キーワードx3の企画はもうやめよう。

よくある企画術で、アイデアは意外なものの組み合わせだから、できるだけ離れた分野のキーワードをかけあわせてみよう!ってのがある。いちご x 大福 = いちご大福 など2〜3個のキーワードをかけて作る。

これは有効でカンタンにできるので、わたしもこれまで散々やったけど、広告など瞬間的な驚きが必要なものには極めて有効だけど、短期でなく長期の時間軸での企画では途中で飽きられやすく、深みがでにくい。

長期で考えると、上記のような表面的なユニークさとは違い、本質的なユニークさをつくらないといけない。このユニークさを作るために、有名だけど「ゼロ・トゥ・ワン」が面白い。

この本の著者は、採用面接でかならずこう聞くのだという。

「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなに?」

例えばガリレオであれば、「みんなは太陽が地球のまわりを回ってるというけど、実際には地球が回っている」と答えるような、誤った定説を探せということだ。

未来から現在をみて「ここが変だよ現代人!」と突っ込むポイントを探して、常識をアップデートする。例えば日本の結婚が、見合い結婚から恋愛結婚に移り変わったポイントは、見事にテレビで恋愛ドラマがはじまった時期と一致している。

恋愛ドラマを企画したひとは、「みんなは見合いで結婚すべきだというんですが、私は恋愛結婚がしたいんです」という人がポツポツと出てきているのを目にしていたことだろう。

まだ多くの人が認めていない「隠れた真実」を追求する。

狂気は個人にあっては稀有のものである。だが集団、党派、国家、時代においては通例である(ニーチェ)

誤った幻想は、時代だけでなく集団であればどこでも発生しうる。

その幻想を打ち破るアイデアを提示するのが、本当のユニークさだという。反対に、冒頭のようなキーワードを組み合わせたユニークさを次のようにこきおろしている。

非独占企業は、さまざまな小さな市場が交差する場所を自分たちの市場と位置付けることで、自社の独自性を誇張する。

よく見るキャリア論で、2〜3つの専門性を掛け合わせろ!ってのも似た話で、専門性という普通のことをいくらかけあわせても根本的にユニークなものにはならない。あくまでそれは差別化の手段であって、目的ではない。

この本では、隠れた真実(他社が気づいていない、独自のチャンス)を探して、それによって大きなシェアがとれるような小さな市場をまず独占しろ、と説く。独占はすべての成功企業の条件だと言い切ってる。

「幸福な家族はみな似かよっているが、不幸は家族はみなそれぞれに違っている」というが、企業の場合は反対で、幸福な企業はみな違っていて独占を勝ち取っている。不幸な企業はみな同じで、競争から抜け出せずにいる。

ネットワーク効果(みんなが使っているから使う)を狙うには、かならず小さな市場から始めるべきで、大きな市場を狙えば、いつまでたっても「みんなが使っているから使う」にはならない。なるほど

まず特定の層でみんなに使われて、はじめて波及していく。テスラはまず、ハイエンドの電気スポーツカー市場を独占した。

小さな市場を独占したら、その独占が信用につながり他に波及していく。

最後に、古代人が初めて世界を見たときのような新鮮さと違和感を持って、あらためて世界を見ることで未来は創れると結んでいる。

有名なので今更だけど、めっちゃいい本なのでおすすめです

読んでくれてありがとう!