の実在性」はVR的世界でも活かせそうだ。

4. Rez Infinite

こちらは音に加え、キラキラ映像のシャワーをVRでも体験できる。普段VRはOculus Questでやっているけど、このゲームはPS4にしかないのでPSVRを手に入れてやった。

「人はキラキラしたものに囲まれると幸せな感覚になり、あのゲームはそれを突き詰めている」と某クリエイターから聞いていまさらやってみたら確かにすごかった。

5. 新サクラ大戦。

旧作もやってなかったけどなんとなく気になりやってみた。登場人物との会話シーンが面白く、主人公の会話の選択肢が「良い答え、悪い答え、ふざけた答え」の3パターンになっており、ボケがいっぱい入っている。ゲームの会話づくりに参考になる。

映像とゲームはどんどんとこれから先に融合していくので、映像はゲームから、ゲームは映像から学ぶことが多い。

6. 十三機兵防衛圏

話題のゲーム。重層的なプロットで謎が多く、引き込まれる。ただ何が面白いのか私はまだわかっておらず、もうしばらくやってみる。何かがあるのは感じるので、構造を把握するまではやめられない。

7. 昼ドラ川柳

昼ドラっぽい川柳をつくるカードゲーム。初対面の人の好みが必要以上にわかってしまい、妙にもりあがる。アナログゲームの研究会で体験。アナログゲームは、コミュニケーションがどう盛り上がるかがキモなので、ネットコンテンツの参考になることが多い。

8. 木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

書籍版とマンガ版両方を読む。今週末にこの本をテーマにした男4人の飲み会があるのでその準備に。プライドの暴走がどんな結果になるか、なんとも深い話。

9. デスストランディング

買ったんだけどまだやれてない。楽しみ。

とこんな感じの1週間だった。

いろんな解釈をしようとしているけど、根本的には解釈ができないことを探している気がする。頭で解釈ができてしまう、パターン化できてしまうのはまだレベルが低い目線で、その作品にしかないものは感じ取るしかない。

解釈した作ったものは、解釈されるものしか作りだせない。

素晴らしい作品は、解釈できないものがある。その解釈できないものがコアになっていて、その作者のブランドを作っている。あらゆる作品を体験して解釈をしつつ、他者からは解釈されえぬものを作ってみたい。

このような話は、パラサイトをつくった監督が「網を抜ける魚になりたい」というのにも通じることがあると思う。解釈という網を抜けたとき、人や作品はブランドになる。おそらくブランドとは「わかり得ぬ」ものだ。



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