書評:針間克己医師「エビデンス重視のジェンダー医療を」(月刊正論7月号)GID特例法を守る会GID特例法を守る会2024年6月10日 22:02PDF魚拓


まさに私たち「特例法を守る会」の主張が、専門医の間でも主流なのです。医療モデルを守ることで、女性たちとの利害調整も可能にもなります。日本ではマスコミや左派野党がどう騒ごうとも、「人権モデル」は少数派にとどまり、当事者の多くはLGBT活動家が主張する、医師の診断なしに自分の希望だけで戸籍性別を変更できる「セルフID」を支持しないのです。医療モデルこそが当事者のニーズに即しているのです。

ですので、この医療モデルベースの制度の再構築が必要となります。そのためには急ぐ必要はありません。まず専門医団体が意見を統一し、よりよい制度のために法制度とリンクした診断モデルを確立し、また標準的なジェンダー医療のガイドラインを、WPATHのものではなく独自に再構築すべきです。

今こそ「海外の進んだ状況を日本にも輸入しよう」という拝外思想から脱却すべきなのです。これほど失敗に失敗を重ねた「人権モデル」を日本に輸入する必要はないのです。

思春期ブロッカー問題

WPATH ファイル流出と、それに続いて、タヴィストック・ジェンダー・クリニック閉鎖などの結果になったイギリスの未成年ジェンダー医療について、著名な小児科医ヒラリー・キャス氏に調査を依頼してまとめた「キャス報告書」の公表によって、とくに思春期ブロッカーの問題がクローズアップされました。

第二次性徴を抑制し、ジェンダーの選択を後伸ばしにできる魔法の薬

としてジェンダー・イデオロギー信奉者の間で喧伝されたのが、思春期ブロッカーと通称されるリュープリンです。しかし、これには骨の成長を阻害して骨粗しょう症を起こす、頭がぼおっとして学業に差し支えるなどの問題がいろいろあることも報告されています。いや実際にはこのリュープリンは前立腺がんや閉経前乳がん、思春期早発症などの治療薬として認可されていますが、日本でもアメリカでも思春期ブロッカーとしての利用はあくまで実験的なものになります。またヨーロッパではこの思春期ブロッカーの利用を禁止する動きもあります。
針間先生は
思春期ブロッカーの効果や有害性に関して判断するのは論文レベルではまだまだ不十分だと私は思っています。ある程度の蓄積はあるが。しかし、効果があるのか、ないのか、それを結論付けるだけの十分な蓄積がない。そういうレベルです。
p.89
と慎重な判断を下しています。とはいえ、GI学会の理事でもある医師が主導したとされる百例ほどの投与例が日本でもあると聞きます。
私には思春期ブロッカーを患者に投与した経験は一例もありません。

実際、日本では多くの場合は医師がそうした選択をしていますが、約百例、投与に至った事例があります。これは、ほとんどが西日本の一部の大学病院で、精神科医がしっかり診て、どうしても必要だと判断し、手厚いサポート体制のもとで行われた十年間の蓄積です。
p.89
と針間先生は実態を報告しています。とはいえ、このように思春期ブロッカーの危険性が取りざたされる状況について、やはり日本の医師も責任を持つべきでしょう。この約百例の事例についての、今時点での状況の再調査を含む再評価を公開し、この思春期ブロッカーという実験的治療の正当性について誰もが議論できるようにすべきです。こうしなければ日本の医療がトランスジェンダリズムに染まって未成年者のジェンダー医療を強行する方向に向かっているのでは、という余計な疑念を払拭するのは難しいことでしょう。
おわりに

針間先生も本稿で「エビデンスをベースにした医療」を訴えていますが、法制度だって同じことです。私たちについての調査は、残念なことにLGBT活動家によるNPOが主導する、「その団体周辺の人たち」のごくわずかな母数の調査が大半なのです。これではエビデンスもなにもありません。ただただ政治的に利用しやすい恣意的なレポートが上がってくるだけです。

ですから、範囲が曖昧な「トランスジェンダー」ではなく、明白に当事者である戸籍性別変更者からその実態調査を行うべきなのです。特例法を使って戸籍性別を変更したのはこの二十年間に1万人強しかいないのです。私たち戸籍性別を変更した人が、現在どのように生きているか、満足しているか、ジェンダー医療をどう考えるか、特例法をどう捉えるかなどの、包括的な調査が急務だと考えています。戸籍事務と家庭裁判所を統括する法務省が主導すれば、これは容易なことのはずです。このエビデンスによってしか、やはり当事者のニーズに即した法律は作ることができないと、改めて当事者としても主張します。

針間先生のこの記事は、リアルな現場の声です。

私たちはイデオロギー上の存在ではありませんし、政治のコマでもありません。性同一性障害特例法はそんな「私たちのリアル」に寄り添った「良い法律」でした。それを海外直輸入のジェンダーイデオロギーによって破壊することに、私たちは怒りを持って立ちあがったのです。

私たちの未来を「意識高い」「流行」といった軽薄な「思想」によって歪めないでください。

書評:針間克己医師「エビデンス重視のジェンダー医療を」(月刊正論7月号)

GID特例法を守る会

2024年6月10日 22:02